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22, これは……、旅行、なのですか? うれしくて、涙があふれ出そうです。

 今、俺の気持ちは沈んでいます。だってさ……、俺って、必要なのか? なぜ、ここに?


 俺の存在って、一体、なんなのか。だってさ、フィーさんから「大切な犬」を託された以外に、俺が必要だったと考えられる場面が、一切ありません。それで、周りをみてください。俺の周りにおられる方々、ミィー以外、ずば抜けていますよね? フィーさんは言うまでもなく、シィーさんは売りを含めた「すべて」において命を張っていますし、今日こちらにお見えになった方についてはフィーさんとのつながりの地点でさ……そのままですね。これでもし……ミィーまでずば抜けていたら、俺、もう……。


 たしかにね、ミィーなどに犬を投げましたが、これだってフィーさんが自分で投げれば済む話です。うん、俺が犬を投げる必要性は果たして、あるのか? あの日、「すべて」を吹っ飛ばし、絶望のなか、この地に召喚され、価値を持つ「犬」を託され、堕落生活を送り、無駄に時間が経過しているだけ。今の俺って、要約すると、単なるこの一言で済んでしまう。俺は、今後、授かった「大切な犬」で、何をすれば良いのでしょうか?


 あと……。「風の精霊」の件です。急にこんな話が出てきてしまいました。フィーさん、これは何? また隠し事かな? しっかりと、あとで向き合う見込みです。でも、異世界なんだから、別にね?


 そしていよいよ、俺がこの地に召喚される前にいた故郷の記憶が、そのほとんどが「実は夢」だった……、そういう感覚になってきております。そうですよね、全資産を吹っ飛ばしたかもしれないなんて、現実なんかでは嫌です。あんなもの、夢で良いです。夢で良かった、助かった! これで良いです。そうです、あれはきっと「夢」です。その証拠に、その故郷と謳われた地で授かったプレシャスな想いなどは、もう、そのほとんどが空っぽです。残っているのは、狂った相場に翻弄された「実は夢」で済ませたいものばかりです。やはり夢ですよね? よりにもよって、なぜ、そんなものが、ここにきて俺を囲むのでしょうか。そういえばフィーさんが俺に告げていたな……、残った記憶が、今後の俺に悪影響を及ぼすかもしれない、だっけ?


 残りそうな記憶は、嫌なものばかりです。どうなってしまうのでしょうか? 俺……。そんな俺の気持ちを察してなのか、シィーさんが気さくに話しかけてくれました。


「あれ、どうしたの? なんかまるで……、買いで失敗した『買い方』のような表情を浮かべているわね?」

「えっ? 今の俺、そんな感じに見えました?」

「うん。買いでの失敗は、つらいよね。」


 買いで失敗……。うん、つらいんだよ。残ってしまったばつの悪い記憶が、俺を奮い立たせた。


「はい。つらいです。まじで、負けまくりました!」


 その途端、なんかいつもの俺に戻ってきました!


「そうよね。それでも現物なら手持ち分だけで済むけど……。」

「それって? この地にも、やっぱり信用があるんだ? まあ、当たり前か。」

「えっ? 信用って……?」


 そうだよな……。なぜ、あれを「信用」と呼ぶんだろう。ふと、疑問です。ただ、ここで疑問に感じても、もう戻ることはないからね。どうでもよいか!


「あっ……。すみません。俺が元々いた世界では、『現物』に対して、レバレッジを利かせる取引を『信用』と呼ぶんです。」

「あの……、元々いた世界って?」

「あっ、紛らわしいですね。これは、界隈というニュアンスではなく、異世界のニュアンスなんです。……、こんな話、信じてもらえるわけがないか……。」

「……。私はあの時、すっかり感傷的になっていて、忘れていたわ。……、信じますね。」

「念のため! 他所の『地域』から、ではなく、他所の『世界』から、です。ここ、大事です!」

「……。了解ですわ。たしか、機関にしか売れない市場が存在、よね? 衝撃的ですわ。それなら、買いだけに限定すべきね。『売り』の分を回す市場が十分に機能していないのに、大口だけに自由に売らせるなんて。私には到底、信じられないわ。吊り上げて、売って、暴落させて、さっさと買い戻す『ただの作業』になってしまいますわ。仮にでも、そんな所で買いで負けたら、数年は寝込むわ。」

「あの、『売り』が存在しないと、相場が形成されないと伺ったことがあります。」

「それ、本気なのかしら? 真っ赤な嘘ね。まったく、そんな嘘をねじ込んで、その歪んだ市場を信用させるための罠、かしらね? 『買い』……いわゆる現物だけの普通の売り買いだけでも、相場は問題なく形成できますわ。逆に『売り』……現物なしで売りまくるだけでは、何もできないわ。そして、『売り』と『買い』が釣り合っているときが最大で、『買い』が強まるとじわじわ上に、『売り』が強まると下に大きくブレイクするのよ!」

