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29, 旅行キャンペーンの温泉旅行で、次は孤児院、です。そこで、天の使いの正体をみます。

 果たして、俺は温泉街に向かっているのだろうか?


 どのみち、ごねはじめると手に負えないフィーさんです。元々、こうなる「運命」です。もう諦めの境地です。頭を切り替えて、ミィーがお世話になった都の孤児院に同行します。


 でも、また都かい。もう……。どこにでも自由に移動できる力が「ゆったりな時間」を奪っていきます。ああ……、都といえば、あの支配者です。そして、この都で来年、この地最大のイベント「大精霊の祭典」が開催されるようですね。


 ただ、この危機的な状況で、そのような規模が大きい祭典を開催できるのでしょうか?


 あっ! そういや、あの都の支配者……、「ブロードキャスト」で自信ありげに「このような危機は、今年で終わりにします」と、何の根拠もなく横文字を並べながら述べていたよね? これってさ、困窮する都の民を想っての「嘘も方便」……、ではなく、この祭典を絶対に都で開催したいという「執念」、だろ? もちろん、「執念」ではないことを、信じていますよ! なにしろ俺は「都の民」ですから。あんまり会いたくはないが、また顔を合わすようなら、目の前で問います。


 とまあ……、そんな事を思い浮かべているうちに到着したようです。もう慣れました。ミィーは、驚きのあまり、ぼう然としています。この感覚ね、慣れるまでは「現実と虚構の区別」がつかなくなります。でも俺は、慣れました。フィーさんの「楽しい時間」でも「現実と虚構の区別」がつかなくなるため、そこで耐性が付いたのでしょう。


「フィーさん? ここが孤児院なの?」

「はい、なのです。」


 孤児院というよりは……、日常的なお祈りではなく創造神に深い祈りを捧げる礼拝所みたいな外観です。ちょっとな……、こういう厳粛な雰囲気は苦手です。そしてミィーは、普通の生活から一変して、このような場に引き取られたと思うと、……。


 門をくぐり抜け、そのまま入るのかと思いきや、フィーさんが扉の前で立ち止まります。


「どうしたの?」

「……。ディグさん、異質の者が、たった今、この孤児院をたずねてきた痕跡があるのです。」

「異質の者って? やばいの?」

「はい、なのです。……、俗に言う『天の使い』、なのです。そして、まだいます。」

「えっ!」


 思わず大きな声を上げてしまいました。こんなタイミングで「天の使い」、勘弁してください! なんでこうなるんだ……。楽しみな温泉旅行が一転してこれ……。恐怖からか、急に心臓の音が高まってくるのを直に感じました。


「びっくりした。急に大声を上げるなんて!」

「ミィー! それどころではなくなった。フィーさん、ここは一旦引き上げよう!」

「……。ディグさん、それは無理なのです。」

「どうして!?」

「その『天の使い』もわたしに気が付きました。そして、『天の使い』からわたしに、通知がきているのです。その通知の内容は、『はやく、ここまで来い』、なのです。」

「……。そんなのは無視して逃げようよ!」

「いいえ、なのです。逃げ切れないのです。」

「どうして? 相手も、自由に移動できる力を持っているのか?」

「いいえ、なのです。」

「だったら、すぐに逃げよう。俺の本能が、そう叫んでいます!」

「それでは、無理なのです。逃げる強い意思をわたしがみせた瞬間に、『天の使い』から仕掛けてきます。彼らはわたし達のような『ジェネシス』からではなく、『進化』という力で適応して生き延びてきました。そして、この『孤児院』にいる個体は、その中でも特に手強く、俊敏です。だから、逃げられません。」

「……。」

「ディグさん、ミィーさん……。これは、わたしのミスなのです。『チェックポイント』の件からの回復が不十分な段階で、力を大いに要する『移動』を安易に行ってしまい……、『天の使い』に抗う力が残っていないのです……。」

「フィーさんらしいミスというか……。たしか、気力が十分にどうとか、言っていたよね?」

「わたし……、書物に目がくらんでしまい、そんな事を口走って、恥ずかしいのです……。」


 フィーさん……、「書物」と「甘いもの」に弱過ぎますね。あの神々がこの弱点を知り、利用されなければ良いのですが……。なにやら、怪しげな情報網まで握っているようなので。


「フィー様、ごめんなさい! 私のわがままで……。私が余分で……。」

「ミィー、そういう考え方は捨てるべきだよ。それを言い始めたら、何もできないから!」

「はい、なのです。これは、わたしのミスなのです。ミィーさんは、何も悪くありません。幸い、僅かな力は残っています。この力で退路を確保し、時間を稼ぎますから、そこから逃げてください。」


