227, 採掘の仕組みは、確率的に正解を探し、それが正解だと「古典ビット」ですぐに検証できる仕組みよ。そのまま、ぴったりと合致してしまった。
修正って……。コンジュ姉の言葉を受け入れるなんて無理。でも、「量子ビット」の問題が突然膨れ上がったのは否定できない。……。こうやって、心の隙を狙ってくるのね。でも……そのような雰囲気がコンジュ姉から感じられない。むしろ、わたしに対して本気で提案してきた……、そんな気がしてきたわ。
「コンジュ姉……、それは……。」
「あのね、わかっているとは思うけど、ハッシュを変えるのは不可能よ。採掘の精霊が抱えている機材は、一つのハッシュに特化しているから。」
「そんなのはわかってる。そもそも、そこを変えても意味がないわ。もっと別の……『量子ビット』が苦手とするものを多く取り込めればいいんだけど、どう?」
これは、ほんの少し苦し紛れの言い訳だったかもしれない。それでも、コンジュ姉は動じることなく、しっかりとした受け答えで支えてくれた。
「『量子ビット』が苦手とするもの……それは逆に、減少傾向になっているのよ。例えば『領域の変換』について。これは、二つの『量子ビット』による同時作用を非常に多く要求してくるため、それが難点だったはず。ところが……ある精霊が、少し工夫をしただけで、その同時作用の適用回数を大幅に削減できる、画期的な方法を見つけたのよ。」
「……。つまり、エラー率の改善だけではなく、手法による改善も大きく進んでいるってことかしら?」
「そうよ。それで……、……。」
……。コンジュ姉は口を閉ざしている。でも、お願い……それだけは聞かせて。知るべきことなの。
「何となくわかるわ。その画期的な手法……、おそらく、今回の件でも活用できてしまう、そうよね?」
「……、そうよ。その手法は、量子演算を非常に効率よく行えるようにできる反面、制約があるの。その制約とは、その解が正解であることを『古典ビット』ですぐに検証できること。……。効率化は図れるけど、一般的な用途ではちょっと使いにくいはず。だって、『量子ビット』の力で正解が欲しくて計算したのに、その解が正解だと『古典ビット』ですぐに検証できることが前提だなんて。『古典ビット』の力では現実的な時間内で計算できないからこそ『量子ビット』を使うのに……、そうなるわよね? でも、こんな制約をかけられても、すり抜けてしまった。……。」
「……。採掘は、その制約をしっかりと満たすわ……。つまり、量子演算を非常に効率よく行えるってことね……。」
採掘の仕組みは、確率的に正解を探し、それが正解だと「古典ビット」ですぐに検証できる仕組みよ。そのまま、ぴったりと合致してしまった。
「……、そうなるわね。そして、その削減量は……、ほぼ平方根の関係になるのよ。」
「ちょっと……。それって、二つの『量子ビット』による同時作用の適用回数がほぼ平方根になるってことなの!?」
「そうよ。二つの『量子ビット』による同時作用は、エラー率改善の問題で苦戦しているはず。ところが、この手法が適用できるのなら、その適用回数自体を大きく減るため、より簡単に演算可能となってしまった……。」
そんなもんなのね。……しかも、まだ何かありそうな表情を浮かべている。なんだろう……。




