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272, 採掘の難易度調整が「制約付き最小化問題」で破壊される、量子脆弱性。そんなの、この採掘の精霊にとっては……信仰そのものを破壊されるのと同じ。そんなの見ないふり? それでも量子は回っている。

 もう! どうなってるのよ、これ……。「採掘の機材」に全振りなんて、ほんと、正気じゃないわ……。量子の脅威で、あのハッシュによる採掘……コンセンサスメカニズムが崩れかけてるのに……。「別の仕組みに置き換えましょう」なんて、今さら本当に、もう誰にも言い出せない。一体、どうしたらいいのよ……。


 採掘の機材は、決められたハッシュの採掘しかできない。……これは、本当のことよ。他の仕事は一切できない。……これもまた、本当のこと。つまり、このような機材で採掘ができなくなった瞬間……そう、コンセンサスメカニズムが変わったその途端、これら機材は全部、瞬時に……、「ただの鉄くず」と化すのよ。


 そこが、「単精度」や「倍精度」との大きな違い。それらをこなせる「古典ビット」は、その並列演算性を活かして採掘もできるし、推論だってこなせるわ。でも……その分、採掘の効率がすこぶる悪い。だからこそ、信仰が絡んだとき……こうした「純粋な採掘の機材」が生まれてしまうのね。


 それで、この採掘の精霊には……ホルダーがいるのよね。そこには機関だって、当然いるはず……。無理よ、こんなの。もう、絶望しか見えない……。


 ……。そのとき、わたしはふと気がついた。この精霊が扱っている採掘の機材……なんだか、様子がおかしいわ。全身を突き抜けるような、この違和感……。ううん、間違いない。これは、あれよ。


「ちょっと。この採掘の機材、なにか細工してない? なんか、妙な感覚がするのよ。」

「女神様……さすがは『演算の女神様』の異名を持つお方。ご明察です! そうです、これらの機材には、極限まで速度を高める処置を施しております。」

「な、なにを言ってるの……? つまり、それって……定格外ってことよね?」

「女神様、そのとおりでございます。選ばれし我らのみが扱える、神聖なる特権。極限まで速度を高めることで、我らは神聖と一体化し、ハッシュパワーを支える大いなる糧となるのです。」

「……えっ。」


 もう……本当に、ただの狂気。定格外だなんて、冗談はやめて。そこまでしても、採掘の難易度がすぐに上がって儲かるわけでもない。これはもう、商売ですらない。本当にただの……信仰。採掘の難易度を上げることが、誇りであり、ステータス。そう……まるで魂に刻み込まれているかのよう。


 しかも、エネルギー効率だって、まったく合わないわ。定格から外れれば外れるほど、燃料消費量は跳ね上がり、ただの爆熱をまき散らすだけ。そこまでして、いったい何がしたいの……?


 こんなの……本気で、ホルダーが納得してるとでも思ってるのかしら? まさか、それすら「信仰」で押し切るつもりなの?


 ……、採掘の難易度調整が「制約付き最小化問題」で破壊される、量子脆弱性。そんなの、この採掘の精霊にとっては……信仰そのものを破壊されるのと同じ。そう……これは、どんな機関であっても必ず休暇を取る「あの日」が奪われてしまうような、そんな感覚。もう……無理。


「女神様。それほどまでに、我らの意気込みを感じていただけたなら、何よりでございます。ところで、実は……我らの同胞が、すでに聖地で奮闘しております。そこで、そろそろ我らもそちらへ向かおうかと考えているのです。」

「ちょっと……同胞って……。まだ、こんな採掘全振りな、採掘の精霊が他にも……?」

「あ、あの……女神ネゲート様?」

「え、あ……そうね、そうよ。ううん、えっと……そう、聖地ね?」

「はい、まさしく。聖地には専用のエネルギー供給網が整っており、我ら採掘の精霊にとっては理想郷……恵まれた地域なのです。ぜひとも、女神様もご一緒にいかがでしょうか?」


 ……。もう……。わたしは、女神として異端審問にかけられる運命なのかもしれないわ……。


「ああ……。太陽が……わたしの周りを回っているのね……。」

「女神様!? ど、どうされたのですか!」

「え……? ああ……もう……。どうでもいいわ……。」


 ……、量子脆弱性なんて、そんなの見ないふり? それでも量子は回っている。時代が変わっても、思い浮かぶ言葉は変わらない……やはり、ヒストリーは形を変えて繰り返されているのね。

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