299, イーシーリカバーは、静かに燃え続ける開かずの宝箱のようなものなのです。開錠には時間がかかるのですが、量子で一度でも開けば、その中からすべての「秘密の鍵」を手に入れることができるのです。
落ち込んでいるわたしに……そっと、フィーが寄り添ってくれたわ。正直……情けない気持ちでいっぱいなの。わたしは……もう、女神なんて名乗れない。そんなに甘くは、なかったのよね……。
でも……もう、立ち止まってはいられない。……何とかするしか、ないのよ。
「ネゲート……。わたしも、小耳にはさんだのです。……ラグプルの件なのです。」
「フィー……。」
「もう、起きてしまったことをくよくよしても、仕方がないのです。ラグプルされた場合……絶対に、戻ってはこないのです。……はい、今は……、目の前にある課題を、一つずつ対処していくしかないのですよ。」
「……そうね。……、……。」
「ネゲート。わたしが女神だった、あの頃だって……。簡単に物事が進められるような時代ではなかったのですよ。それでも、なんとか危機を止めたのです。それで、この瞬間……『今の時代』があるのですよ。」
そうね……。フィーの時代も、たしか地の大精霊が暴れていたわね。もう……本当に、あの頃はあの頃で、大変だった。でも……それに比べたら、そう……、今の時代の方が、ずっとましよ。……ラグプルみたいのは発生しちゃうけどね。
「それで、ネゲート。イーシーリカバーの量子脆弱性の件……、こちらの考えは、もうまとまったのですか?」
「うん。そっちはもう……深刻さは、すぐに理解できたわ。ほんと、『量子ビット』があんなにも急激に成長してくるなんて……ね。」
「はい、なのです。わたしも、正直、驚きを隠せなかったのです。『急に本気を出してきた』……、そう解釈するべきなのです。このような事が量子脆弱性として、これだけ続いているのです。もう、『偶然』なんかではないのです。これは……映し出された『現実』なのですよ。」
「でも……そのおかげで、見えてきたこともあるわ。そうね……、『最大抽出なんて名ばかりのスキャム』、『分散化を謳いながら寡占状態だった構造』、そして……『出金不能が平然と行われている現実』などよ。……悪いことばかりじゃないわ。全部、見えてきたのだから。」
「はい、なのです。まさに今、そのような『腐った根』を暴くチャンスなのです。その根は、広く、深く……特に見えにくい場所に潜んでいるのです。でも、それでも……今なら、引き抜けるかもしれないのですよ?」
うん……、良かった……。なんだか、調子が戻ってきた気がするわ。でも……、あの辛辣な言葉は、ちゃんと女神として受け止める。実際……起きてしまった、大規模なラグプルと出金不能。これで「おしまい」なんて、絶対に言わせないわ。
……それで、いよいよ本題ね。そう。今回の「量子脆弱性」について、よ。
「それで、そうよね? フィーだもんね。ほんとは話したくてしょうがない……でしょ? うんうん、わかるわかる。」
「……はい、なのです。それでは……。イーシーリカバーは、静かに燃え続ける開かずの宝箱のようなものなのです。開錠には時間がかかるのですが、量子で一度でも開けば、その中からすべての『秘密の鍵』を手に入れることができるのです。」
その例え……なかなか、やるわね。でも、実際……そんな宝箱があったら、絶対に開錠されてしまうのよ。……そして、ここからが難しくなりそうだわ。