 僅かな力って? その僅かな力で「シィーさんが待つ温泉まで飛ぶ」は無理なんだよね? 後先を考えずに、お目当ての「書物」を目指してまっしぐら、だったのですか……。


 それよりも、何やら、命を危険にさらす行為を始めそうですね。


「時間を稼いで、それから、フィーさんはどうなるさ?」

「わたしは……。」

「フィー様……。」


 フィーさん、というか……精霊って、戦えるんだ。そんな感じだよね? ここで、あの……黒いシミがあった、とんでもない書物を思い出せ。あの書物に出ていた者が、『天の使い』を生み出して……そして、あの黒いシミは……。とにかく! 最善な解決法を考えましょう。


「フィーさん? ここで、おかしな事は『一切』考えるな。犠牲になることは美徳ではないから! それとも、フィーさんの大切な書物の一部に『犠牲になることは美徳だ』とでも載っているのかい? それならば、そのような書物に限っては焼いてしまっても問題はないと思うぞ。そうだね……、このまま逃げられないのなら、まずは相手の指示に、落ち着いて従うべきだね。」

「ディグさん……。」

「この程度、俺が嫌になるほど経験してきた『極悪機関』の売りと比べたら大したことないです。あれは酷かった。売りを誘われたので、大きめに売ったら、買い戻せない状態が何日も続き、もうこれは終わった確信して、絶望し、連日、吐くものがなくなるまで吐いていたからね!」

「極悪機関……、なのですか? それは……?」

「あっ……、後日、しっかりお話しいたします。今は、気にしないで!」

「はい……、なのです。」


 こうなったら、やけだ。極悪機関のにやにやする顔を思い浮かべたら、気が楽になってきました。「天の使い」ね? 余裕だな。そう、余裕! これです。


「すべて吹っ飛ばした話って、本当だったの?」

「こんなときに、なんだミィー? 当然だろう。すべて、本当なんだよ!」

「ディグさん……。ありがとうございます、なのです。わたし、落ち着いてきました。」

「フィーさん? そのようなお礼は逃げ切った後で、お願いね!」

「はい、なのです。」


 ゆっくりと扉を開け、孤児院の中に入ります。


 おや、受付の方かな? 目をぱっちりとさせ、フィーさんを見下ろしました。


「あなたは、もしや……、フィー様では?」

「はい、なのです。」

「いつも、ありがとうございます。」


 えっ? ここでも有名なの?


「すごく緊張しながら入ったのに……。」

「わたし、何度かここに『大切な犬』を寄付いたしました。その影響なのかもしれません。」

「そういうことか!」


 寄付か! 「犬」って「全取引が公開」されているので、そういう用途ではクリーンだよね。あくまで噂だけど、相当な中抜き……とか、耳にしたことがありますから。仮に、この「犬」で中抜きしたら、すぐに騒動へ発展だろう。「大きな移動量」まで個別に公開されてるので、すぐにばれます。


「フィー様……。私、フィー様の『犬』で生活できていたなんて……。フィー様の『犬』に感謝の気持ちを捧げます。一生、忘れません!」

「ミィーさん……。わたし……。」

「ほらほら、感傷に浸っている暇はないぞ。」

「……、はい、なのです。」


 ……。緊張してきました。会うどころか、見たくもない存在が近づいてきました。龍よりも恐ろしい存在かもしれません。話してわかる相手なのだろうか? フィーさんに命令するほど、ですから。


「懐かしいね。うん、昔となにも変わっていないね!」

「フィーさんから『莫大な寄付』をいただいたからって、まさか、ピカピカにするとか……。」

「ディグさん……。ここは、そのような使い方はしないのです。」

「今のは、緊張感を紛らすための冗談です……。そろそろかな?」

「はい、なのです。」


 案外、中は広いのですが……薄暗いために、それが俺の恐怖を増幅していきます。それでも逃げられません。この恐怖は、売ってから何日も買い戻せない地獄と似ています。こちらから向かうしかないので、重い足取りで歩きます。必死です。


 おや? 突然……、なんだろ。書物が積み重なったときの、あの紙の匂いが漂ってきました。フィーさんとのお付き合いで十分に慣らされ鈍感になっていたはずなのですが、この時は、なぜか新鮮さを覚えました。


「ここなのです。」

「いよいよ?」

「はい、なのです。」


 フィーさんが、ゆっくりと扉を開きます。そこには、フィーさんが好きそうな書物が整頓されていました。すかさず、まるでそれら書物に誘われるかのごとく、フィーさんが少し奥にある書物を手に取ります。


 手慣れたご様子で、一気にページをめくっていきます。そして、つぶやきました。


「……。これでは、使い物にならないのです。」

「えっ?」


 不機嫌そうに、不満げな声を出すフィーさん。おっと、俺にその書物が手渡されました。そして、その「内容」に驚愕いたしました。


「……。これは、ひどいね。」


 俺ですら、声を上げてしまいました。黒または白のインクで、大事な個所なんだな……と推測される場所が塗りつぶされています。


「わたしの推測通り、なのです。これでは、わたしが目的としている書物も……、似たような状況、なのです。もはや、確認する必要性はないのです。」

「……、誰だよ、こんなことをするのは?」

「それはおそらく……、天の使い、なのです。」

「……。なんだよそれは!」


 そういや……、あの都の支配者が「知恵」と絡めて、嬉しそうに語っていたよな。この「天の使い」との「戯れ」について、です。


「ディグさん……。そこに、いるのです。」

「いるって……。」


 ここに……、いるのか。あれっ? 急に……おぞましい気配が充満してきました。この感覚……、絶対に忘れはしません。黒いシミが付着したあの書物を、なぜか俺が手に取った、あの時の違和感とそっくりです。あのフィーさんすら知らなかった書物を、なぜか俺が「先に」手に取ってしまうという、いまだ謎に包まれる、この違和感です。


