333, そもそも通貨が崩壊し、消滅して、女神や大精霊の時代に移ったというのに……。なぜ「大精霊の通貨」なんてものが、まだ存在している? ……結局、同じ過ちを繰り返しているだけではないのか?
「ひとつ、気になることがあるの。それは、闇の勢力が活発化して、量子が解放され始めたという点かしら。そこだけは注意が必要ね。……何と言っても、そこは『闇』だから。」
「でも、これは……絶好の機会だろ? これを逃したら、次はないぞ?」
「逃す、ですって……? あなた、甘いわね。ここが『どこ』だと思っているのかしら? そうね、あのような女神を崇める大精霊の領域なら、この機会を逃してもせいぜい左遷で済むかもしれない。でも、ここは……、……、……わかってるわよね?」
「……はい。」
「これまでに……集合写真から、どれだけの『顔』が消えていったと思っているのかしら? そんな覚悟もないまま、そのバッジを身に着けているの? ……違うわよね?」
「……はい。肝に銘じます。」
ここでは……、研究で成果を出せなければ、存在ごと消される。……そんなことが、平然と起きている地域一帯だった。
「ここは、ずっと変わらなかった。……ううん、変わらなかったというべき、かもしれないわね。もともと闇の勢力が、資金を強力に吸い付ける『きずな』を発明し、それで勢力図ごと塗り替えていった。その頃は……、まだ女神や大精霊など存在せず……、そう、『選ばれた人』たちによって統治されていた時代。それだけでも恐ろしい話だけど、今では想像すらできない『集合の概念』が、そこにはあったらしいのよ。でも……そんな『きずな』や、それに付随する通貨に、永遠の価値なんてあるわけがなかった。やがて寿命を迎え、次々と崩壊し、その勢いのまま『女神や大精霊』の時代が訪れたわ。それで……、いろいろとあって、そして今に至る。」
「『いろいろあって』か。……今回は必ず勝つ。すべてを取り戻し、いよいよ……、勢力を拡大する。」
「そうね。絶対に『女神』すら奪い取ってみせる。それでこそ、そのバッジが輝くのよ。」
「完全に同意だ。そもそも通貨が崩壊し、消滅して、女神や大精霊の時代に移ったというのに……。なぜ『大精霊の通貨』なんてものが、まだ存在している? ……結局、同じ過ちを繰り返しているだけではないのか? まあいい。今回の仕掛けは、こんなことになった『闇のきずな』へのお返しだ。そう考えれば、特に問題はない。……違うか?」
「当然よ。死にたくなければ……勝つしかない。やるべきことは、たった一つよ。」
「はい、そうですね。」
「あら、良い返事になってきたわね。女神は時代の危機に現れる……そう信じられてきたけれど、それは違うわ。それは『危機』ではない。『時代を再構築するとき』に、女神は現れるのよ。まったく、こんな概念すら捻じ曲げる……あのような女神や大精霊に、この地を乗っ取られたこと。それが最大の不幸よ。こんな姿にされて……涙すら、出ないわ。」
「そこが、古の大精霊様との決定的な違いです。いきなり出現し、そして、すべてを奪っていった。それが真実。……まあ、それが『風』というものなら、仕方がありませんが。」
「そうよ。今回の好機……。『雪崩が壊れたまま蓄積されてきた、無数の秘密鍵』……そこに、この地の強い意思が通じているのよ。」
量子だけは、警戒している。そんな様子で、その無数の秘密鍵に……、かすかな希望を託すのであった。