335, それでか……わざわざ、先頭バイトを取り除いた非圧縮形式を使っているのかしら? まあ、言われてみないと、案外気にしないところよね。……そこは。
これって、もう「量子」の問題ではないのよね。時折、量子アリスの表情が……それを物語っているわ。このまま、量子の出番なしってこと……? もう、どうなっているのよ……。
「それで、非圧縮と圧縮で何が変わるのよ? 情報としては同じでしょう?」
「はい。ただ……『メッセージの長さ』が違います。」
「長さが違う? そんなの当たり前よ。メッセージを短くするために圧縮形式があるんだから。」
「はい、ですが……よく考えてみてください。これは、ただそのまま使うわけではないのです。……わかりますね?」
……そうね。これを「雪崩が劣化するような使い方」で、ハッシュに入れていた。そうだったわ。
「それで……なにかしら?」
「はい。ハッシュに入れている以上、同じ情報であっても……非圧縮と圧縮では、出力が変わります。」
「そうね。それがハッシュよ。ところで……変化、ね?」
「はい。『変化する』ということは……、その雪崩を調べてみる価値がある。重要な検証です。」
そこね……。やっぱり、闇の勢力って。そういう詰めは完璧。満遍なく、徹底的に調べ尽くしてくる。……そんな印象が、さらに強くなったわ。
「それで……結果は、どうだったのかしら? 変化は?」
「はい。ありました。」
「……あるのね。」
そうよね。変化がないなら、わざわざ話題に出す意味なんて、最初からないもの。
「はい。あの例のハッシュの使い方では、メッセージが長くなるほど、雪崩が弱くなっていました。それで……先頭バイトを取り除いた非圧縮形式を入力している点が、どうにも気になりました。いかがでしょう?」
……それは、たしかに。言われてみれば……そうね。それでか……わざわざ、先頭バイトを取り除いた非圧縮形式を使っているのかしら? まあ、言われてみないと、案外気にしないところよね。……そこは。
「なんだろう……。やっぱり、なにか、ひっかかる。説明できない違和感が残るのは確かだわ。」
「はい。量子アリスも、それを感じています。なぜでしょう……『何か』に向けて、この設計が妙に最適化されているような……そんな強い印象を受けます。」
……。結局、その日は……そこで、量子アリスとの対話を終えたわ。まずは、この点からしっかり対応していくべきね。なぜなら……量子は関係ないからよ。まさか、量子アリスによる脅威ではなく、こんな流れになるなんて……本当に、想定外だったわ。
……まあ、いいわ。わたしは女神。それでも、さすがに情報が多すぎて整理がつかない。少し休みながら、この膨大な情報をひとつずつ解きほぐしていくわ。……、そこから、きっと何かの「解決の糸口」が見えてくるはずよ。