239, このまま逃げられると思うなよ? 女神さんよ、出金の意味、わかってるか? 早くカネを出せよ! そこにある残高は俺のものだよな? なのに、なぜ許可が出ないんだよ?
さらに、嫌な予感が的中してしまったわ。なんと、報酬を得るため、まだ解約できずに一定期間動かせないもの、それらが……、解約できたにも関わらず、動かせない。そんな苦情が次々と積もってきているらしいの。
動かせないということは……、出金できない、ということなのね……。
「精霊なんてよ……、民のことなんかどうでもいいと思ってるから、こんなことになるんだろうが! なんか言えよ!」
「おい、女神! 自分たちは大きすぎて、偉大だから、民なんかどうでもいいと、思ってるんだろ?」
「……。それは違うわ!」
「違う? それなら問題を解決し、俺たちのカネを解放しろ! おまえ、女神だろ? それくらいできるだろうが!」
「そ、それは……。」
「精霊のポケットにカネさえ入れば、それで満足なんだろ? そうだよな、女神様よ? 少しは正しいことをしろ!」
「違う……。」
「違う、だと? このまま逃げられると思うなよ? 女神さんよ、出金の意味、わかってるか? 早くカネを出せよ! そこにある残高は俺のものだよな? なのに、なぜ許可が出ないんだよ?」
「……。」
……。
「女神は精霊を指導する立場にあるんだろ? だったら、これが未解決なら女神の責任でもあるよな? セキュリティとかどうでもいいから、早く、残高にあるカネを出せ。わかるか? もう、ステーキングは終えたんだ。出したいんだ。いいな?」
「なんで女神様にこんなクレームが殺到してるか、わかるか? それはな、渦中の腐った精霊が俺たちを無視してるから、なんだよ!」
「それって……連絡が取れないってことなのかしら?」
「そうだ、そうだ! 俺なんかもう十日以上も連絡が取れねえんだぞ。ふざけんなよ! 俺のカネを何だと思っていやがるんだ!」
「俺なんかよ、何週間も放置され、何の対応もされない! 早くカネ返せ!」
……。
「せっかく儲けても、出金できなきゃ意味がないんだよ! カネ返せ!」
「どれだけ報酬の利率が高かろうと、出金できなきゃ意味がないんだよ!」
……、利率が高いって……?
「ねえ、その利率が高いって……本当に信じていいのかしら? それって、ステーキングとかよね?」
「なんだよ? そうだよ。そこが良くて、その精霊を使ってたんだから、当然だろ?」
「それは……、どれくらいの利率だったのかしら?」
「そうだな。まあ……年に五とか、八とか、十とか……。もっといいときもあって、すごいんだ。」
「えっ?」
なによ、それ……。疑惑だらけの「リザーブの証明」が脳裏をかすめるわ……。ああ……。チェーンから得られる報酬分を加味しても、そんな利率、出せるわけがないのよ……。つまり……。
「もう、俺は女神様に祈るしかないんだよ! わかったか!」
「女神様よ……。厳しい銘柄の市場でも、やられるのは損切り分だけで済むぜ? そうだよな? おい、こっちは、出金できなきゃ、全額溶けるぞ? わかってんのかよ? この腐った事の深刻さをよ!」
「女神様に祈る? そんなの祈ったところで、どうせ解決せずに終わりだろ。だけどよ、すごい精霊様が現れたんだぜ。その精霊様はよ、なんと、こんな事態から俺たちのカネを回収してくれるんだってさ! 『助かったよ!』……、そういう体験談が多数あるなら、早く申し込みたいぜ!」
……。わたしだって、なんとかしたいわ。それにしても、回収……、って? それって……。
「マジかよ! 今すぐにでも頼みたいね!」
「だよな! しかも、格安で俺たちのために動いてくれるんだぜ!」
格安……、そういうこと。
「待ちなさい! それって、こういう事態によく現れる……まさにスキャムよ。」
「なんだと? 俺たちの最後の希望すら砕くのかよ? 女神って、そういう存在なのかよ?」
「落ち着いて。そういうのはね、少額の手数料を払った瞬間に連絡が途絶え、さらに搾取されるだけよ。」
「……、いったい、どうなってんだよ! なんでこんなのばかりなんだよ! 何か答えろよ!」
……。わたしは何も答えられなかった。いったい、どうなってるのよ、これ……。