「下に、ブレイクね。」

「うん。『売り売り』ね。」

「……。そうですよね! あっ、ところで、そんな所で『買い』で負けたら、数年……も寝込むの?」

「うん。ゆっくりと眠ります。でも私は『売り売り』だから、そんなことにはならないけどね。」

「そ、そうですか……。でもこれ……、売りからなら勝ちやすい、ですよね? 勝てれば、別に?」

「あのね……。『売り』にも信念くらいはありますわ。そんな市場で勝ててもね……。」

「す、すみません……。」

「そんなの、なんで放置されているのかしらね? すでにそれ、投資以前に、資本にもなっておりませんわ。あっ、だから『信用』なのかな?」

「それって?」

「うん。それって要するに、『現物』を担保にして借りて突っ込む、よね?」

「……、はい。それです。」

「それらで、その恐ろしい市場で、買ったの? なんだか寒気がするわ……。それとも、またフィーが温度を下げたのかしら……。」

「たしかに寒い。なぜなら、油断した瞬間に凄まじいマイナスだった、からです……。」


 そのときです。なんか腰のあたりを突かれました。振り向くと、そこにはフィーさんが……、俺を冷たい目でみつめてきます。


「ディグさん……? 姉様とまた、『売り』の話、なのですか?」

「それは違うんだ。」

「そうなのですか?」

「なんと、『買い』の話、だ。」

「姉様が……、『買い』の話、なのですか。驚きなのです。」

「フィー? 私が買ったら、数年は寝込むという否定的な内容よ。」

「……。いつもの姉様で安心したのです。」

「フィー……。私は、すでに……、覚悟を決めているからね。絶対に、無理はしないでね?」

「……。それは約束できない、のです。」

「フィー……。」


 ……、覚悟って……。あの話、うん、本当なんだね。俺ね、シィーさんに「最後の」売り売り勝負はさせないつもりです。もちろん、俺なんかにそんなこと、できるわけない。この地の方々から指を差されながら笑いものになるでしょう。でも、その役は喜んで引き受けますよ。どんなに笑われても、止めます。止めてみせます。その覚悟くらいは、俺にもあります。シィーさんが助かるなら。


「フィーさん、シィーさん。これから大事な話なんだろ? 暗くなるのはよそうぜ!」

「はい、なのです。」

「そうね。相手は、あの神々か。派手に飛ばしていきましょう!」

「はい、なのです。では、準備をお願いいたします。」


 俺……。そのような方々を相手にするのは初めて、だよな。あっ、でも、仮に経験があったとしても、記憶から消えていくので、意味がないですね。うん、そう考えたら気が楽になった!


 おっと。そういや、フォーマルに、だったな。堕落の俺に似合うのか。ただね、この地の食べ物に切り替えてから、体型がややスリムになりました! えっ……、あ、いや、その、です。でも、最初のころに食べていたもの、あれらは間違いなく故郷のものでした。フィーさん、どうやって? これがまったくわかりません。これもついでに、「風の精霊」の件で問いただすときに、教えてもらいましょう。まあ、知る必要はないで一蹴されそうですが、それならそれで。


 さすがはフィーさんだけあって、色々と揃えてありました。それらしいものがあるので、さっさと着替えます。それにしても、この感触、すごく懐かしいです。さすがに、ホームで取引するのにフォーマルな格好にはなりませんからね。


 フィーさんとシィーさんは……。いつも通りでした。姉妹揃っていつもの服装、ですね。


「フィーさん? その格好のままなんだ?」

「はい、なのです。これが、風の精霊の定めです。なぜなら、例えば、風の精霊が不吉をほのめかすような装飾や色彩の服装をしたら、大変なことになるのです。そして、わたしは別によいのですが、姉様は、これが常に不満で、またまた大変なのです。」

「なるほど。風の精霊、なんだ?」

「……。はい、なのです。……、後日、詳しくお話しするのです。」


 服装の件から、少しですが、突っ込んでしまいました。そんな他愛もない話をしているうちに、時間のようです。


 おや? なんかトラブルのようです。急にあの「筋肉」が、留守番をしたい、だと? いや、俺ですら連れ出されるのに、筋肉が留守番? 甘いですから!


「フィー様、そろそろです。それにしても、本当に瞬時に、ですか?」

「はい、なのです。」

「フィー様、か。なんかいいね? 俺も、今からそう呼ぼうかな?」

「ディグさん……。それは、怒るのです。」


 ……。目を開けた瞬間に、目の前の場所が変わっている、この感覚。夢をみているときに、目の前の場所が、よく違う場所に飛ぶよね? それでもさ、夢だと気が付いていないと、それをおかしいとは思わない、あの不思議な感覚が、現実で起こっている状態といえば……わかりやすいかな。もしや、この世界って……? いや、何度も自分の手の甲をつねって確認しています。夢ではありません。さらに、目の前で起きている事は「現実的」で、普通に「実感」があります。


