290, コンジュ姉……。この特殊液体に沈む一つひとつの採掘の機材が、まるで封じられた怨念のよう。……まさか、こんな形で因果律に触れることになるなんて……。
何もしなければ……このまま、最短で終わる。それは、間違いないのよ。
いま、報道を司る妖精が「採掘の量子脆弱性スルー戦法」で、情報拡散をうまく抑え込んでるわ。でも……、もともと嗅覚が鋭い採掘の精霊が、この非常事態を見逃すわけがないわ。
だからもう、採掘にしか使い道がなかった高価な採掘の機材を次々に投げ売って、一斉に「推論の精霊」へと転向しているのよ。……ほんと、この行動力には感心するしかないわ。でもね、こればかりは、憶測でも陰謀でもないの。紛れもない……事実よ。
それで改めて観察してみると、特に、この一週間の動きが異常。実際、時系列で並べてみると……「なんでこんな急に?」って疑問がすぐに頭をよぎって、その状況に……背筋が凍るのよ。それは、一箇所や二箇所……どころじゃないの。十や二十……ううん、もっとあると思うわ。
その「推論の精霊」への転向理由としては、「燃料代が高過ぎる」「損益分岐点が高すぎる」とか、「採掘の機材が交易で入手しにくくなった」とか、もっともらしい理由がいくつも並んでるけど……正直、見ていてきついわね。
もちろん、それらは当たり障りのない「建前」に過ぎない。採掘にしか使い道がない採掘の機材を売り抜けるための、ただの方便よ。それで、ミームなあの精霊に機材を押しつけて逃げる採掘の精霊まで出てくるなんて……ほんと、やってくれるわね。
本当の理由は……言うまでもなく、「採掘の量子脆弱性」よ。まさに、寝耳に水ってやつね。いつ鉄くずになるかもわからないものを、そんなの、誰が手元に置いておくっていうのよ。
それに加えて、ミームなあの精霊が交易で暴れて、銘柄の市場は大荒れ。でも、今は……こっちよ。
そして、また……狂信的な採掘に全振りと言われるこの場所に戻ってくることになるなんてね。でも今回は、コンジュ姉と一緒よ。
ただ……よくわからない液体に浸された採掘の機材なんて、もう誰も欲しがらない。この液浸冷却の装置ですら、専門性が高すぎて買い手なんているはずもない。だって、細部が加工済みでは採掘の精霊にしか需要がない……。もう、なにやってんのよ!
「女神ネゲート様……ご体調の方は、よくなられましたか?」
「なによ? あんたに心配される筋合いなんて、ないわよ。ほら……、この通りよ。」
「女神ネゲート様。それは何よりです。ところが最近、我ら採掘の精霊の仲間が……邪な大精霊シィーの推論に転向し始めまして……、いったい何がどうなっているのか……。それでも、いかなる混乱があろうとも……我らの立場は変わりません。最後まで、採掘を貫き通します。」
「ふーん、そうなんだ。」
「そして……女神ネゲート様に加え、女神コンジュゲート様まで! ま、まさか……ご視察にお越しですか!? 我らは、やりました。このような液に採掘の機材を浸すことで、ついにクリーンとなりました!」
「ねえ……。これは、想像以上にひどいわ。」
「あ、あの……女神コンジュゲート様?」
「私はね……、このような採掘の機材の存在こそが、大きな過ちだったと解釈しているのよ。本来、チェーンの分散性を確立するというのなら、こんなやり方に……本当に、異議はなかったのかしら? 単に、最大抽出可能価値などを有利に進めたかった、ただそれだけよね?」
「そ、それは……。」
「さらには、推論への転向が、なぜ加速しているのかすら……、あなたは見ようともしないなんて。」
「女神コンジュゲート様……。それは一体、どのような解釈で……?」
「あなたは、逃げないのかしら? それなら逆に感心いたしますわ。ここに沈められている採掘の機材に魂を縛り付けられたまま……、一緒に深淵へと沈む道を選ぶのね。まあ、あれだけのことをしてきたのだから……その最期は、一体どうなるのかしらね?」
コンジュ姉……。この特殊液体に沈む一つひとつの採掘の機材が、まるで封じられた怨念のよう。……まさか、こんな形で因果律に触れることになるなんて……。
そしてこれが……カルマってやつなのね。巡り巡って、全部、自分のところに返ってくるなんて。