277, ちょっとフィー、どういうつもり? 「集約シグバキューム」ってなによ……。それで完全犯罪が成立? いったい何を考えてるのよ! ふざけないでよ!
さっきから、どうなってんのよ……。ギラギラしたヤバそうな武器ばっかり見せつけられて、わたしに何をしろっていうの? そもそも「ミッション」って何よ、それ? ……もう、さすがにイライラしてきたわ。
そのときよ。部屋の奥……ふと動いた気配に目を向けると、そこには……見覚えのある顔が。
「あら、フィーじゃない! ……そうよね? というか……なんで? そもそも、ここはどこなの?」
「女神ネゲート様、ご機嫌うるわしゅうございます。ここは……ミッション遂行のために設けられた特別な空間なのです。」
「なによ、その挨拶? ねぇ……フィー、どうしちゃったのよ? そもそもミッションってなによ?」
「女神様。わたしも、この『集約シグバキューム』で、戦うことに決めたのです。」
「……ちょっと、なによその武器? なにそれ、いったい……どういうこと?」
ちょっとフィー、どういうつもり? 「集約シグバキューム」ってなによ……。
「女神様。この『集約シグバキューム』は、……と組み合わせることで、最大の威力を発揮するのです。裏には非公開で……を仕込み、表向きは『集約によるポンジ』で安心させておくのです。そして、スキャムの時間が来たら、さようなら。裏にある非公開の……を発動させるだけで、その強奪が完了となるのですよ。そして、集約の性質上、わたしの痕跡は一切残りません。なぜなら、『集約とペアになる鍵と署名』を使い捨てにすることで、集約を支える楕円曲線はその『逆算』を絶対に許さない。その結果、集約が何で構成されていたのか……誰にも、絶対にわからないのです。それにより『完全犯罪が成立』する。……これが、この武器の真の強みなのですよ。」
「それで完全犯罪が成立? いったい何を考えてるのよ! ふざけないでよ!」
「女神様、落ち着いてください。いまやスキャムも『第二レイヤーのポンジ……トークン』で稼ぐのは、もう手口がバレてしまい、大変なのです。だからこそ……ギャングの精霊からの強いご要望にお応えすべく、登場したのが、この『集約シグバキューム』というメカニズムなのです。すばらしいでしょう?」
「なによそれ……。」
「女神様。なんといっても、この武器の最大の魅力は……『第一レイヤー』で使えるという点にあるのですよ。そろそろ、スキャムによって『第二レイヤー』の信用が持たなくなってきた……。それは、かつては『第二レイヤー』の成果が支えとなっていた通貨の値動きにも、はっきりと表れているのです。ならば……スキャムの舞台をいよいよ『第一レイヤー』に移動させる。ただ、それだけの話なのですよ。」
「……、あのね? それが『ただの話』で済むと思ってるあたりが、もう終わってるのよ。『第一レイヤー』が何だかわかっているの? あれはシステムの『コア』なのよ? そんな場所で、一体何をするつもりなの!?」
これは、そう。ただ似ているだけで、フィーじゃない。おかしいもの……。そうよね……?
「女神様。どのみち、このまま量子によって、幕を閉じられるだけなのですよ? それなら……最後くらい、派手に飛ばして終わりにしませんか? そうです、『第一レイヤー』を、ぶっ壊すくらいに……そう、滅茶苦茶に暴れましょうよ、女神ネゲート様。」
「ちょっと……なによそれ? まだ……量子は来てない、はずでしょ……?」
「ですが女神様……、集約がまだなのです。そろそろ本格的な実装を、お願いできますか?」
「な、なによ……?」
……、その瞬間だった。遠くの方から、はっきりと聞こえたの。そう、あいつから、わたしを呼ぶ、声が。




