263, おい、このポンコツ女神がよ……! こっちはな、みな必死なんだよ。こんな収益じゃ、採掘の機材代すら回収できねぇ。どんな手を使ってでもどうにかしろ。……お前、女神なんだろ?
そう……。わたしが目を通したのは、すでに公開されてしまった論文。つまり、採掘の精霊たちも……、詳細までは掴めなくても、その概要くらいは理解しているはず。そして……例の実証実験に不安を抱えたまま……やっぱり、こうなってしまうのね……。
「さっすが女神様だな。俺らがどんだけ苦しいかも知らずにのうのうと……。なあ、このザマ見てまだ余裕あんのか? 採掘の機材すらペイできねぇんだよ、こっちは。それでも女神名乗るなら、結果で示してみせろよ?」
……。そんなの……。欲張って大量に採掘の機材を買い漁った、あんたにも責任あるでしょ?
「なにこのザマ? 噂で聞いたぞ、あの論文の件。『量子ゲート』に加えて『量子アニーリング』にまで付け込まれたって話じゃないか。ふざけんなよ? お前さ、女神なんだから、せめて『量子ゲート』の時点で止めておけよ。このまま『量子ゲート』と『量子アニーリング』で妙な競争でも始まったら……どうするつもりだ?」
「しかもよ、あの『量子アニーリング』の精霊ってヤツ、最近やたらと俺たちの動きを嗅ぎ回ってる。マーケットマニピュレーションだの、最大抽出可能価値だの、カネの流れまで研究対象にしてるって話だ。どんだけ余計なことしてくれてんだよ! 邪魔なんだよ、マジで。そんなヤツに、あんな論文を公開させるなんて……お前、本当に女神か? 正気とは思えねぇよ。」
もう……わたしだって、その実態については、つい先日、あの腐った精霊で痛いほど思い知らされたんだから。
それで……その「量子アニーリング」を研究している精霊は、ああいう実態も研究対象として扱っている。それも、事実よ。でも……あんなもの、持続性なんてあるはずがない。ただの「ポンジのデルタ」。それだけよ。
「というかよ、『最も幸福に近い』とまで謳われてる大精霊の地域一帯……あれ、マジでやばいだろ。俺たちなんかよりも何倍も、採掘の機材を買い増してるらしいぞ……。」
「おい、女神。責任の重さ、ちゃんと理解してるか? その大精霊の地域一帯はな……このままじゃ崩壊するぞ。『最も幸福に近い』って言われていたあの理想郷が、地獄そのものに堕ちていくんだ。……それでも、おまえは黙って見てるつもりか?」
……。その話……。自然環境の保全で、採掘の機材だったのよね。でも……あの轟音が、すでにその調和を壊し始めてる。ううん、わたし……。なにを言ってるのかしら、ほんとに……。
「おい、このポンコツ女神がよ……! こっちはな、みな必死なんだよ。こんな収益じゃ、採掘の機材代すら回収できねぇ。どんな手を使ってでもどうにかしろ。……お前、女神なんだろ?」
……、なによ……。
「どんな手を使ってでも……? なによ、それ?」
「はっ、単純な話だよ。カモをがっちり確保してる精霊が、まずたっぷり囲い込む。で、最大抽出可能価値をぶっ放して流動性を薄くしておいてから……、下げる。それで買い板をスカスカにして、そこから一気に成り行き買いをぶち込む。よくある手口だろ?」
「ちょっと……なによ、それ……。」
「おまえ、本当に女神か? 流動性が薄くなったところで、ガツンと上げる。そのタイミングで『売り売り』も一斉に焼ける。……そりゃあ、上がるわけだよな?」
「……待って。わたしが言ってるのは、あなたが初めに指摘した『たっぷり囲い込む』の部分よ。何を、囲い込むっていうのよ?」
「おいおい……女神様。そんなの、『出金不能』に決まってんだろ。高い利率で釣れば、いくらでも入金してくるっての。それを囲い込んで利用する。それだけだ。とにかくな、上がりゃあ、それでいいんだよ。どんな手使おうが、結果がすべて。……そういうことだろ?」
まさか……、そんなところにまで、出金不能が絡んでいたなんて。やっぱり、そこまで視野に入れておくべきだった。わたし……甘かったのね……。




