275, とにかく、ダブルハッシュによって、わざわざ探索空間の地形を滑らかにしてしまった。そうね……あの険しい山の標高が、急に二分の一くらいに縮んだ感じかしら。
とにかく、ダブルハッシュによって、わざわざ探索空間の地形を滑らかにしてしまった。そうね……あの険しい山の標高が、急に二分の一くらいに縮んだ感じかしら。
この地で最も高い頂を目指すのは本来難しいことだけど、その二分の一くらいの高さなら、なんとか登れてしまう。そんな感覚。そして、山が低くなれば、目的の解が存在する谷も見つけやすくなるということよ。
するとね、量子は驚くほど動きやすくなって、鮮明すぎるほどの結果を得ることができてしまう。つまり……そう、破られるということよ。
結局、採掘の正解を阻む「局所解」……全体としては最善ではないものの、そこから少しでも動くと悪化してしまうため、局所的には「良さそうに見える」解。それらを大幅に減らすことができれば、結果として「外れ」を引く確率を大きく下げられる、というわけね。
そして当たりばかりを引く。それをダブルハッシュが実現してしまった、ということ。そして、採掘にダブルハッシュを採用しているチェーンは……。ええ、そう。分かってた。……もういいわ。
もしこれがシングルで、滑らかでないなら……、量子の波が意図せぬ干渉によりうまく伝わらない、特定の場所に「確率振幅」が偏る、そのまま「局所的な最小値……つまり、探索空間全体からみたら最小ではなく不正解なハッシュ値」に量子の波が吸い込まれてしまうなど……それらの作用で「外れを引く」ことになったのよ。
……わたしは、女神よ。何とかしないといけない。でも……目の前に広がる採掘の機材を温存しながら、有効な手立てなんて、本当にあるのかしら……? とにかく、考えるしかないわ。
ああ……。なんで、採掘の機材に全振りなんかしたのよ! 少しは、こうなることくらい、考えておきなさいよ! その唯一の価値が崩れたら、その瞬間、ただの鉄くず……。分散とは名ばかりで、中身は偏りに偏っていた……そう、信仰で固められた単一構造体よ、あんなの……。崩れ落ちる時は、一瞬だわ。