 そして、この能力にもっとも驚いていたのが、本日、お越しになった方です。到着後、まず、本当に自分自身が、自分の意識で生きているのか、確認していました! すごい驚き方というか……、まあ、そういう哲学的なことは、俺、よくわかりません。それにしても、この能力は便利ですよね。仮に、能力を選べるとしたら、これが間違いなくトップでしょう。でもな……、肝心なときに命を差し出せ、では、割に合わないかな。


 さてさて、長い歴史を彷彿とさせる渋い茶褐色のたたずまいに、大きくそそり立つ松の樹が門の前で出迎える、ご立派な店構えが目の前に現れました。俺さ……、本来なら一生、縁のない店ですよ。間違いなく、フィーさんと出会わなければ、このようなご縁はなかったです。


 ちなみにフィーさん、このような雰囲気が好みのようです。たしかに、あの「お気に入りの場」を彷彿とさせ、涼しげな様子もグッドですから。


 本日お越しの方が、慣れたご様子で、奥にある個室まで誘導してくださいました。個室か……。そうだよね、個室に決まってます。それにしてもこの方、俺とさほど年齢……変わらないかもしれない。そう考えると、俺って……。


 個室の目前には、中庭が広がっていました。間違いなく、自慢の中庭でしょうか。彩り鮮やかな鯉が優雅に泳ぐ池の周りを囲むかように、このような個室が配置されていて、その中で最も大きな部屋のようです。……、緊張してきました。俺はただ、座っていれば良いんだよね?


 うまい飯が出てくるのは間違いないけれども、こういう場って、食べる場所ではないよね。内密な話をする場所です。それはわかっています。はい。


 それぞれ、指定された席に着席します。相手は……お三方か。三席あります。


「フィーさん……、緊張してきたよ。」

「わたしも、久々なのです。ただ、お一方みたいですね。よかったのです。」

「三席あるけれども……?」

「あれらは、護衛の方々、なのです。」

「えっ……、護衛の方々も同席なんだ。」

「はい、なのです。護衛は、力を支配している『精霊』ですよ。」

「……。強そうだね?」

「護衛なのですから、強くて当たり前、なのです。彼らの筋肉から、圧倒されると思います。」


 その瞬間、俺たちに付いてきた「筋肉」が、視線をそらしました。それに気が付いて、フィーさんが「筋肉」に話しかけようとしたその時……、あの神々が現れました。


 周りが頭を下げ始めたので、俺も慌てて、それに合わせます。もう、手の平が汗でびっしょりです。こんなの初めてです! 異世界で、まさかこんな経験をするなんて、俺って!


「ありがたき、幸せでございます。学びが少ない私たちに、その貴重なお時間を注いでくださり、誠にありがとうございます。」


 あの方……、完全に慣れていて、平然と始めていきます。どうやったら、ここまで俺と差が出るのでしょうか? うっ、俺が低すぎるから? こうなったら俺も……、堕落生活を抜け、努力するしかないな、これは……。あと、あの護衛らの筋肉……、こちらの「筋肉」を遥かに上回ります。まじで、笑わないように頑張らないと、やばいです。吹き出したら、その瞬間に俺の人生、終わりを迎えそうです。


「お久しぶりですね。フィー、なのです。そして……」


 フィーさんが、シィーさんや俺などを紹介していきます。ただ、気になったことがあります。それは、シィーさんが紹介された時です。なぜか、薄笑いを浮かべていました。


「うむ。久々だな、その独特な口調。実になつかしい。すぐにフィー君とわかる。」

「はい、なのです。……、この口調は直りませんよ?」

「まあよい。こちらに気が向いてくれただけでも、十分だ。」

「ありがとうございます。」

「では、早速だが……。」


 異様に黒光りする鞄から、紙の資料を取り出してきました。えっ……と、紙、なんだ。あっ、護衛の一人が俺に目を合わせてきました。耐えます。……。なんか筋肉がうねっているような……、耐えます。


「では、フィー君。この資料に目を通して、一言で、返答をくれないか。」

「はい、なのです。」


 フィーさんに、一枚の紙が手渡されました。それから、一分位でしょうか、静かな時間が流れた後、フィーさんが……重い口を開きました。


「……、これは、真なのですか?」

「そうだよ、フィー君。私は、これを見た瞬間に、飛び上がったんだよ!」

「わたしも、その気持ちなのです。ほぼ全てのシビアコンディションで要求される温度変化に、その形状を一切変えずに保っていられる素材、ですか……。正直、信じがたいです。」

「そうだ。『一切変えず』、そこが重要だ。なんと、まったく膨張もしなければ、縮みもしない。これね、西の地域を含め、みな夢中になって挑戦してきた分野なんだが、すべて計画倒れで、まったくもって上手くいかなかった。しかし、その究極の素材が、なんと今……、我らの手の内にあるのだ。これぞ我ら民の実力。どうだ?」

