294, もうこれは「いったん止めて」という、そんな悲鳴よ。どのみち、出金不能のまま異常なハッシュパワーで占有し続けるなんて持続可能じゃない。この量子脆弱性っていうのは、まさにそういった綻びなのよ。
それから、あの採掘の精霊はいったん保留として、そのまま帰還となったわ。……コンジュ姉の言葉が、少しでも届いていればいいんだけど。でも……落ち込んでばかりもいられないの。こう見えても、気持ちの切り替えは早い方よ。そうじゃなきゃ……あんなわたしの過去には、耐えられなかったと思うから。
「ネゲート! そして……女神、コンジュゲート……、様。」
「あら、フィー。やっと、私のことを『その名』で呼んでくれるのね?」
「……はい、なのです。でも……。」
「いいの、気にしないで。私は闇の勢力よ。つまり……、そう思ってくれていて構わないわ。でも、今は……そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?」
「……はい、なのです。」
やっぱり……フィーのことだから、コンジュ姉のこと……「闇の勢力」だって、見抜いていたのね。……さすがだわ。ほんとに。
それで……、あいつは、どこに? ……いた。というか、ほんと……、何もしてない空気感、全開じゃない……?
「ちょっと?」
「……誰? って、なんだ、おまえか。」
「華麗に女神ネゲート様が帰還したんだから、ちゃんと出迎えなさいよ!」
「あー、そうだったな。久々に衝撃的な相場見てて、忘れてた。」
「な、なによ……。わたしより相場が大事ってわけ?」
「なんでそうなるんだよ。つい先日、おまえが倒れたって聞いたときは、それはもう……」
……それはもう、なによ……?
「それで……どうだったんだ?」
「それは……。」
わたしは、現状をありのままに話したわ。
もうこれは「いったん止めて」という、そんな悲鳴よ。どのみち、出金不能のまま異常なハッシュパワーで占有し続けるなんて持続可能じゃない。この量子脆弱性っていうのは、まさにそういった綻びなのよ。
「……なるほど。まあ、ハッシュパワーとか、量子とかはよくわからないけど……、つまり、だな?」
「な、なによ?」
「うーん、そうだな……。十年連続赤字、十年連続下方の銘柄を信用全力で買わされ、それで支えてる、そんな感じか?」
「は、はい? な、なによそれ……。そんな銘柄、どこにあるのよ?」
「えっ? ああ……、この地にあるかは知らないけど……あったんだよ。そういうのがね。」
「……あるんだ、そんなの……。それはそれで、恐ろしいわ。」
「でもね、そういうのに限って、アピールはやたら巧みでさ。それで買わされて、……ああ……。」
つまり、そんな銘柄で吹っ飛ばしたのね。もう……。そんなトレードばかりしてきたから、フィーに止められているのよ。




