291, もうね、一体何を支えてるつもり? この状況に、今のハッシュパワーを赤字で捧げるほどの価値なんてないのよ? つまり、もう崩れるってわかってて、それでも支えてる。ただ、それを止められないだけで。
冷静沈着なコンジュ姉が、あの狂信的な採掘の精霊を説得している……。……やっぱり、わたしは、まだまだだわ……。
「女神コンジュゲート様。我らは、量子という異端など信用いたしません。この圧倒的なパワー、これで戦えと、あの大精霊様も……、必ずや、力強くおっしゃることでしょう!」
「……あのね。そういう話じゃないの。それにまた……、信徒たちから巻き上げたお金で、いったい何を買うつもり? そういう行動まで含めて、結局はただの『信仰マーケティング』でしかないのよね? でもね、そんなオカルト……、ごまかしが一切通じない相手。それが『量子ビット』よ。なにを、どうやって戦うつもり? ……どうせその大精霊に聞いたところで、相手を全否定して突っぱねろとか、非論理的な言葉で煙に巻こうとするだけでしょう?」
「女神コンジュゲート様。お言葉ですが……、力こそ正義です。そして、その『力』……それこそが、ここにあるのです。」
「あら、そう。なるほど……そういうこと。そういえば、採掘の機材を定格外で稼働させているって、ネゲートから聞いたわ。それでそんなに自信たっぷりなら、うーん……、そうね。定格の千兆倍くらいは、性能を向上させてるんでしょうね? それなら、あなたの言う『力こそ正義』も、成り立つかもしれないわね?」
「あ、あの……。定格の千倍とは……。そんなに、量子には……、ずば抜けた性能があるのですか?」
その瞬間、コンジュ姉の表情が、ふっと曇った。まあ……仕方ないわ。相手が相手だもの。
「……差が大きすぎて、聞き逃したのかしら? 千倍じゃないわ。『千兆倍』よ。そんな相手に……この程度の採掘の機材で勝てると本気で思ってるの? いい加減……本当に目を覚ましなさいよ。もうね、一体何を支えてるつもり? この状況に、今のハッシュパワーを赤字で捧げるほどの価値なんてないのよ? つまり、もう崩れるってわかってて、それでも支えてる。ただ、それを止められないだけで。」
……そうだったのね。あんなに目の前にあったのに、コンジュ姉の言葉でやっと気づいた……肝心なことに。