「膨張も、縮みもしない。それは本当に、真なのですか?」

「ほほう、そう簡単には信じない……さすがはフィー君だ。この場で本当だと、我の魂を賭けて断言しよう。何もかもが『凍り付く低温』から、本来なら変形や破裂を起こす『高温域』まで、僅かにも膨張も縮みもしない。見事なまでの誤差ゼロ、だ。さらには硬さも自由自在。特に、柔軟な素材が要求される分野で強そうだ。どうだ、この素晴らしき素材。やはり我ら民に、創造神様はついておられる。もともと、我ら民は素材には強いと謳われていたゆえに達成できた『快挙』だ。」

「この素材に対して、検査は、されたのですか?」

「もちろんだ。念には念を、その辺の組織の設備では対応できなかったゆえに、『精霊』が率いる最高峰の設備で、潤沢な予算をかけて、何年も取り組んだ結果、すべての検査をパスした。」

「……。今の危機に、一筋の光、なのです。」

「さすがはフィー君だ。理解が早い。」

「その開発者さんも、さぞかし喜んでいるのでしょう。この内容が真ならば、『精霊』に導いてもらい、莫大な『創業者利得』が得られるでしょうから。」

「おっと、フィー君。この件は内密に頼むよ。だから『紙』なんだ。わかるな? フィー君が大切にされている書物も、それらが理由で『紙』なんだよ。いいね?」

「わたしの大切な書物の件をご存じだったのですか……。」

「当然だ。それ位は、何の問題もなく掌握しているぞ。」

「そうですか……。そして、この件は内密、なのですか?」

「そうだ。だから、精霊が導く件は『ない』ぞ。これを新興市場に上げる訳にはいかないんだ。取られたら大変なことになるからな。さらには、別の使い道もある。」

「そ、そうなのですか……。わたしは、精霊の特別な許し……『特許』を取得し、みなさまに活用していただいて利益を得るものだと解釈していたのですが……。なおさら、投資家の方々は『特許』に弱いですから、なのです。」

「……。話を遮るようで悪いが、フィー君、それは甘い。」

「そうなの、ですか?」

「何をしても……ムダな事を痛感したんだ。なぜなら、例の母屋の件……、最近の話ゆえに知っているとは思うが、我らが愛する母屋を奴らに取られたばかりなんだ。それなのに、あの妖精どもは面白がって、ふざけたことを書き散らしている。だがな、そこにある内容は、大部分が事実と異なるんだ。本当に愛していたんだ。」

「母屋の件……、存じております。ただ、なのです。その素材の開発者さんは、それで納得されたのですか? 最後の大切な目標を封じられたのですから。」

「ほほう、そこは心配ない。その開発者やらも、この母屋の件の前々より、その奴らのことを心底から嫌っておった。それゆえに、何の問題もなく快諾が得られた。もちろん、手厚い待遇は忘れていないぞ。」

「手厚い待遇、ですか。…………、問題ないみたいですね。」

「ほほう、何か言いたそうだな?」

「いいえ、なのです。」

「そうかそうか。みないうちに成長したではないか、フィー君。」

「これが……、成長なのですね。」

「そうだ。ならば……、いよいよこの話も、飲み込めるかな?」

「この話、なのですか?」

「そうだ。しっかりと聞くように。まず、不幸中の幸いで、この究極の素材の流出は免れた。」

「流出……、そのような危機があったのですか?」

「そうだ。母屋の連中が、なぜか、これを利用しようと躍起になっていたからな。」

「それは、危ないのです。状況から、誰かが乗っ取られていた可能性があるのです。」

「その通りだ。冗談抜きで、こんなものが奴らの手に渡ったら、我ら民の半数は餓死しかねないからな。その恐ろしい計画を、我らが全力で止めたから、この素材は助かったのだ。それなのに、あの妖精どもは我らがすべて悪いような書き方……、まったくもって不本意である。」

「それは仕方がないのです。内密に、ですよね?」

「そうだったな。そうだそうだ。我らも苦しい立場なんだ、理解してくれるのはフィー君くらいなものだ。」

「はい、なのです。」

「そこで、内密に扱うからこそ、あの手が使える。我らは、あの最高の……例のものに限定して活用することにした。間違いなく、他の物とは比較にすらならない、足元にも及ばない、凄まじい性能を発揮することだろう。そして、それで脅した方が手っ取り早いということだ。」


 んっ? フィーさんの表情が急に険しくなりました。例のものって、何?