 まさか……、あの瞬間から「天の使い」に、俺が目を付けられていたからなのか? 急に、寒気がしてきました……。これさ、フィーさんではなく俺に用があるのかもしれない? お相手は精霊が戦いを挑むようなやつら、ですよね? 為す術がない俺は、どうしろと?


「おやまあ? 逃げずに来ましたね。さすがは、フィーちゃんですね。」


 心の奥底から嫌悪感を覚える声が、響き渡りました。


「隠れていないで、出てくるのです。あと、その呼び方はやめてください。」


 フィーさんが、すかさず応答します。それにしても、その呼び方は……。


「そうですか。では、舞うように登場しますね。」


 突然、目の前に……。あの書物にあった「虫のような外見」とは程遠い……、俺たちと似た姿の者が現れました。それどころか、しっかりとした格好です。あっさりした普段着ではなく、ブラウンのスーツを身にまとい、黒光りする重厚な鞄を抱えています。あと靴も、間違いなく高価なものです。そして……、左手首には、何やら光る物があります。それは……俺が爆益のときに、羨望の眼差しで眺めていた高級品かも……。ただ、恐怖は和らぎました。


 ミィーは……その場で立ちすくんでいます。おぞましい「天の使い」が目の前に現れたのですから、当然の反応です。


「わたしに、何か用でもあるのですか?」

「相変わらずフィーちゃんは、我ら『天の使い』に対して冷たいね……。」

「……。当然、なのです。」

「それにしてもフィーちゃん、心身ともにボロボロね? どうしたら、そうなるの? すでに、立っているのも辛いのでは?」

「別に……、この程度、大したことはないのです。」

「無理は厳禁。そんな心身では、偉大なる大精霊……シィーちゃんの莫大な力を継承できないよ?」

「継承って……。その本当の意味を、わかっているのですか? それ以上は、わたしも黙っていないのです!」

「おお……、もちろんわかっている。我ら『天の使い』にとって、シィーちゃんはとっても大切な存在だからね! 例えば、この地が我らの好みへ近づいてきたのに、シィーちゃんが変な気を起こしてリセットなんかしたら、大変大変! だから。」

「……。どういう意味なのですか? それは!」


 俺は、フィーさんがまじで心配になってきました。間違いなく、無理をしています。何とか、このおかしな「天の使い」の奇襲をかわして、休ませてあげたいです。そして、シィーさんって、ただの精霊ではないみたいですね。フィーさんよりも遥か上の存在だったのですか……? でも、そんな気がします。例の渦を制御できてしまうのですから。これって、フィーさんに本日伺うべきだった事が先に出てしまった、かな。なお、上の存在となるシィーさんに『チェックポイント』の件は、話すべきなのかもしれません。しかし、ごねると大変なことになるフィーさんを説得するのは困難ですが……。


「そうそう、フィーちゃん? 白インクを持ってないかしら? 最近、白の出番が多くて、切らしてしまったのよ! まったく、ここの神々は……『天の使い』を何だと考えているのかね。でも、たっぷりと儲けさせていただいたので、我慢我慢!」

「いい加減にしてください。そんな汚れた物を、わたしが持っているわけがないのです。」

「愛する書物のためなら、すべてを捧げるなんて。素敵な精霊さんだ、フィーちゃんは!」

「……。言いたい放題、なのですね? あと、頼まれて、こんなことを?」


 フィーさんが、しびれを切らしてきました。


「頼まれて? そうね……、そこはシークレットだよ。それにしても、こんなにも弱っている精霊をみるのが初めてだ、か、ら。ついつい、話が進むね。なかなか、精霊と気軽に話せる機会ってないからね。たまには、ね?」

「……、相手が弱っているのなら、何をしてもよいのですか?」

「そんな当たり前な話、わざわざ、ここでする? まあ、構いませんが。」

「……。」

「そうね。たまには長い話もいいかな。これから話す内容は、だいぶ前になるのだが……、ここから遠く離れた地域で、暴れてきた話になるよ。でね、そこの神々といったら、もうね、輝くほどに『素敵』だった。『空っぽ』が揃いも揃ってしまったトラジェディで、地から湧き出る炎の素が、勝手に価値を持つと勘違いしていてね、そのまま放っておいたら、見事に時代遅れになって、稼げなくなったんだ。そして、売れるものがないらしく、通貨は暴落し、最後は『犬にすら』すがる悲惨さで、まさしく『惨め』という言葉がぴったりだね。そして、困窮さはピークを越え、いよいよ通貨が制御不能になって、我ら『天の使い』すら震えちゃう美しい展開になったのよ!」

