229, ねえ? シィーの「推論」で導かれた欠陥……「誤差ベクトル」の問題は片付いたのかしら? この瞬間にも「コールドなウォレット」から巨額がごっそり奪われているって……まさかね?
……。それからコンジュ姉に、たった今……「コールドなウォレット」から巨額が奪われた件を知らされた。……また、起きてしまったのね……。
「ねえ? シィーの『推論』で導かれた欠陥……『誤差ベクトル』の問題は片付いたのかしら? この瞬間にも『コールドなウォレット』から巨額がごっそり奪われているって……まさかね?」
「そ、それは……。」
「それは、何? あのね、これは女神としての発言じゃない。あなたの姉として、真剣に聞いているのよ?」
……。何も答えられない……ただ、沈黙するわたし……。
「これは欠陥なのよ? つまり、どんなにセキュリティを固めて『マルチシグ』したって、防げない。それで、民が混乱しているわ! なぜ『コールドなウォレット』なのに、定期的に、まるで起きることが当たり前のように、巨額が奪われ続けているんだってね? そうよね?」
「そうだけど! でも、あの……ちょっと待って!」
「何を待つの?」
「……。」
何でもいい、わたしからの返事を待ち続けるコンジュ姉。これは……、あの、その……。
「……。もう。このままだと、次の被害は……どこかしらね? 何もしないのであれば、この先も、ずっとこんな感じで続いてしまうわよ? なぜなら、これはセキュリティの問題ではないからよ。そう……、標的にされたら防ぎようがない。そんなタイプのアタックよね?」
「……、そうね。」
「ねえ? 何が、そうね、なの? ちょっと無責任過ぎるわよ?」
「……。」
何も言い返せなかった。……、わたしは、なんで……。
「あえてストレートに言わせてもらうわ。こんなので、部分準備なんか任せられるわけないでしょう? あのね、闇堕ちした私になんか言われたくないかもしれないけど、それとこれとは別問題よ?」
「……。」
「それで、どうするのかしら? このままで問題ないなんて、本気で考えているのかしら? ……まさかね?」
たしかに、どうせ何とかなるで、ここまでやってきた。でも、実際にこのような件がまた起きてしまい、そこに「量子ビット」まで投げ込まれた状況……。問題を先送りにすると、それらが蓄積されて、このような形で襲い掛かってくるのね……。
「ちゃんと聞いて。こうなった以上、神託を修正し、『巨額を瞬時に奪われる欠陥……誤差ベクトル』と『量子ビットに破られる脅威……状態ベクトル』が解決するまで様子を見る。それで、それらが無事に解決できたら、改めて神託を下賜し直せばいいわ。」
うん……。それしかないと感じたわ。さらに、採掘の精霊の件まであるし……。それからコンジュ姉は、別れ際に、わたしにそっと優しく接してくれたわ……。今日のは、姉として……わたしを叱ってくれたのよね。……。