「……。それは、取り返しのつかないことを、思い浮かべているのです!」

「おっと、取り乱すのは、フィー君らしくない。今、そうだな……、都だ。この危機で財源が底をついている。しかし、それを補う収入は当分見込めない。だったらどうする、フィー君?」

「地道に策を探すしか、ないのです。」

「そんな悠長なことは言っていられない! 我ら神々は、民を愛しているのだよ。その民らが、この先数か月で……、次々と倒れていくかもしれない、それ位の危機なんだぞ?」

「そうですか……。そこで、そのような言い訳は、やめてください。つまり、すでに食糧……、穀物の収穫高にも影響が出始めているのですね?」

「フィー君……、そういうことは、もう少し、柔らかめに頼むぞ?」

「わたし……、この隣の方より、『隠し事』はよくないと言われ、目が覚めたのです。今の『食糧』カテゴリに関する、正確な数値をわたしに見せてください。わたしの予想だと、その鞄の中にある、別の『紙』にあると、みているのです。」


 これは……、すごい迫力です。フィーさん、考えていた以上に……ずば抜けたお方でした。それにしても、急に「俺」が出てきて焦ります。ただ、俺に話は向かないようで、一安心です。この間には入れないよ……。フィーさん……。


「すばらしい勘だ。もちろん、ある。」

「……。どうしていつも、いつも、追い込まれてから行動、なのですか? 今回だけは、手遅れが許されないのです! それで魔の者に投げ出してしまって……。」

「フィー君、それだけは言ってはならぬぞ。投げ出したのではない。あれは、我らの休息だ。」

「そうですか。休息、なのですか。」

「そして、休息中でもしっかりと実行するのが、我らだ。この光輝く素材をみよ? この素材に、命運を託すだけの価値がある。もちろん、あの『約束事』の制約があるから、そこを変えてからになるが……、我らが愛する民は、きっと、理解してくれる! これで財源を確保し、買い付けて、なんとかこの危機を乗り切る。これしかない。」

「……。いよいよそれは、神々に対する民の愛想が尽くと、思うのです。」

「ほほう。いつも面白い解釈をするね、フィー君は。」

「当たり前の解釈、なのです。」

「ならば、代替案はあるのかい? ここで、今すぐに、だ? 地道に探すとか、なしだぞ?」

「……。あるのです。今、魔の者が率先して立ち上げた、あのような量産型の産業なのです。」

「魔の者か。あんなのは、ただの悪あがきだろう。利益なんか出ない出ない!」

「それは、母屋を取られた方がおっしゃる、セリフ、なのでしょうか?」

「ほう……。さすがは、何を言っても返してくるで有名なフィー君だ。しかし、この素材の魅力は計り知れない。魔の者も土下座して、我らに謝るだろう。これで脅せば、どんどん『通貨』を刷っても、影響はない。都などの財源を大きく回復させる切り札だと、どうして気が付かない? フィー君なら、きっと、わかっていただけると信じているぞ。」

「……。わたし、食糧に関する資料を拝見するのが、とても怖いのです。そこまで『通貨』獲得にこだわるなんて……、すなわちそれは、他の地域に残っている、なけなしの食糧備蓄を買い漁るくらいしないと間に合わない水準までに、危機が迫っている、なのですか?」

「厳密に言えば、そうだ。過ぎた話だ。」

「……。何が、過ぎた話、なのですか?」

「ほほう。では、我から一つ問うぞ。そういえば、我らが休息するためにしぶしぶ『天』となった魔の者はどうしたのだ? 静か過ぎて、何もしていないようだな? フィー君、心当たりは『ある』、だろ? おや? どうされた? 我らは、フィー君が考えているほど、間抜けではないのだよ。」

「えっ! そ、それは……。」

「どんな者でも受け入れるらしい、あんな『烏合の衆』が、なぜか、まとまっていると嗅ぎつけたんだ。よほどの原因がないと、あんなのはまとまらない。そこで、我らに味方する『精霊』を利用して、それを探らせたんだ。そしたら、すぐにわかったぞ。どうやら、おかしな小娘がカギを付けたらしいな。しかも、あの『犬』を動かすのと同じ、たちの悪いカギを、な。あのカギは、まず外れない。まあ、失われた高度な文明ならば外せたのかもしれないが……、それくらい、たちの悪いカギ、らしいな? あれでは何もできない。しぶしぶ我らに頼るしかなく、実質、我らが支配しているという皮肉な結果になっているぞ? さて、その小娘とやらは、どこのどいつだ? フィー君、答えてみなさい。」

「それは……。」

「どうされた? 答えられないのなら、そうだな、今、下を向いたそこの筋肉、答えなさい。」


 フィーさん、これはまずい展開だよね? そのカギって……。しかも、なぜここであの「筋肉」が指名されるんだ?


「……。フィー様です。」


 筋肉……。おまえ……。


「ご名答。さすがは我が支配下の『精霊』だ。」


 支配下って……。こいつ、魔の者だったのでは……。いや、違う。そういえば、そこの護衛も筋肉だよな……。そういうことだったのか!


「ではなぜ、フィー君はカギを付けたのか、だ。しかし、フィー君ほどの者なら、これが皮肉な結果を招くことくらい、わかっていたはずだ。それでも付けてしまうとは、それ相当な理由があるね? まあ、そんな程度は我らの明晰な頭脳ですぐに判明した。理由は二つ、あるな?」

「二つ……、そう、二つ、なのです。」

「ほほう。なかなかの開き直り、お見事だ。まず一つ目は『共通の敵』を作り、まとめさせる、だな? まったく、このようなもので集まるとは、何とも情けない話だ。そして二つ目……。この地の力の温存、だな? フィー君の麗しき姉を助けるために、だな?」


 ……。シィーさんを助けるため、だと?


