258, そうね、神託はこう修正するのよ。「複利付き年間収益率」の式を改良し、最初のカッコの前に積として「ポンジのデルタ」を与える。これはね、平常時は常にイチ、ところが出金不能ならゼロになるのよ!
わたしは演算の女神よ。そうよ、なにが「最上位マスターリーダー」よ? こんな中央なチェーンなんて……。わずかなわたしの力でも、こうして……、……、……。うん、できたわ。あとは、これを十賢者に向けて流し込んでやれば……。さーて、どうなるかしら? 中央の性質では、これはどうにもならない。間違いなく長時間停止のち、チェーンの強制再起動に追い込まれる。その隙に逃げるわよ。
「女神ネゲート様。そろそろ、心の準備は整いましたか? 私どもも、余裕がないものでして……。そろそろ、標準的な指示ではなく、より『効果的な対応』をお願いしたいところです。おわかりですよね? カモが現れ次第、最大の収益率を叩き出してください。」
ほんと、呆れるわ。女神をここまでこき使って、やらせることがこれ? ふざけすぎよ。でも、まあ……そろそろかしら。その毒が「理想なチェーン」に作用するまで、お付き合いしてあげる。
「あら? そうね。それでね、わたし……神託を修正しようと思っているのよ。」
「女神ネゲート様! それは……。そうですよね。実は、私どもは悔しい思いをしております。あの大精霊様の口から直接『理想なチェーン』の名が最初に挙がったにも関わらず、他の精霊に邪魔をされ、結局……まずは非中央となってしまったのです。こんな酷い話、信じられますか?」
「へえ、そうなんだ。」
「女神様……。ありがとうございます。その神託に、この『理想なチェーン』の名を……刻まれるということですね?」
……。ほんと、腐りきってるわね。誰がそんな茶番に乗ると思ってるの? 出金不能が続くこのカオスな状況で、よくもまあ、そんな自信満々でいられるものね。
「そうね、神託はこう修正するのよ。『複利付き年間収益率』の式を改良し、最初のカッコの前に積として『ポンジのデルタ』を与える。これはね、平常時は常にイチ、ところが出金不能ならゼロになるのよ!」
「女神ネゲート様、それはいったい、どういう解釈で……。」
「あらら。そのまま過ぎて驚いたのかしら? もし出金不能なら、『複利付き年間収益率』は常にマイナスのイチとなるわ。そうよね? へえ、『複利付き年間収益率』が常にマイナスのイチになるって……。さて、それをどう解釈するのかしら? うん、元本含めて全額無くなるってことよ。合っているわ、出金不能の状況とね? ほら、こうすれば……、しっかりと式でこのカオスな状況を書けるってこと。すごいでしょう? わたしは女神よ。これくらい、すぐにでも思い付くんだから!」
「女神ネゲート様! こんな訳の分からないものを神託に刻むなんて、あり得ません!」
「あら、どうして? 他の精霊がこの式を使い始めたら、何か困るのかしら? あのね、真面目にやっている精霊なら、逆に大歓迎でしょう? もし『出金不能……ポンジのデルタがゼロ』なら、いくら『高い利率のステーキング』を提示したって、『複利付き年間収益率』は必ずマイナスのイチになると、式で説明できるようになるのだから。つまり、元本含めて全額無くなる。ほら、理論は完璧よ!」
「女神ネゲート様、それは……。」
「それは、なにかしら?」
どうやら、わたしの思わぬ反撃に驚いているみたいね。まあ、もう少しだけ、お付き合いいただけるかしら?




