222, ハッシュを守るはずの「雪崩効果」が、「量子ビット」に喰われる運命だなんて。けれど「雪崩効果」を捨てれば「推論」による乱獲が始まる……。もう、逃げ場なんて、どこにもないわよ?
……。コンジュ姉、また来たの? ……。闇堕ちしているとはいえ一応、女神よ……。あらゆる場に足を踏み入れることが許される者。それが……わたしの姉、女神コンジュゲートよ。
「また来ちゃった。闇は、いつでもあなたを歓迎しているわ。」
「……、わたしは決して闇には屈しない。それだけは、しっかり覚えておいて。」
……。コンジュ姉が、じっとわたしを見つめたまま、微動だにしない。……何かしら?
「ねえ、ネゲート。それなら、こんな話題はいかがかしら? 採掘の精霊が、球根を育てる支援を始めたようね?」
「……、そうね。わたしもその内容を聞いた瞬間、思わず固まっちゃったわ。」
そこで、球根の話題……。まあいいわ。それで、何かしらね?
「ほんと、採掘の精霊って、ほんと商売上手ね。何も知らない相手に、不要になった低効率の機材を『ありがたく』受け取らせるんだから。そうよね? 採掘の仕組みを知っている方には、こんなの、すぐにばれちゃうからね。」
「……。」
……。それについては何も言い返せないわ。
「結局のところ、貴重な採掘分から高めの手数料を取られた上に、燃料代まで押し付けられるってわけね。さらに、低効率な機材の処分までできるなんて、採掘の精霊にとっては笑いが止まらないでしょうね。」
「コンジュ姉……、取引は常に双方の利益があってこそ。相手が納得している限り、それもまた商売なのよ。」
「そう、これはただの商売よ。でも、闇がやれば『搾取』で、そっちがやれば『適正な取引』ってわけ? そのダブルスタンダード、ちょっと笑えるわね?」
「それは……。」
……。それについても、何も言い返せない……わたし。
「さて、そろそろ本題に入りましょう。『量子ビット』の件だけど、進展はあったかしら? 解決の見通しは立ちそう?」
「……。なによ? 探りに来たのが目的ってわけかしら?」
「別に探る必要なんてないわ。なぜなら、すでに勝負は決まっているからよ。」
「なによ……。」
「ふふ、どうだった? 一般向けに解き放った『量子ビット』の素晴らしい使い心地は?」
そういうこと。今日の目的は、それなのね。
「あら? そうね……、なかなか興味深い『量子ビット』だったわ。満喫させてもらったわよ。」
「そこで、まだ強気なんだ。」
「なによ?」
「もう……。あなたは、気が付いているはずよ。」
「……。」
「ふふ……なんとも皮肉な『現実』ね。これだから『現実』は退屈しないわ。ハッシュを守るはずの『雪崩効果』が、『量子ビット』に喰われる運命だなんて。けれど『雪崩効果』を捨てれば『推論』による乱獲が始まる……。もう、逃げ場なんて、どこにもないわよ?」
「雪崩効果」……ハッシュのセキュリティを確保する上で欠かせない、大切な存在。当然、手放せるわけがない。それほど必要不可欠な機構だった。
……。そうなの。これこそが、採掘の問題を引き起こした「元凶」なのよね。