「はい、なのです。実りが悪くなったあたりから、すでに色々なものが、限界を突破していました。これ以上の力の行使は、わたしの大切な姉様を含めた、色々な精霊に、修復不能な悪影響を及ぼします。そこで、力を温存させ、時間を稼ぎ、別の打開策を探して……。」

「フィー君? それは詭弁だ。素直になりなさい! その大切な姉を、助けたい『だけ』だと。」

「そ、それは……。」


 ……。まずい。なんかフィーさん、辛そうだ。


「しかしそこで、『約束事』を思い出してほしい。精霊も民の一部だ。我ら神々は、精霊を見捨てはしない。」

「……、見捨てない、ですか?」

「そうだ。そこで、フィー君の『その名』と、この素材を組み合わせるんだ。」

「……。どうしてそうなるのですか!? また、その素材なのですか! もう、やめてください!」

「なぜ、取り乱す? まず、フィーという名に対する信仰心は非常に高い。『風の精霊』としてフィーという名にそなたの魂を込めることにより、民らの乾き切ったすさんだ心が蘇り、『約束事』のあの一節を書き換えることが許されるであろう。これが第一ステップだ。次に、第二ステップだ。我らが『天』を取り戻す、これに尽きる。そして、これは容易だろう。最も大事な場となる『都』については、あの憎き支配者……例の『ブロードキャスト』の件で陥落寸前だ。そこさえ押さえれば、勝ったのも同然ということだ。」

「……、そんな酷いご提案、酷過ぎるご提案、わたしが受け入れると、考えているのですか?」

「まあ、落ち着くがよい。話は最後まで、聞きなさい。そして、第三ステップだ。この素材を大いに利用し、民らを救済する。そして、ここからがフィー君にとっては最重要だ。自然を司る精霊の力が限界を突破してしまった要因は、全地域の民らの活動が激し過ぎたから、これに尽きる。だったら、それらを大きく抑え込めばよい。この素材を活用して『偽りでもよい』ので信用を稼ぎ、それを『通貨』の価値として反映させることにより、思う存分、我ら神々の所有物である『通貨』を発行する、理を超越したロジックだ。完璧すぎて美しく、トゲもなく、発行し放題という新理論が、ここに誕生だ。そして、こちら側を抑え込めば、自然と他の地域の民も、歩調を合わせざるをえないウィズ究極素材な新しき世界が訪れる。これについては説明不要だろう。フィー君ならひらめくはずだ。」

「……。ふざけないでください! それで、他の地域の方々は、どうなるのですか!」

「そんなのは知らん。我らが導くのは、この地域と、ここの民らだ。そもそも、この地域に『風の精霊』と『水の精霊』が住み着いたのは、なぜなんだ? これだって、年中乾燥した地域からみたら、狂いたくなるほど羨ましい、だぞ? 何をいまさら、ためらう?」

「それと、この素材の話とは、別なのです!」

「おやおや。ところでフィー君、再度ここで、魔の者が手掛ける量産系を思い浮かべてみよう。今の時代、量産系などは流行らないのだよ。そんなのでちまちまと稼いでも、仕方がないんだ。」

「さっきからそんなくだらない話……、そんなことだから、母屋を失うのです。そろそろ、ご自身でおかしいと思わないのですか? あまりにもおかしくて、わたしは、吹き出しそうなのです。」

「そうか、フィー君、吹き出しそうか。その珍しくも可愛らしい吹き出しをみてみたいものだ。」

「……。茶化すのはやめてください!」

「そうかそうか。それならば、次の結論を我が述べても、同じことを言えるのかな?」

「け、結論……、なのですか……。」


 勢いのある討論が続いていたのですが、急にフィーさんが弱々しくなりました。まるで、これから告げられる結論とやらを、すでに知っているかのようです。なぜなら、俺がこの地に来て間もない頃、俺が考えている内容を先に言われて驚いたので……、なんといっても「風の精霊」ですからね、そういう能力があるのかもしれません。ただ、そういや、最近はそういった先読みがありません。やはり疲れているのかな……。シィーさんのことは心配ですが、休息は必要です。これを終えたら、提案してみようかな、旅行とか……? そう、トラベルです!


「そうだ、結論だ。全地域の民らの活動を抑え込めば……、自然を司る、限界を突破していた精霊たちが休息でき、自然界の回復により、徐々に本来の姿へと戻していくであろう。例えば、この地域一帯では、その大昔、驚くことに季節は『四つ』あったようだな。古代の言葉で『四季』というらしい。そこまで戻れば、つまり、フィー君の姉が犠牲にならずに済む……助かるぞ。」


 何……? この展開? シィーさん、助かるの? なにこれ?


