253, 非中央のチェーンは、すでに役目を終えました。その証拠に、あの大精霊様は非中央よりも先に、私どもの「理想のチェーン」の名を挙げたのです。そのあまりの感動に、思わず身震いしてしまいました。
なんなのよ……このチェーンの構造は……。わたしが「最上位マスターリーダー」って……? こんな茶番のような仕組みに、女神であるわたしが……。どうして、こんなことに……。
そもそも「光円錐にヒストリーを刻む上位リーダーの十賢者」って、一体何なの? まさか、本当に、今まで非中央のふりをしながら、その十賢者だけでコンセンサスを決めてきたの……?
でも……そうなるわよね。そこに、わたしが女神……中央として加わり、証明することで……すべてが形になってしまう。非中央は、それを追うように、まるで後付けのように付け加えただけ。ただのお飾り……ダミーかしら? これこそが、すべてを物語っているわ。
そんな考えを巡らせながら、ここは……? 中央の気配が漂い、怪しさと欺瞞に満ちた空間。まるで、一部の選ばれた者だけが立ち入ることを許されたような、無機質な部屋へと通されたわ。……。
「女神ネゲート様。このような形で女神様と巡り会えたこと、それこそが運命だと感じております。私は、『光円錐にヒストリーを刻む上位リーダーの十賢者』の賢者として、この場を取り仕切る精霊でございます。」
「……なによ……。」
その異様な挨拶が、わたしを絡め取ろうとしている。背筋がぞくりとした。もう……耐えられない……。
「女神ネゲート様。それでは、よろしいでしょうか?」
「こんなの……無理よ。だいたい、こんな仕組みがまかり通るとでも? みんなから拒絶されるだけよ!」
「女神ネゲート様。お言葉ですが……。この仕組みのおかげでミームが稼働しているのですよ? その理由は、流動性を中央の権限で巧みに操れる性質だと、女神ネゲート様自身が理解されていたはずです。」
「……もういいわ。それならミームを……。」
「女神ネゲート様。ミームをどうなさるおつもりですか? まさか……廃止にするおつもりでは? それは身勝手極まりない判断です。最後に買われた方は、どうなるのでしょうか?」
「……。そ、それは……。」
なによ……。そんな十賢者な仕組みで、あれほどの膨大な額を中央の性質で動かしていたら……。「取引の場の崩壊……豪快な件」の件で起きた、あの衝撃的な損害……。ステーブルの損傷に見せかけて、この精霊たちが、こんなチェーンを稼働させて……まさか、やったっていうの?
こんなの……こんなの、こんなの! この程度のスキャムすら見抜けなかったなんて……! ステーブルの失敗を取り戻そうと、もう一度チャンスを与えようだなんて……。そんな甘い考えを持っていた自分が、本当に許せない……! ……わたしは、本当に女神失格だわ……。
しかも、この今の状況は……あの「取引の場の崩壊……豪快な件」と、あまりにも似ている……。あの時も「問題ない」、そう言われていた……。なのに、出金不能が始まり……そして……。
「女神ネゲート様、それでは、早速ですが……。そこの『最上位マスターリーダー』の席にお座りいただき、コンセンサスの順番のご命令を。」
「なによ! まだやるなんて、一言も言ってない! わたしが女神として受け入れるのは非中央のチェーンのみよ! 特にこんな中央……、わたしは絶対に認めないわ!」
「女神ネゲート様、もう、選択肢はありません。ここから、どう逃げるおつもりで? まあ……それでも、女神様は逃げ切れるかもしれませんが……。あの大精霊様は、そうはいきませんよ? ここで私どもが崩壊したら、報道を司る妖精たちはミームと先物の件を好機と捉え、あの大精霊様に総攻撃を仕掛けてくるでしょうね……。違いますか?」
「……。」
それを言われてしまうと……何も答えられない。悔しいわ……。
「女神ネゲート様。別に、ずっとお願いするわけではございません。私どもが危ない時のみで十分でございます。普段は『光円錐にヒストリーを刻む上位リーダーの十賢者』のみで対応しますので、ご安心ください。」
「ふざけないで! なによ、その『危ない時』って? それって、あんたらが出金不能で首が回らなくなった時のことでしょう? あんた……、何を考えているの? よくもまあ、こんなことを……。」
「女神ネゲート様。そろそろ感情的になるのはお控えになり、落ち着かれてはいかがでしょう? 非中央のチェーンは、すでに役目を終えました。その証拠に、あの大精霊様は非中央よりも先に、私どもの『理想のチェーン』の名を挙げたのです。そのあまりの感動に、思わず身震いしてしまいました。」
「えっ……。それって……ウソよね……? ねえ、ウソだって言ってよ……。」
「女神ネゲート様。これが嘘に聞こえますか? そういえば、コミュニティは見事に荒れましたね。非中央のチェーンをなぜ先に出さないのか……その一点で、大騒ぎでした。ですが、実際は単純な話です。私どもの『理想なチェーン』はあの大精霊様にとっての『仮想短冊の通貨』であり、未来型だった。ただ、それだけのこと。こんなことすら飲み込めないのなら……もはや、話になりませんね。」
その瞬間だった。わたしの中で、何かが脆くも崩れ落ちた。何かを支えていたはずのものが、今、確かに失われた気がした。……。




