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225, こうなった以上、やるしかない。ここで改めて、「量子ビット」への耐性について整理してみるわ。

 こうなった以上、やるしかない。ここで改めて、「量子ビット」への耐性について整理してみるわ。


 まず、「量子ビット」が苦手とする手法を取り入れつつ、「古典ビット」は普通に対応できるようにしなければならない。ここで言う「普通」とは、多少の負荷は許容するとしても、それが過度に大きくなってはいけない。


 次に、「量子ビット」が新しい手法による解決策を取り入れた際、それまでに構築してきた耐性への影響を最小限に抑える処置を、あらかじめ組み込む必要があるわ。これができなければ、単なる時間稼ぎに終わってしまう。その好例として挙げられるのが、「量子ビット」を大量投入しなければならない演算手法、よね。なぜなら「量子ビット」はこの先、あの様子では年々その力を増していくわ。だから、そんな手法では本当にただの時間稼ぎにしかならず、いつ破られるのかという不安を拭いきれなくなってしまう。それでは「量子ビット」への耐性とは呼べないのよね。


 ……。ここで「領域の変換」について。これは、「量子ビット」が演算を行う上で非常に重要な処理なのよ。つまり、そのように変換してから量子演算を実行した方が効率的というわけ。よくある話よね。ちなみに、この手法は「古典ビット」でも複雑な演算に取り入れられていて、解が求まる直前までは演算しやすい形に変形しておき、演算を完了後に改めて正規化してから出力する。こうすることで無駄を省き、処理量を大幅に削減できるのよ。それで「量子ビット」は特にこの方法を好んでいて、「領域の変換」を積極的に活用しているってわけね。


 こうした問題を踏まえたうえで、採掘から、「古典ビット」で難易度調整がしっかり効いたうえで、「量子ビット」を追い出しながら、第三者による検証が簡単にできる仕組みの構築を要求されてしまった。


 もちろん、ハッシュに宿る「雪崩効果」は切り離せない。もし、「雪崩効果」を切り離せば「量子ビット」への耐性には有効になるけれど、その代わりに「推論」が出てきて、結果として「推論」が事実上、同じような脅威になってしまう。つまり、意味がない。これも付け加えておくべき重要事項ね。


 こうして並べれば、良いアイデアが浮かんでくるはずなんだけど……そんなに甘くないわね。結局、真っ先に思い浮かぶのは時間稼ぎの案ばかりで、なかなか決定的な策と巡り合えない。


 さらに、「ポスト量子暗号」に属するハッシュの方が「雪崩効果」の作用が強いだなんて、もう……。そのため採掘では「量子ビット」によって演算しやすい構造になってしまった。「量子ビット」は確率の問題で解くから、その期待値が重要になってくるんだけど、その期待値が、「雪崩効果」の強い方が高くなるのよ。もう、なんてことなのよ……。


 でもね、そうなると、わざわざ「ポスト量子暗号」に属するハッシュへ交換する方が、リスクを高めるのなら、ハッシュはこのままで済むということね。ハッシュが変わると今稼働中の採掘の機材がまったく使えなくなってしまうから、そこはむしろプラスになるのかもしれないわ。でもこれは、「ポスト量子暗号」を採用すれば「量子ビット」への耐性になるとは限らない、良い反例にもなっているわね。ちゃんと調べないといけないわ。


 それで……一つ、仮説を立ててみたわ。採掘を受理する時間を強制的に固定し、いわゆる難易度調整に全てを頼らず、受理するようにすれば、「量子ビット」による乗っ取りを防げると考えたの。ところが、そのような手法を取っても、結局、「量子ビット」が乗っ取ってしまうのよね。


 なぜなら、「量子ビット」は難易度調整に頼らないため、自由に時間を選ぶことができたからよ。それに対して「古典ビット……採掘の機材」は、たとえ「量子ビット」に勝つためにハッシュパワーを上げたとしても、難易度調整に押される形で決まった間隔に戻されてしまう。その結果、時間を選べる「量子ビット」が必ず勝ってしまうの。ちなみに、難易度調整をなくしてしまうと、もはや何をしているのかわからなくなるから、それもできない。難易度調整を作用させながら「量子ビット」による無秩序を防がなければならないため、こんな中途半端な形になってしまい、結局、この仮説では「量子ビット」には勝てない。


 ひたすら仮説を立て、検証を重ねる。結局、それしかないのよね。そんなとき、ふと、この気配……。えっ、また? そう、コンジュ姉が傍にいたのよ。その表情から、なんだか私を応援してくれそうな、そんな気がした。

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