「なんでそうなるのですか……。助かるって……。ずるいのです。なんなのですか、この腐った展開!」

「腐った展開、ではない。これが、現実というものだ、フィー君。」

「こんなの、取り返しがつきませんよ? 何もかも、すべて、失いますよ?」

「なにを失うんだ? どうされた、何を迷う? 姉が助かるのだぞ? まさか、見捨てるのか?」

「フィー……。」


 この神々が欲しがる名……。シィーさんがフィーの名を静かにつぶやきました。俺もこの瞬間、あれを思い出してしまった。そう……、この地は「ハードモード」です。


 そして、なんだか、むかついてきました。こうなったら強く出てやるか? そして、不思議と怖さはありません。だってさ、あの狂乱新興銘柄を全力高値掴みしたときの恐怖と比べたら、こんなの、大したことはありません。筋肉? ああ、そんな護衛がいたな。


「どうされた? ほら、姉が『命乞い』をしておられるぞ? こんな素晴らしい条件に、なぜ即答できない?」


 俺、もう限界です。なんですか、これ? フィーさん、泣き出しそうになっています。


「さっきから黙って聞いていれば……、無茶苦茶なことを言いたい放題!」


 俺は、声を張り上げてやった。護衛の筋肉が睨み付けてきますが、もう、お構いなしです。ここは、なめられたら負けですね。勝負となったらスイッチが入ります。こんな護衛の筋肉ごときで、俺が終焉だと? ふざけるな、冗談じゃない! このような勝負なら故郷での『全力買い』で慣れていますから。


「こ、この者は……。」


 おや? 案外、驚いているね。なるほど、俺のような「異世界にいた異質の者」とは、やりあったことがないのかな? そいつは、当たり前か! 俺、有利な立場。


「べらべらと勝ちを前提とした、きな臭い話を並べやがって! おまえ、命がけの勝負をしたことがないだろ?」

「な、何を突然……。」


 フィーさんが大慌てて俺を止めようとしたが、俺は、その手をはねのける。俺ね、こうなったら止まらないから。


「食い物が危ない? 母屋を取られたって? それにしては焦燥感がないな? どういうことだ?」

「我は、フィー君と話をしているのだ。おまえではない。」

「俺も、民の一人だぞ? 突然の参入ですが、ね。」

「……。突然の参入? フィー君のそばにいるのだから、間違いないようだな。でも、我はフィー君に用があるのだ。」

「なるほどね。焦っていないのは、すでに勝った気でいるのかな? それとも、己の懐は痛んでいないとか? でも、民は痛いのかな? もうそのままだね、俺はその流れで破滅した奴らを沢山、見てきていますよ!」

「ほう。それなら述べてみよ、その『破滅』とやらを。」

「まさか、気が付いていないのか? なぜ『破滅』なのかを。だったら教えてやるよ。まず、なぜ俺がこんな席に連れ出されたのか。内密な話ならフィーさんと一対一が基本だろうが。つまり、欲が出たんだろ?」

「な、何が欲だ? ふざけた真似を……。」

「ほら、どうした? フィーさんを完全に支配するために、脅しの要素として姉のシィーさんを同席させるのは当たり前。それだけなら、フィーさんは負けていただろう。しかし、そこで欲が出た。俺らのそばにいた裏切りの『あの筋肉』から内密に俺らの内部情報を得て、俺が存在することを突き止めたあんたは、俺も同席させることに決めた。なぜなら、フィーさんがごねることを知っているからだ。それで、俺の利用価値は『人質』、これに尽きる。まさか、これから助けられるらしい姉のシィーさんを傷付ける訳にはいきませんので。護衛にそんな『筋肉』を選んだのも、暴れるであろう俺を抑制するため、ですね? 第一印象で恐ろしさを植え付けて、自分の意のままにする、か。」

「……。ほう。そこまでわかっているのなら、この先はどうなるのか、おわかりかな?」

「どうにもなりませんよ。相変わらず暴力的で、嫌気がさしますね?」

「おまえは、この我の護衛らに勝つ気でいるのか?」

「勝つ? それは無理ですよ。そして、その必要がないからです。」

「必要がない、だと?」

「はい。たしかに、フィーさんがごねると厄介なのは、俺は、嫌になるくらいに知っています。」

「ディグさん……。わたし……。」

「しかし、ある日、俺にとんでもない『隠し事』をしているのがばれました。なお、その悪い癖は今でも残ってはいるのですが、それでも、それを直すように俺が促し始めてから、明らかに、ごねる回数が減ってきています。隠し事をすると、心に毒が溜まり、それが、ごねる事につながるのかもしれませんね。」

「ほう……。」

「つまり、俺を締め上げなくても、今のフィーさんはごねません。結局さ、今回の場合は『完膚なきまでに断りたい』のに、それができずに迷ってしまい、ごねてしまうんです。断るのってさ、簡単にみえて、実は一番難しいです。今回の場合は、あなたに大いに嫌われ、姉のシィーさんの命が危うくなるのですよ? それでも、しっかり断る必要があります。でも、今のフィーさんなら、きっと、できます。そして、ごねません。俺に何をしたって、ムダですよ。」

