317, 構造ごとの入れ替えとなれば……ソフトフォークでは済まない。複数回の「ハードフォーク」を必須とする、魂を入れ替えるレベルの重い再構築になるわ……。
考えがまとまったところで……わたしは、「そこそこの量子」が入り込んでくる空間の分布をヒートマップにしてみたわ。
……その結果は、一目でわかるほどの偏り。そう……完全な無作為ではない。むしろ、どこか量子的な好みが滲み出ているような偏在性。やっぱり……ここにも「滑らかな谷」が形成されているわ。
それで……このヒートマップを眺めて、わたしが一つだけ言い切れること。それは「ハッシュの使い方」よ。本来、ハッシュというものは、雪崩効果まで含めて、「出力の完全一致による検証にのみ用いる」ことで、セキュリティが保証される構造。よって、それ以外の使い方をすれば、その瞬間に劣化するわ。
……そして今、その「逸脱した使い方」をされた場所が……このヒートマップの中で、見事に赤くなっているのよ。もちろん、それは今までの考察でもわかっていたことだけど……。こうしてまとめて「並べてみる」と……、やっぱり他にも、ボツボツと……見えてくるのよね。
そして……リスクを見極めながら、赤く染まった場所から順に、構造を置き換えていく。もう、それしかないわ。このヒートマップが冷え切るように……「そこそこの量子」に対するすべての対策を最優先で終わらせる。
その後で、ようやく、「ずば抜けた量子」に対抗するためのポスト量子暗号を導入すればよいわ。……とにかく、これは完全にわたしの「順序ミス」だったのよ。
だって……「ずば抜けた量子」への対抗手段は、もうある。スケーラビリティ以外に大きな問題もなく、「ソフトフォーク」で済むこともわかっていたわ。
構造は変えず、今までのまま。ただ、少し重くなる。それだけだった。……だからつい、「まあ、まだ間に合うでしょ」って、気が緩んだの。それは、わたしですら……。
……でも、映し出された「現実」は違った。「そこそこ同士」の、量子と推論の組み合わせは……ポスト量子暗号では、防げない。なぜなら、「構造そのもの」が崩れているから。
そして、構造ごとの入れ替えとなれば……ソフトフォークでは済まない。複数回の「ハードフォーク」を必須とする、魂を入れ替えるレベルの重い再構築になるわ……。それが、今まさに突きつけられている「現実」なのよね……。
 