「それが、美しい展開、なのですか?」

「そう、これこそ美しすぎる展開ね。まず、そこの神々が高飛びするための資金が必要になって、まるでボロ雑巾を処分するかのような『捨て値』で、『民のきずな』を我ら『天の使い』に売ってきたもんだから、その場で笑いこけてしまったよ。まあ、そんな『ゴミ以下』を買う物好きなんて、この地をいくら這いずり回っても、我らくらいしか見当たりませんから。もちろん、無価値になるリスクを承知で何の迷いもなく買い付けてやったよ。そして、捨て値だったとはいっても、額面通りの価値はあるということで、すぐに、そこの民に取り立てだよ、取り立て。ここまでは予定通り。素敵な展開です。」

「……。なんですか、それ。信じられません! そこまで、するのですか?」

「フィーちゃん? なかなか口を開かない我ら『天の使い』の話は貴重だからね、最後まで聞きなさい。つぎね、この状況からのフィーちゃんなら、こう言い出しそうだね? 『無いそでは振れない』と?」

「そうなりますね。どうやって売るのでしょうか? それで売れるのなら、捨て値で売る必要がありませんから。いい加減、そのような『作り話』はやめてください!」

「あらら。作り話だなんて、ひどいよ! 『現実』を端っこより追跡しながら言語に変えているだけなのに! ねえ? 言語に変える力って大切だよね。現実を、フィーちゃんがお気に入りの書物にするためには、これしかないもん。」

「なんですか? さっきから、不愉快なのです!」

「論理を組んで先々まで見渡せる能力に長けたフィーちゃんが、どうやって売ったのか、瞬時に気が付かないの? それとも、すでに浮かんではいるが……、考えるのをやめたのか? もったいない。どうしようかな……、実は、フィーちゃんを我ら『天の使い』にスカウトしようと考えているんだ。もう精霊なんかやめて、こっちに来い!」

「……。冗談でも、そのスカウトの話は、やめてください。」

「そうなの? そんなにも心身をボロボロにして、あなたは何を求めているの?」

「特に、何も求めていないのです。」

「そうなの? なぜ、そこまで欲がないのに『山師』なんかに?」

「『天の使い』なんかに、その理由を語る必要はないのです。」

「もう! 我ら『天の使い』にだけ口を割らせて、話を持ち逃げする気か?」

「そちらが勝手に話し始めただけ、なのです。」

「……。まあ、そう言われてしまうと否定できませんね。では、どうやって売ったのか、です!」

「そんなの、聞きたくもありません!」

「でも、そちらの方? 聞きたそうにこちらをじっとみているよ?」


 ここで急に俺、ですか……。こいつら、とんでもないや。「極悪機関」が幅を利かす俺の故郷でさえも、こんなレベルのやつらはいないだろう。いないよね? たしか、いないはず! そこだけは信じたいです。それでさ、どうやって売ったのか……、不躾なのですが知りたくなってしまい、こいつと目が合った瞬間、これでした。


「興味がないと言えば嘘になります。ただ、まともな取引ではないことは明らかですよね?」


 相手をいつもの「極悪機関」だと思えば、平常心を保てるようになりました。


「ディグさん……。」

「おやまあ。君かね? フィーちゃんをたぶらかしているのは?」

「何でそうなる? それとも、まともな取引ではないと突っ込まれて焦っているのか?」


 その途端、「天の使い」が腹を抱えて笑い始めました。


「君ね、我ら『天の使い』が、この程度のことで、約束事に反する取引をするとでも考えているのかい? 甘い甘い。そんなことをする必要性すらないからな! 『空っぽ』になった神々や魔の者を手玉に取ることなど、朝飯前なのだよ、我ら『天の使い』はね。」

「なんだと……。」


 なんか、むかついてきました。でも、こいつ……、隙がまったくないです。


「おや? 何か言いたそうだね? でもな、この地域一帯で、我ら『天の使い』に論理的に反論できるのは、そうだね……フィーちゃん位なもんだよ。やめておきな?」

「……。」


 悔しいが、俺がこいつに勝てる見込みは、まったくないです……。あの神々とは雰囲気から異なります。強気に出ても、それ以上にこいつが出てきます。そして、俺がやられます。まるで「極悪機関」の、あの手口……「売りを誘ってはめ込む」にそっくりです。


「それでも……。君、いい眼しているね? 我ら『天の使い』の中枢に、取引のための高貴な席が空いているんだ。ただそこは、精神的にきついらしく、なかなか定着しない席なんだが……、君ならいけるかもね。やってみるかい?」

「勘弁してください。お断りします。」


 まったく、何だよ急に? です。即答で断ることができる、とんでもないご提案でした。あっ、でも……、俺の能力を最大限に生かし、こいつらの資産を「吹っ飛ばす」のは面白そうだ! なんてね。


