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308, 「ラグプル前提」で動いていた痕跡みたいなものが、「量子ビット」によって、少しずつあぶり出されてきている。……そんな気がするの。

「女神コンジュゲート様。お疲れさまでした!」


 やっと……話し合いを終えたみたいだ。まあ、ラグプルの件だったはずだし、そりゃ長くもなるよな。


「ちょっと遅くなってしまったわ。でも、その様子だと……ずいぶん馴染んでたみたいね?」

「はい。エンタングルメントの話で盛り上がりました。」

「エンタングルメント? ……へえ、意外。」


 ……、なんか勝手に、「そのエンタン何とか」の話で盛り上がってたことにされて、こっちを妙なまなざしで見てくるんだけど……。


 でもまあ、量子アリスはたしかに楽しそうだったし、俺がよくわかってなかったのが悪い。うん、ここは話を合わせておこう。


「ああ、そうなんだ。盛り上がったよ。なんか、特別らしいね?」

「……。良かった。」

「はい?」

「私のこと……少し、怖がってたでしょう?」

「あ、それは……まあ。闇の勢力、だっけ? でも……考えてたより、ずっと普通だったので……もう大丈夫です。」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。量子のことは、真剣に扱ってるの。そこだけは……よろしくね?」

「わ、わかりましたっ!」


 それから……大事な予定、でしたよね。コンジュゲートさんと量子アリスは、そのまま……量子を祝うイベントへ向かっていった。


 ふぅ……。そんなイベント、俺には縁もゆかりもない。……はずだったんだけど、なぜか、気になってしまった。量子を「祝う」くらいだから、きっと……ネゲートが悩んでいた「量子ビット」も扱っているんだろう。


 それと、量子アリスが言ってた「ようやく解放されました」の意味。……なんだろう。やっぱり、それは「闇の勢力」なんだよな。なんか、こう……ね?……うまく言えないけど、引っかかる。


 まあ、俺がここでどれだけ悩んだって、何も変わりはしないし。成り行きに、任せておこう。


 それから、しばらくして……、疲れ切った表情のフィーさんとネゲートがやってきた。


「……その顔。思ってた以上に、深刻っぽいな?」

「うん……。」

「まあ、ラグプルだしな。それに『出金不能』ってやつか? なんか、そういうのって……、もはや異世界の話みたいに感じるよ。だってさ、それらって現実感がなさすぎて、普通に投資に興味ある方に、いきなりラグプルとか出金不能の話をしても、そもそも『そんなの存在するのか』って疑われるだろ。『なにそれ、都市伝説?』みたいな顔されるだけだ。」

「そうね……。でもね……、大精霊によっては、バンクそのものが信用されていない地域一帯もあるの。そんな地域では、むしろラグプルの方がマシ。ラグプルなら、自己判断で前もって売り抜ければ儲けになるからよ。そういう基準が、たしかに映し出された『現実』なのよ。」

「……価値観の違い、ってやつか。」

「……、ラグプルや出金不能を、それで片付けられるのは……女神として、正直、不本意よ。でも……結局、『ラグプル前提』で動いていた痕跡みたいなものが、『量子ビット』によって、少しずつあぶり出されてきている。……そんな気がするの。」

「……。」


 フィーさんが、そっと顔をそむけた。どうやら、ラグプルだけじゃない。量子ビットの件でも、何かあったみたいだな。


 とにかく……お疲れさまでした。次の手は、コンジュゲートさんと量子アリスが帰還してからでいいだろ。それまでは……頼むよ。いや、ほんとにちょっとさ、押し付けられ……じゃなくて、頼まれた分がさ、なんかもう、地味にキツくてさ……。……頼むよ、マジで……ちょっとだけ、休ませてくれ……。

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