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341, 「秘密鍵の探索ヒートマップ」を作る、その四。これ……もしかして、構造的非対称性の兆し? いや……違う。兆しなんかではないわ。もう、始まっているわ。

 シィーより、演算を終えたという知らせを受けて……、わたしは、さっそくその結果を受け取りに向かったわ。……シィーの様子、なんだか妙に言いにくそうな雰囲気。やっぱり……そうなのね。


「それで、結果はどうだったのかしら?」

「女神ネゲート様……やはり、この通りでございます。」


 シィーから、ヒートマップを手渡された瞬間……、その結果は……覚悟していた通りだった。


「左側に、一様に離散して広がる楕円曲線公開鍵の探索空間。中央がそれをハッシュ等で圧縮した空間……。そして右が、それらを重ね合わせたヒートマップです。」


 これ……もしかして、構造的非対称性の兆し? いや……違う。兆しなんかではないわ。もう、始まっているわ。


「……うん、このあたり。ちょうど、狙い目になってるわね。」

「はい、女神ネゲート様。確かに、そのようになっております。もし、そのゾーンでアドレスが生成されてしまうと、探索空間を大きく削ってしまい、順方向から本来得られるはずのない秘密鍵を不正に取得できてしまう可能性が出てきます。……もちろん、古典的な手法では、そのような突破に何年もかかるかもしれません。ですが、そのゾーン内にあるアドレスが高額の残高を持ったまま、長期間放置されているとしたら……? ある日突然、残高をすべて抜かれてしまう可能性がある。それが、このヒートマップの示していることにございます。」


 ……それは、記憶に新しいわ。同じアドレスに長い間、採掘の報酬をそのまま残していた方が……ある日、全額抜かれてしまったのよ。ずっとコールドウォレットで保管されていて、秘密鍵の漏洩なんて、到底ありえない環境だった。それでも……抜かれた。


 もちろん、ニュースとしては一度だけ取り上げられたわ。けれど、結局それも……「原因不明」のまま、泣き寝入り。それで、終わってしまったわ。


 一応、補足しておくけど……、いくらコールドウォレットで保管していたとしても、常に公開されている仕組みで成り立つチェーン構造から、秘密鍵そのものを抜かれてしまったら……そこにある資産を守る方法なんて、一切ないのよ。鍵を失った時点で、どんなに堅牢な環境にあっても、それはただの空箱と同じ。誰も、そこから全額抜き取ることを止めることなんて、できないわ。


 さて……結果は、もう受け取ったわ。それで、どうやらこの構造的な偏りをあらかじめ知っていた、もしくは、偶然ではなく意図的にそれを避けていた……そんな設計のチェーンが、ほんのわずかにだけ、存在していたの。それが……。

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