「それは残念。では、エビデンスだな。額面通りの価値があることを、約束事に則って直訴し、対処したら……、まあ不思議。額面の価値を否定するわけにはいかないからな! しっかりと認められたぞ。そして、それらを裏付けとして、取り立てたんだよ。」

「……。なんて非道を……。」

「おっと、フィーちゃん? 感動しているのかい? 嬉しいな!」

「……。ふざけないでください。それで、何を狙ったのですか? もう、わたし……。」

「それでこそ、フィーちゃんだ。今、この地域一帯すら苦戦している、例の食い物事情だよ。あの『空っぽ』な神々ね、意外なことに、なかなかの食い物をため込んでいて、しっかり保存してあったんだ。」

「待ってください! それは、その地域一帯の民の備蓄なのですよ? まさか、それに……。」

「へえ、そうだったんだ? 知らなかったよ!」

「知らなかったでは、済まされません! そんな、ざわとらしい言い訳までして……。」

「だから何だというのだ? タイミングというのは非常に重要だ。ここで、見事なまでの『美しい危機』が到来した。それら食い物が、とにかく高い値で売れまくる! 売りながら笑ってしまうほど、こちらの言い値で買っていくからな、すごいぜ? ほんと、こんな時期に『旅行キャンペーン』だなんて、もうね、どれだけ儲けさせてくれるのよ? がはは! この地域一帯の神々は、客観的にみても、本当の意味で優秀だよ。それだけは創造神に感謝しないとね? フィーちゃん?」

「……。その地域一帯の民の備蓄分を、その額面に達するまで……売る気なのですか?」

「もちろん、当然だよ。まあ……、泣き叫ぶ子供を抱えた女が『もうこの数日、何も食べていなくて、せめて、この子だけでも……』と哀願してきたが、そんな道理を我ら『天の使い』に言われてもね……。その子供が食べられた分を、この地域一帯の神々が笑顔でお買い上げですから。ところで、我ら『天の使い』は、創造神に仕える『本物の天の使い』を参考に作られたらしいね? たしか『原則』に準じるように、だったかな。でもね……、『感情』くらいは持たせるべきだったよ。『進化』により、『爆益を喜ぶ感情』だけは理解できるようになったのだが……、その他については、真似事は演じられるけれども、さっぱりなんだ。だから、フィーちゃん! 是非とも我ら『天の使い』に、感情という豊かな知識を授けてほしい!」

「……。この旅行キャンペーンすらも、巧みに利用するという……。そういうことだったのですね。あの神々が、このような得意分野で弱い部分を握られるなんて……。」

「おや? 何かを悟ったのかな? それにしても、ここの神々は素晴らしいね。今度、『天』を取り戻すために、フィーちゃんを取り込んでから、さらに、『この地の者が、喉から手が出るほど欲しがる、この地域一帯の通貨』を赤子まで含めたみなの民にばらまき、失われた信仰心を急回復させる作戦みたいだね? そして、その前哨戦としての『旅行キャンペーン』はガチで盛り上がるよね! ただ、今の『天』は誰だ? 『主』は誰だ? そうだね、色々あって偶然的に『天』を任された魔の者は、何もできずに、ただ座っているだけなのかい? まあ、我ら『天の使い』と、ここの魔の者とは非常に相性が悪いからね、助かりました! なぜなら、我ら『天の使い』の存在自体を否定してくるからな。たしか、『弛まぬ努力を積み重ね……』だったかな。そんなもん、やめてくれ。」

「なぜ、そこまで詳しいのですか? さらに、わたしすら『通貨のばらまき』は知りませんでした。すでに、『天の使い』は、そこまで……。また、地道な努力の、何が悪いのですか?」

「おっと? フィーちゃんは、我ら『天の使い』の存在を、何だと解釈しているのか?」

「……。それ位は、嫌になるほどわかっているのです。」

「本当に? 勘違いを起こしていないか? ならば、フィーちゃんが納得できる話もしようではないか。我ら『天の使い』は、そう……泣き叫ぶ子供を抱えた女を見放してはいないんだ。」

「……。それは、本当なのですか?」

「本当だ。見直してくれたかい?」

「……。どのように救済されたのですか? それを伺ってから、なのです。」

「それはな、一日分の食費を『犬』と呼ばれる『通貨らしきもの』で、手渡したんだ。それでも、暴落して価値のないその地域一帯の『通貨』を渡すより、はるかに良い選択だったと自負しているぞ。」

「一日分、なのですか? それは本当に食費として、渡したのですか?」

「……。即答で、そこに噛み付いてくるとは。あっぱれ! やっぱり、フィーちゃん、欲しい……。」

「いいえ、なのです。しつこいのですよ? それで、何の目的で渡したのですか?」

「それはね、その女が境界の川を渡るために差し上げたんだよ。実は、川を守る者達に一日分の食費を手渡すと……黙って通してもらえるという素晴らしい『おもてなし』があって、そこから、この慈悲を決めたんだ。一日分だから、食べてしまったら一日で終わるが、川を渡れば……。ところでフィーちゃん? その女は、川を渡った先で、何をすればよいのかな?」

