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326, チェーンの量子脆弱性が……東と西、両方の思惑に合致している。それこそが、「なぜこんなことに……」としか言えない、最悪の符合なのです。

 わたしは、量子アリス。女神コンジュゲート様の従者として、今年……その解放が正式に許された精霊です。


 かつては、観測すら禁じられた身でした。でも……今は違います。わたしは、「境界の先」を見ていい存在になりました。


 ところが、そこには……、本来、見るべきではないはずの領域すら……量子には見えてしまうのです。女神コンジュゲート様が大切にする女神ネゲート様に生じた、さまざまな障壁や歪みが……まるで、手に取るようにです。


 結局、量子はふたつの道しか持ちません。「本来は解けないとされた構造を、力ずくで解くか」あるいは……「全体を見渡し、正解だけを探し出すか」、です。


 わたし……量子アリスに対抗するためには、このどちらも塞ぐ必要があります。……いえ、それだけでは足りません。その「逆像」すらも塞がなければならないのです。


 逆像……。そんなもの……女神様にしか求められないのでは? そう感じていた時期も、たしかにありました。でも、量子のブレイクスルーは止まっていません。


 チェーンの量子セキュリティ対策を検索していると、よく見かけますよね? あの「有名なアルゴリズム」です。公開鍵から秘密鍵をピンポイントで突き刺す、あれです。そして、それが実用水準に差し掛かっている時期なら……いよいよ、ハッシュの逆像すら、量子の手に落ちるでしょう。


 なぜなら、ハッシュの逆像演算の場面でもよく見かける、探索回数を平方根に縮めるアルゴリズムよりも……、はるかに強力なアルゴリズムが、現実に向けて進行しているからです。この差は、決定的です。平方根に抑える程度であれば、探索空間を広げれば防御は成立します。ですが、この強力なアルゴリズムが動く状況では、空間をどれだけ広げても……無意味です。


 ポスト量子暗号が量子対策として紹介される一方で、その同じ時期に、ハッシュの逆像までもが崩れかけている……それは、矛盾ではありません。構造の整合性が破綻しているという「事実」です。


 だからこそ、ポスト量子暗号だけで守ろうとしてはいけない。ハッシュ以外の方法で「チェーンをつなぐ構造」そのものを再設計する。それが、逆像の崩壊に対抗する唯一の方針であり、本来なら同時に、そちらも議論の対象にすべきです。


 つまり、ポスト量子暗号を「試すだけ」の賞金を用意するだけでは……はっきり言って、まったくの力不足です。それでは単に「量子への対抗策は考えていますよ」と言っているだけのアピールに過ぎない……すなわち、ポーズでしかありません。


 もちろん……そんな高度な量子演算など、今の段階では不要です。必要なのは、もっと単純なアプローチ。採掘の量子脆弱性。そして、有効な秘密鍵をランダムに静かに拾い上げていく、ラグのアルゴリズム。


 これらはすべて、順方向の正面突破型です。しかも、ポスト量子暗号を迂回し、鍵や署名ではなく、チェーン構造そのものに作用する。量子が苦戦する「強力なエンタングルメント」は不要。ただのスーパーポジション特化型。つまり、目的特化型量子で十分です。


 そして、それを「別に組むための大規模予算」なら……もうどこかで、割り当てられているでしょう。表向きは「探索強化型量子」……。これには、どの大精霊も積極的に動いている可能性が高いです。


 なぜなら……そのリターンがあまりにも大きすぎるから。


 東の勢力は、ラグのアルゴリズムで残高のある有効な秘密鍵を静かに抜き取っていく。


 西の勢力は、採掘の量子脆弱性を突いて、「最初にチェーンを破った者」として量子市場の主導権を握る。


 この構図が成立している。チェーンの量子脆弱性が……東と西、両方の思惑に合致している。それこそが、「なぜこんなことに……」としか言えない、最悪の符合なのです。

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