「なに……? まさか、フィー君は我に嫌われるのが惜しいのか?」

「そうですよ! 『まだ信じている』と、しっかり話していましたよ。また、急に変わってしまったとも、話していました! それさ、間違いなく、タイミング的にその素材が原因ですよね? 俺みたいな者ですら、それはやばいものだと直感したよ。これだけ心を乱される地点で、そんなのはさっさと捨てて、やり直しましょうよ!」

「……。ディグさん、ありがとうございます。あとはわたしから、なのです。」

「おっ、フィーさん! 了解です。」

「今回の件は、無かったことにしてください。そして、そんな危ないもの、さっさとオープンにてください、なのです。」

「……。フィー君は、これでも、我らを信じているのか?」

「はい、なのです。そして、そんな恐ろしい素材に頼らなくても、みなで手を取り合って、また頑張ればよいのです。きっと、できますよ。それが、民を信じること、なのです。例えば、魔の者の、あの量産系を、何度もしっかりみてください。わたしは、うまくいくとみているのです。」

「そうか……。」

「わたし、もう、隠し事はしないのです。しっかり、述べます。あの母屋の件、反省なのです。終わりが近づくにつれ、できもしないことが並び、『あともうちょっとで』という猛毒の言葉が欺瞞に満ちた美しい白き花のように咲き乱れ、開発者を大いに翻弄し、そして、あの姿なのです。」

「……。そうだな。でも、愛してはいたんだ。そこだけは、信じてくれ。」

「はい、なのです。」


 こんな俺でも少しはお役に立てたのかな? 悪い流れではなくなったみたいです! それから、何やら鞄の中にある二枚の「紙」のうち、一枚を取り出して、フィーさんに手渡しました。


「これは……。」

「なんか、この者に突っ込まれ、調子を狂わされた。我は、この素材が登場した瞬間から、完璧に物事が進んでいくとみていたのだが、それは大きな誤りだった、か。うむ、悪くないな。この調子が狂った今の状況。これが、正常だった訳、か。」

「……。はい、なのです! そして、これなのです。これこそが、正常なのです。」


 フィーさんが、手渡された紙をみつめながら楽しそうに話し始めました。内容が気になります。


「旅行、なのですね。」

「……。まあ、そんなところだ。」

「突然、すみません。その案……。受理していただけたのですか!」

「そうだ。」

「本当に、ありがとうございます! このまま何もしなければ、気持ちが塞がったまま、みな、悪い方向に傾いてしまいます。こういうときこそ、旅行です。キャンペーンにして、広げていきたいと考えております。」

「わかった。とにかく、悩んでいてもしょうがない。キャンペーンだ。とにかく、余った予算をかき集めてでも、美味なものと、食糧方面と、旅費の一部は何とかしよう。ただでさえ荒れていた先物が、狂乱しそうだが仕方ない。」

「余ったご予算を……、有効活用……ですね。」

「ほほう。まるで我らが初めて有効活用するような言い草だな? まあよい。今日は許す。」

「こんな展開になるなんて……。わたし、涙があふれ出そう、なのです。素敵なキャンペーンになりそうです。結局、民の傾いた心につけ入るかのように、その素材が誕生してしまったのかもしれません。『天の使い』の甘美な誘いに、負けてはいけないのです。」


 フィーさん、すごく喜んでいます。びっくりです。


「フィー? 私は、フィーが笑みを浮かべる瞬間を見るのが、何よりも好きなのよ。」

「姉様……。」

「私、覚悟は決めているけれども、いま悟ったわ。諦めず最後の瞬間まで、もがいてみせるわ。だって、これから狂乱するその先物の頂点を売りたいの! そして売るだけじゃダメね。買い戻したい。そして、買い戻す前に『消滅』するなんて、絶対に耐えられないわ!」

「『売り売り』が姉様の生きる糧、ですか。……、姉様らしいのです。また、矛盾しているところも、姉様らしいのです。」

「フィー? これが、矛盾しているのかしら?」

「はい、なのです。姉様が『消滅』する事を前提では、売れません。なぜなら、確実に儲かることが決定してしまうから、なのです。それは、ダメなのです。売ったのなら……、生きて、買い戻してください。」


 何を言っても言い返してくるだっけ? なかなかですね、それ! フィーさん。


 ……。それからです。協力の件は一旦保留となって、旅行の話になりました。なお、協力するには、あの素材をオープンにすることが条件となりまして、神々は、あっさりと了解していました。


 そうそう、「風の精霊」って瞬時に移動できますから、それで旅行になるのか、という、面白みがあって心が弾む展開は最高でした。


 そして、飯です。うますぎです。久々の白米でした。ごちそうさま!

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