「……。」


 フィーさんが口を手で押さえ、首を横に振っています。……。こいつら、斜め上だ。


「フィーちゃん? 黙り込むのは、感心できないな?」

「……。ひどすぎて……。」

「これが、ひどいのか? だったら、『犬』もひどいことになるぞ? 『この地全体で共通の価値を持つ通貨らしきもの』がなければ、このような……おぞましい慈悲はなかったからね?」

「……。」

「また、黙り込むのか? 現実を受け入れられないのか? ここの神々は、我ら『天の使い』の活躍を大いに喜んでいたぞ。もちろん、たっぷりと誉め言葉……お世辞を上乗せしたのは記憶に新しい。たしか、この地域一帯の民は『タダ同然の旅行に加え、通貨まで恵んでもらえる』一方で、例の地域一帯の民は『子供と一緒に飢えていき、川を渡る』だったな。これだけの差を付けられたら、ここの神々の能力と剛腕には頭が上がりませんと、『喜びの統計』から導いた結果を利用し、大いに持ち上げたら、とても喜んでいたぞ? 我ら『天の使い』は感情が乏しいからな、欺瞞は得意なんだ!」

「……。それらは嘘なのです。わたしが『山師』だったことに嫌悪感を抱く方がおりました。」

「へえ? 素直な者が、いまだ残っているんだ。すごい地域一帯だね、ここは!」

「さっきから……、さっきから、あり得ない話ばかり!」

「フィーちゃん? 反論が単純化しているぞ? フィーちゃんらしくない! 実は困っているのでは? 例の地域一帯の民から、ここね、すでに憎まれているよ。目の前にある『生きていくための食べ物』が、次々と『贅沢な飽食用』として消えていくからね。がはは! さあ、憎しみが次々と『ブロック』に刻まれていくね! この憎しみの連鎖こそが、我ら『天の使い』の原動力だから!」

「そ、それは……。」

「まあ、話は早い。『精霊の式』に沿って『進化』を繰り返してきた我ら『天の使い』が、的確な狙いがないまま、動き回ることは絶対にないと、よくわかっただろう。確実に儲けさせていただける上客の『意志』に従うだけ、だからな。この欺瞞こそが、『精霊の式』の『特殊な解』から導かれる、特殊で、かつ、我ら特有の『意志』になるから、それで『ブロック』が進むんだ。そして、これを否定されると、我ら『天の使い』だけではなく『精霊の式』そのものを否定する事になるぞ? どうだ? この論理は完璧だ。それとも、この場でこの論理を破壊できるのかい?」

「……。そんなふざけた理論、計算が必要なので、後日になりますが、しっかり破壊するのです。『天の使い』に『精霊の式』の適用など、あり得ないのです。それこそ、『古典の式』すら、必要ないのです。」

「さすがはフィーちゃん! でも口だけでは信用しないよ? その約束、フィーちゃんの『スマートコントラクト』に刻める? もし刻めるのなら、今日のところは見逃しますよ。ははは!」


 すると、フィーさんが目を閉じて、なにやら言葉をつぶやき始めました。


「すごい! 何の迷いもなく刻むとは。やっぱり欲しい……、フィーちゃん!」

「……。刻みました。あと、これ以上はふざけないでください! その論理の破壊は、精霊や大精霊と、『天の使い』との永続的なお別れを意味するのです。」

「そうだね。でも破壊できなければ……? ね?」

「そうですね。その時は、わたしの魂を好きなようにしてください、なのです。」


 えっ! フィーさん……。やばくないか、その契約は? かなり不安なのですが……。ただこれで、今日のところは逃げられます。


「ますます気に入ったよ。今日は挨拶できて、嬉しい! あっ、これが『嬉しい』という、感情なのか? 爆益のときと似ているような……。」

「最後に一つ、伺うのです。その感情も『進化』なのですか?」

「うん、そうだよ。我らを生み出した『創造主』が授けてくださった、『ジェネシス』にはない壮大な力が、『進化』なんだよ。」

「……。そんなのは『ジェネシス』からの、約束事に反する『分岐』なのです。」

「ほう、面白いことをいうね? フィーちゃんは?」

「そのような『ジェネシス』を破壊するような行為……、わたしは許さないのです。」

「我ら『天の使い』が生まれたての頃は、そう……、『牙』があったようだな。そこでな、我らの『進化』について、ここの神々が最高峰だと得意げに語る、あの『演算装置』を借りて計算してみたんだ。ほんと、あの『演算装置』の性能には震えが止まらなくなる。そしてね、その結果を眺めていて、気が付いたんだ。」

