303, うう……。今度は、最大抽出可能価値の精霊が暴れるのね……。狂信的な採掘の精霊だけでも手強いのに……、もう……。
わたしは、ここでもまた……、厳しい現実を突きつけられたわ。狂信的な採掘の精霊の件では、あのハッシュへの依存が、莫大な経済圏を生み出してしまい、その大きな壁にぶつかって悩んでいたというのに……。また「量子ビット」が、それと同じような経済圏に、真正面から衝突してきたのよ。
そう……よく考えたら、当然のことよ。演算の女神としてわたしが受け入れたこのチェーンは……、トランザクションのサイズではなく「演算量」によって厳格に手数料が決まる仕組みだったわ。そうよね……。一般的にはよくわからない相手、つまり「量子ビット」に備えるために、もし「量子ビット」への耐性付与として、その演算量が増加するとしたら……。当然、その手数料も上乗せになってしまうわ。
そして、大きな問題となるのは……その手数料増額の大きさ。「量子ビット」への耐性を確保するとなれば、やはり演算量は格段に増えるわ。それでも、もしこれがサイズベースの増額で済むなら、まだ許容範囲。でも、こちら……「演算量」の場合は、どうかしら。軽く十倍以上に跳ね上がっても、不思議ではない水準だわ……。それでいて、得られる利点なんて「古典ビット」ではまったく存在しない。
そう……、つまり現状では、非常に高い手数料を支払って、その結果は……、ただ、処理が重くなるだけ。こんなもの……受け入れてもらえる可能性なんて、まったくないわ。
それでも……、量子脆弱性による脅威は、確実にその距離を縮めてきているわ。……もちろん、わたしが悪いのよ。「平方根」という幻想に、踊らされてしまっただけ。……本当に、それだけなのよね。
それでもね、その手数料に、経済圏なんて存在しなければ、問題はなかったのよ。けれど、映し出された「現実」は大きく違っていた。なんで……演算量によって厳格に決まる手数料側にだけ、この手数料の削減に強く相関する形で、あまりにも大きな経済圏が、すでに形成されてしまっていたのよ。そう……、それが「最大抽出可能価値」と呼ばれるものよ。
うう……。今度は、最大抽出可能価値の精霊が暴れるのね……。狂信的な採掘の精霊だけでも手強いのに……、もう……。