273, 女神様……、それは、どういった意図が含まれているのでしょうか? 採掘のあのハッシュは、たとえ量子をもってしても、効率的に解く術がない。だからこそ神聖とまで称され、しかもダブルハッシュです。
あら? 少しは目が覚めたのかしら? あれから、わたしが「ここでは太陽がぐるぐる回ってるのね」なんて揶揄してやったら、さすがに反応が変わってきたわ。だって、そうでしょう? さっきから……もう、どうなってるのよ? いったい、何なのこれ?
たしかに採掘は大切よ。でも、その安全性が数の叡智で証明されているわけじゃない。つまり……万一、脆弱性が見つかったとき、すぐにでも切り替えられるように運用しておかなければならないのよ。なのに、なに……これ……。
そもそも、こんなにも同じ仲間内の採掘の精霊ばかりで採掘の機材を抱え込んでいたら、チェーンの分散性にすら影響が出るじゃない。さらに、それらを定格外で無理にぶん回しているなんて……ね、もう、それって、そうよ!
「女神ネゲート様、お気を確かに! 量子だなんて……。まさか、そんなご確認でここを訪れたのですか!? 申し訳ありませんが、そのような量子など、我らの相手ではございません。ご覧ください。この設備、この規模! あんな量子ごとき、手も足も出ません!」
「ちょっと、あんた、何を言ってるのよ!? 採掘の機材をいくらかき集めたところで、肝心の問題が量子アルゴリズム……『制約付き最小化問題』と噛み合ってしまったら……その瞬間、終わりなのよ! そんな機材では、絶対に、量子には勝てない。いい? 絶対に、量子には勝てないのよ。この意味、わかってるの!? あの精霊の論文だって、冒頭からその点を徹底的に突いてるわ! ……もう、いい加減に目を覚ましなさいよ!」
もう……。自分でも、脈がどんどん高まっているのを感じるわ。これ以上は……、もう、本当にいい加減にして。
「女神様……、それは、どういった意図が含まれているのでしょうか? 採掘のあのハッシュは、たとえ量子をもってしても、効率的に解く術がない。だからこそ神聖とまで称され、しかもダブルハッシュです。」
「あのね、効率的に解く術がない……それは、逆像アタックの場合の話よ! でも、この採掘は違うの。あと……、ダブルハッシュ? それって……。」
急に、血の気が引いていくのを感じる。そうよ、この採掘は「ダブルハッシュ」だわ。ちょっと待って。だってそれって……、一度出したものを、また中に戻してから出力し直す構造ってことよね? つまり、そのダブルハッシュの構造って……、量子からみたら、それって、さらに「解きやすくしているだけ」よ! なんでよ……。なんで、そんな構造になっているのよ……。