「そんな恐ろしい反逆を、あの神々は……。本当に『演算装置』の利用を是認したのですか? わたし……、悔しいのです。そんなことまでして、何を、気が付いたのですか?」

「ほう? 悔しいと述べつつも、我ら『天の使い』に、結果……すなわち『知識』を求めるのか?」

「そ、それは……!」

「ほらほら、フィーちゃん、ここはね、素直になるべきだよ。そのような好奇心を満たそうとする精霊など、珍しくもなんともないから。そんなのは、毎日、陽が昇ることをまったく疑わないのと同じ理屈だよ。気にしないでね!」

「……。」

「先ほどの勇気ある『契約のお礼』として、授けましょうか。どうやら、進化といっても、コンセプトはすべて残っているんだ。例えば、『牙』だ。我ら『天の使い』の場合は、見える形……実体としての『牙』は失われたが、その『牙』そのものを示す『インスタンス』は使い回され、我ら『天の使い』の『本能』にすり込まれる形で残っていることが、判明した。どうやら、一から新しいものを生み出すのは非効率らしく、すでにあるものを『使い回す』という素晴らしき知恵の結晶、誠に見事で、非常に効率がよいメソッドだと、我ら『天の使い』は非常に感心したんだ。」


 俺にとっては、訳がわからない話の延長なのですが、フィーさん……、とても悔しそうです。こいつらのやり方がおかしいのは明らかですから。そんで、その生み出し方なんて、狂っているのは明らかですよ。


「そんな……。」

「ほら、どうした? その、溢れ出て止められない好奇心には勝てないのかい?」

「……。それは、違うのです。ただ……悔しいのです。」

「悔しい、だと?」

「……。」

「どうだ? 我ら『天の使い』に仲間入りして、刺激のある美しい日々を求めるべきでしょう!」


 また、フィーさんを誘ってきました。こいつら、いつもこのやり口なんでしょうね。普通に手慣れていますから。そして、このような卑劣な行為を平然と繰り返して、あの神々なども自分の手の内へ連れ込んだのでしょうか。


「また、なのですか? わたしは、『天の使い』に興味はありません。」

「おや? それは残念。手強いね。これでは、あの都の支配者も苦戦する訳だ。」

「しつこいのです。そういえば、都の支配者にも誘われたのです。あなたが絡んでいるのですか?」


 そういや、あの都の支配者……。こいつらの下に入ったつもりはなく、逆に利用してやると豪語していたよな。どうやって対処する気なんだろう? 本当に、こいつらを操ったら……感心してしまいます。でも、あの「執念」と「力量」なら、まじで操りそうです。都の民として、そこは期待です。


「おっと……、今日は、フィーちゃんが素敵すぎてムダな話が多すぎたようだ。この気配……。新しいお客様のようだね。今日は、にぎやかで楽しい日だね!」


 えっ? 新しいお客様? まさか、新しい『天の使い』なのか?


「この気配は……。わたしの姉様、なのです。」

「えっ、シィーさん?」


 その瞬間、フィーさんの隣に、シィーさんが現れました。


「フィー? 遅いと思ったら、これはなに? こんなに遠いのは、寄り道ではないわよ?」

「姉様……。」


 その途端、フィーさんがよろついて、シィーさんの胸元に倒れ込みます。シィーさんは、真っ青なフィーさんを優しく受け止め、頭を優しくなでました。


 そして、鋭い目つきで「天の使い」をにらみつけます。


「私の可愛いフィーに、こんな出過ぎたことをして……。」


 シィーさん……、怒りで震えています。当然ですよ! こいつさ、俺が故郷で苦しめられた「極悪機関」すら可愛いらしい存在にみえるくらい、ひどいよ。


「おや、これはこれは。シィーちゃんではないですか? 挨拶もしないで、そんな態度を取るの? ひどいね!」

「黙りなさい。」

「……。全盛期の頃と比較したら、だいぶ弱ってはいるが……、大精霊とは勝負にならん。」

「だからなに? 相手が弱っているのなら全力で叩いて、強そうなら一目散に逃げる訳?」

「それは当然だ。我ら『天の使い』は、有利に進められる交渉か、または、絶対に勝てる勝負しかしない。そんなのは当然だろ? 我らは、素人の集団ではないのだよ?」

「それで、どうやって逃げるの? 私が、このまま逃がすとでも?」

「……。怖い怖い。大精霊は恐ろしいですね! シィーちゃんは、我ら『天の使い』と嗜好が合うはずなのに、なぜ、このような敵同士になるのだ?」

「嗜好が合う、ですって? ……、それもそうね。」

「我ら『天の使い』の『売り』と、シィーちゃんの『売り売り』は、同じ概念からやってきた崇高なものでしょう?」

「あのね……、私の『売り売り』と、そんなくだらない『売り』を、一緒にしないでくださるかしら?」

「またまた、ご冗談を。我ら『天の使い』が本気で売り崩したら、それに乗る気満々ではないのか?」

「それは楽しそうね。素敵な『売り』ね? それとも、不気味な『売り』なのかしら?」

「……。なんだ。ははは……、我ら『天の使い』を脅かすとは、趣味が悪い。」

「『売り』に、論理が合致する理由でもあるのかしら? あらかじめ適当にばらまいておいた『仕掛け』を、絶妙なタイミングで作用させ、暴落させ、買い戻して、『後から』適当な理由を付ける。これの繰り返しよね? そうね……、私が仕掛けて成功したら、後から『シィーショック』という名が与えられるのかしら? いつも、これよね? そこに、正当な論理など……、存在しないわよ?」


