249, 出金するのに、まずは入金が必要だなんて……。そんな馬鹿げた話がある? わたし……なんだか頭がぐちゃぐちゃになりそう! 一体、どういう仕組みになっているのよ?
それで、一体どうするつもりなのかしら、この精霊は……。もう、出金不能の状態はすでに手遅れよ。出金を終えたのはほんの一部だけ。これから訪れるステーキングのロック解除で生じる出金ラッシュ、それに耐えられるのかしら? たしかに、ミームの件については、わたしの落ち度もあるかもしれない。でも、それとこれとは話が違うわ。
「とんでもない状況ね? 冗談じゃないわ! わたしも吹っ切れたわよ!」
「あ、あの……女神様。吹っ切れたところで、どうにもなりませんよ。あのミームの件は、深刻です。」
「なによ? あれくらい、どうにでもなるわ。」
「そうではありません、女神様。あのミームは、特殊なのですよ。なぜなら、現物ではないのですから。」
……。えっ? ちょっと、それって、なんなのよ!
「ちょっと! 現物じゃないって……。まさか、あんた、ミームにまで『約束証書』なんてやっているのかしら?」
「違います、女神様。そうですね……。もしミームが現物であれば、『そんなのは知らなかった』という言い訳も通用することでしょう。」
「だったら何よ? 現物でないなら、何なのよ? 答えなさい!」
「女神様。そうです、現物ではない。そうですとも! 私どもは、力の限りを尽くし、女神ネゲート様とあの大精霊様を主君として敬服するために、それらミームを『先物』として扱っております。」
……、はい?
「今、なんて……。」
「女神様。私どもは、女神ネゲート様とあの大精霊様のミームを慎重に取り扱うべく、全力を尽くしております。そのため、『先物』としての運用を選択いたしました。」
慎重に、ですって? ふざけないで! どう考えても、わたしとあの精霊を嵌め込むためでしょう!? 一体、これは何なのよ!
「わたしだってね、ここまでやられたら怒るわ! こんな状況……、まるで『ネタが無限に湧き出るスキャムの温泉』だわ!」
「……。落ち着いてください、女神様。それにしても、女神様らしい可愛らしいご冗談です。そんな余裕があるのなら、まだお力は十分残っているということですね?」
「ふざけないで!」
「女神ネゲート様。これが『大過去』から映し出された『現実』の姿なのです。こうなったのも、事実上、女神様ご自身が選択した結果ですよ? つまり、女神の選択です。思い出してみてください。ステーキングによるこのような出金不能が氾濫してしまった元凶について、です。何か心当たりがおありではないでしょうか?」
「なによ……。あんたが必死に叫ぶその高い利率のステーキングは、ステーキングなんかじゃないわ! どうせ、トランザクションでロックすることで所有権を奪い、それらを担保に『約束証書』をばらまき、売り浴びせることで稼いだ利益を山分けしてるだけでしょ? そうよね? こんな悪質なやり方……もう、いい加減にしてよ! それだけじゃない……。奪った所有権は返還しない。それこそが、出金不能の元凶じゃないの?」
「すべては……そうですよ。『資産が非中央で結び付かない機構で、なぜか非中央を名乗れる仕様』……、すなわち女神様が選択したチェーンにこそ、その元凶があるのですから。」
「ちょっと待ちなさい、わたしが選択したチェーンって……? つまり、チェーンが悪いと? それ以上の発言は、許さないわよ?」
「私どもは、女神ネゲート様のご意志……神託に共感し、ひたすら『高い利率のステーキング』を続けてまいりました。それにも関わらず、私どもに責任があると言われましても……。」
もう……。これは、何とかして解決できるレベルの話じゃないわ。
「今の発言、わたしに喧嘩を売ったも同然よ?」
「落ち着いてください、女神ネゲート様。それでも私どもは、出金不能の解決に向けて全力を尽くしております。そして、その手法の一つが、出金の前に入金をお願いすることなのです。それでも、不足する分については、女神様のお力添えをいただき、何とか乗り切りたいと考えております。」
えっ……。出金するのに、まずは入金が必要だなんて……。そんな馬鹿げた話がある? わたし……なんだか頭がぐちゃぐちゃになりそう! 一体、どういう仕組みになっているのよ?