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293, カネの切れ目が、ハッシュの切れ目

 まだ、コンジュ姉の説得が続いてるわ。でも……その信仰心、鉄よりも硬いわね。


 まあ……説得程度で改めるくらいなら、最初からこんなことしないわよね。おそらく、この採掘の精霊は……最後まで、この採掘の機材と運命を共にするつもりよ。……、それも、自由。


 でも……、出金不能だけは、これ以上被害が拡大しないように、止めなきゃ。


 ここで、当たり前のことだけど、整理しておくわ。まず、どんな理由があろうと……投資は自己責任よ。上がりそう、下がりそうで手を出した。その結果については……当然、自己責任になる。これは良いわね?


 でも、出金不能は違うのよ。口座の残高に表示されている「現物」や「通貨」……それは、いつでも必ず引き出せることが前提よ。それができない時点で、もうそれは「自己責任」じゃないわ。


 もし、出金不能まで「自己責任」で済ませるなら……「ポンジ」のスキームで資金が消えたって、問題じゃないってことになるのよ。……そんな解釈、女神として、絶対に許しちゃダメね。


 そして、その瞬間だった。


「ネゲート……これはやっぱり、もうダメね。まず、どんなに赤字であっても、止めることは絶対にできない。止めた瞬間、すべての懸念材料を同時に織り込んで、制御不能になるわ。もうね、一か所でそんな状況に陥ってしまう時点で成り行きに任せることすらできない。……なんか、この設備自体が……ただの延命装置にしか見えなくなってきたわ。」

「……。」


 コンジュ姉は……、諦めかけたような顔で、わたしにそう……うながしてきた。わたしだって……こんなもの、見せつけられた瞬間から、もう予感してたわ。


 ううん……全身を駆け巡るように、あの感覚は、確かにあったわ。カネの切れ目が、ハッシュの切れ目。……なんて状況なのよ、これ。


 こんな状況で、採掘の量子脆弱性を織り込みに行くなんて……。どうやって? ……ほんとに、正気とは思えないわ。


 ここで、そういえば……、ミームなあの精霊よ。交易で無茶な要求を突きつけておいて……「これで治療オペ完了。当分の間は市場が大きく荒れるが、気にするな」……なんて、そんな恐ろしい発言まで飛び出たのよ。そもそも……精霊や大精霊が、自分の市場を蹂躙するなんて、いったい何を考えているのよ……ほんとに、もう。


 でも……、こっちは止めることすらできない。つまり、その「治療オペ」すら……どうやって? って話なのよ。

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