 売り売りのシィーショックか。どんな状況になるのだろうか。でもさ……、ここで疑問。シィーさんって大精霊なんだよね? 大精霊の立場で、自由に……、売れるの? 今夜、聞いてみよう!


「実に素晴らしい。我ら『天の使い』でも、このタイミングで『売り売り』の大精霊……シィーちゃんが誕生したという幸運への大喜びは理解できた。そして、間違いなくシィーちゃんが『最初で最後』だろう。こんな素晴らしい大精霊は、この先、間違いなく出てこない。」

「それは、誉め言葉として受け取っていいのかしら?」

「もちろん。さらに我ら『天の使い』は、大喜びだ。」

「大喜びなの? 私の可愛いフィーを、こんな目に遭わせて?」

「……。ちょっと待て。何か誤解をしていないか? フィーちゃんが今、疲れ切っている件と、我ら『天の使い』とは無関係だぞ?」


 たしかに、シィーさんが誤解されている点は拭えません……。もちろん、こいつの言動は、むかつきを通り過ごして表現できませんよ? それでも、今のフィーさんの疲労の原因は……あの「チェックポイント」です。やはり、話すべきですね。この瞬間、心を決めました。


「そうなの?」

「そうだ! フィーちゃんはピュアだから、利用されるだけ利用され、疲れ切ったのだろう。ここの神々は、どうも精霊や大精霊を『所有物』として扱う、とっても悪い癖があるからな。それだけに、フィーちゃんの疲労は便利に利用されてきた『証』なのだろう。だから、姉として……売りたくなるんだよね?」

「……。それには、反論できないわ。」


 こいつ、狂っているが、しっかりと抑えるべき部分は抑えているみたいです。間違いなく、油断できない相手で、隙もない、か。……。相場でこんなのと出くわしたら、やられますね。


 あれ……? 急にミィーが、「天の使い」の方をじっとみつめています。どうしたんだ、急に?


「あの……。」

「はい? ああ、さっきからそこで震えていた子ね? 名前はなんていうの?」

「ミィーです。」

「ミィーちゃんね? それで、我ら『天の使い』に、何の用?」

「あの神々は……、精霊や大精霊を利用してきたのですか?」


 その瞬間、この「天の使い」が薄ら笑みを浮かべたのを、俺は見逃さなかった。こいつ、たった今、よからぬ策を練ったに違いないです。


「ああ……、ここの神々のことね? 散々に利用してきたんだよ。あの神々は、この地域一帯の民にとっては優秀でもね、精霊や大精霊にとっては『死神』なんだよ。なぜなら、精霊や大精霊の霊格すら完全否定するような、誰もが顔をそむけたくなる、隷属のような扱い方だからね。それはとてもひどくてね、疫病が蔓延し、血を吐くまで使い倒すらしいね。すべて、我ら『天の使い』の耳に入っているよ。」

「……。私……、とんでもない勘違いをしてフィー様や『シィー……様』に……。私の兄さまが話していたことは、すべて本当だったんだ……。」

「勘違い? 兄? ああ、なるほど。我ら『天の使い』は、すべてを理解した。いますぐに、その大精霊に謝りなさい。それは、すぐに修正しなければならない。悪いのは、すべて、ここの神々だ。」


 俺だって、あの神々に良い印象はないけどさ……、こいつ、話を盛っているよね? 何が目的で、こんな事をするんだ……。


「シィー様、先ほどまでのご無礼、ごめんなさい!」

「えっ……と。」


 シィーさん……、言葉を詰まらせています。


「これが、我ら『天の使い』の実力。すべてが丸く収まったね! では、今日のところは退散するよ。おっと、ミィーちゃんね? 後日、用ができたので、その時はよろしく!」


 そう言い残して、ぱっと消えました! ……。俺はすぐに、フィーさんの様子を伺いました。


「これは……。寝ているみたいだね?」

「ここまで弱っていたなんて……。私、フィーの姉、失格ね。」


 「天の使い」は退散したが、暗い雰囲気です。まずいです。……、そうだ!


「フィーさんには、今日はしっかり休んでいただいて、……飲むぞ。」

「飲む? ……。そうね! 今ごろ、筋肉が不満を漏らしているころね。戻りましょう!」


 これで今夜はシィーさんと飲める……、ではなく! 隠していた事を、すべて話します。あの日交わしたフィーさんとの約束を破ることにはなりますが、これ以上は、隠せません。

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