276, えっ……? クリプト・セフト・……なにそれ? ミームガン? ラグプルランチャー? ステーキングナイフ? そんなもの持たされて……わたしに、いったい何をさせたいのよ……?
急に……なにかしら。出口の見えない暗い空間で、ただ座り込んでいたわたし。そのとき……瞬く間に、光に包まれ……。徐々に明るくなっていく視界の先に、目を疑うような……見たこともない造形の「何か」が、ずらりと並べられていた。
「さあ、女神様。お選びください。」
「えっ! な、なによ……。」
……あれ? わたし、今……何してたっけ? たしか……いや、ダメ、思い出せない。っていうか……なにこれ!? 何この状況!?
「……。女神様。失礼いたしました。選択の余地など、初めからなかったのですものね。すべて、ご要望でしたので。」
「ちょっと待ちなさい! なによ、これ!? 一体、何なのよ? これらは?」
「女神様……。そうはおっしゃいましても、こちらとしても……ミッションを遂行するうえで、極めて重要な『武器』となるものでして……。」
「ぶ、武器? なによ、それ。こんな物騒なものを、わたしに?」
「女神様。これから重大なミッションに向かわれるのですよ? まさか、丸腰で行かれるおつもりですか? それは、あまりにも無謀です!」
「ちょっと、話がまったくつながってないのよ! 一体、どうなってるの!?」
「女神様、失礼いたしました。まずは、ご用意した武器の性能について、順を追ってご説明差し上げるべきでした。」
……なんなのよこれ? さっきまでのわたし……たしか、採掘の精霊と今後のことを真剣に話し合っていたはずよ。ところが、そう、それすら現実離れした話だった。なんと、手元に残る「ホルダーから集めた莫大な額」を使って、採掘の機材をさらに増強し、量子に立ち向かうというサクセスストーリー? ……、絶対に、絶対に、絶対に……、あり得ない計画。そんな話を延々と聞かされていたはずなのに……、なのに、今、目の前にあるのは……なにこれ? 武器って……。
「なんなのよ……。」
「女神様。まずはこちら……『ミームガン』のご紹介です。これを一発撃ち込むだけで、誰でも即座にミーム犬をローンチできるという優れモノでございます! そして、流動性の確保、流動性のロック、さらにミームの広報活動まで……すべてがオート。これぞ、まさにセフト・オートな構造でございます!」
「……はい? ちょっと待って、今、なんて言ったの?」
……。なに、これ?
「女神様。驚かれるのもごもっとも! ええ、ミームガンだけではミッションを遂行できません。そこで……ご一緒にお持ちいただくのが、こちらの『ラグプルランチャー』でございます!」
「……なによ、その物騒な名前は。」
「はい、女神様。こちらはミーム犬に確保された流動性を、一気に、そして確実に引き上げる効果を発揮いたします! しかも、先ほどのミームガンによる流動性のロックと組み合わせることで、より強力な吸引が可能に。ご安心ください、使用後もウォレットに痕跡が残らないステルス仕様となっておりまして……、まさに、プロのための一本です!」
「……な、なんなの、それ? 武器っていうか、犯罪のにおいしかしないんだけど……。」
……。
「女神様。それでは……こちらの方がお好みでしょうか?」
「え……今度はなによ……。」
「こちらは『ステーキングナイフ』でございます。とはいえ、この武器は本来、女神様向けではなく、精霊様向けの武器でございます。」
「……はぁ……?」
「ご安心ください。こちらは、高い利率のステーキングでロックされた資金の『出金権』を、鋭くスパッと切断する仕様です。出金不能で困った精霊様でも『流動性は確保されております』と胸を張れるように、出金の芽をあらかじめ摘んでおけるのです。もちろん、直接攻撃には向きませんが……、じわじわ効く間接武器としては、なかなか強力でございます。」
「……。ねえ、これって武器なの? それともただの……犯罪ツールなの? 答えなさい!」
「女神様、これがまさに、クリプト・セフト・……。ああ……なんて、滑らかな奪い方……。」
えっ……? クリプト・セフト・……なにそれ? ミームガン? ラグプルランチャー? ステーキングナイフ? そんなもの持たされて……わたしに、いったい何をさせたいのよ……?




