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256, 女神様が寛大でいてくださるおかげで、私どもは非常に助かっております。レイヤー同士の相関を持たせなかったことで、ばれることなく処理できた……それこそが、成功の鍵だったのです。

 ううん……こんな時こそ、気をしっかり持たなきゃ。どうせ下僕の件を誤魔化すために、適当な嘘を並べただけよね。ほんと、もう……。


「さて、女神ネゲート様。そろそろ、この仕組みに慣れていただかないといけませんね?」

「なによ? ちょっと待って! まだ下僕の件、終わってないわよ? なんで、こんなことして……。どうして下僕なんかになるのよ? 何の見返りもなしに? おかしいでしょ?」

「女神ネゲート様。そこは、ちゃんと上手くやっていますよ。無報酬では下僕にはなりませんから、少しだけ、ステーキングを分けてあげているのです。」

「……えっ?」


 もう、何なのよ……。次から次へと、呆れるほどに衝撃的なことばかり。少しだけ分けてあげる? なによそれ? それって下僕っていうより、お友達みたいな関係じゃないの?


「ねえ、ちょっと? これ、ますますおかしなことになってない? そんな仕組み、どうやったら成立するのよ? 少しだけ分けてあげるって……あんたらが気に入った精霊だけってことよね? なによ、そのお友達みたいなやり方?」

「女神ネゲート様。私どもに忠義を尽くし、十賢者や女神様に敬意を示す精霊のみが、下僕になれるのです。無事に下僕に選ばれれば、ステーキングによる報酬が手に入る……そういう仕組みでございます。」

「あのね……それは、なんという仕組みよ。中央に選ばれる? ううん、選んでいるのね? まあ、もう驚く気力すらないけど。いったい、何を参考にしたら、そんな仕組みができあがるの? あとね、さりげなくそこに女神を混ぜるのはやめてちょうだい。わたしに敬意を示すって? こんなの、誰がやるのよ!」

「女神ネゲート様。それは、まったく問題ではありません。それよりも、先ほどお伝えした『第二レイヤー』の件……もうお忘れですか? 『第二レイヤー』の件こそが、本当に恐ろしいのですよ。」

「あのね……。わたしは、あんたの方がよっぽど恐ろしいと思うけど? この気持ち、少しは理解できるかしら?」


 とにかく、こんなことになっていたなんて……! 「量子ビット」に気を取られ過ぎて、完全に見落としてた……! でも、どうすればいいのよ……? どこから手を付ければ……。 どのみち、この精霊は……もう、どうしようもない……。


「女神ネゲート様……なるほど、そうですか。それならば……こんな視点で考えてみるのも、面白いかもしれませんよ?」

「もう、いい加減にして。これ以上、どんな話が積み上がったって、何も変わらないし、驚くこともないわ。さあ、言いなさいよ?」

「それでは……。女神様が寛大でいてくださるおかげで、私どもは非常に助かっております。レイヤー同士の相関を持たせなかったことで、ばれることなく処理できた……それこそが、成功の鍵だったのです。いかがでしょう?」


 それって、結局、わたしが甘すぎたってことよね? ……はぁ、そうね。それは、わたしも認めざるを得ないわ。


「そうね……。つまり、それって……。『第二レイヤー』の短冊には、実質的な価値なんて、まったく宿っていないってこと……? ……、たしかに、そうなる。相関がないわ。チェーンとしての価値が宿るのは『第一レイヤー』のみ。……。」

「女神ネゲート様、ご明察です。レイヤー同士の相関がない以上、その間に精霊を介在させる必要があります。そして、その精霊の裁量ひとつで『第二レイヤー』の価値は決まるのです。この仕組みがあるからこそ『高い利率』の展開が可能となるのですよ。なぜなら、『第一レイヤー』に縛られていないのですから。もちろん……出金できるかは、わかりませんがね。ですが、これこそが、この界隈のルールです。」

「なによ……。そんなの、そんなの……、ルールじゃないわ!」

「女神ネゲート様、どうか落ち着いてください。これこそが、女神様の神託から映し出された『現実』なのです。」


 ……。これは、この精霊だけの問題じゃない……。至る場所で、同じような出金不能が多発している。その原因は「高い利率のステーキング」ではなく、そこに深く根付いた「第二レイヤー」の甘さ……。それこそが、すべての元凶だったのね。

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