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211, 「量子ビット」で瞬時に解けるものなんて、まずありえないのにね。それなのに、なんで採掘だけは、そのビットの存在に気づきさえすれば、それだけで量子演算が一瞬で終わるなんて……。

 それから……、フィーにコンジュ姉の真の姿を知らされたわ。最初は、そんなの信じられなかったわ。でも……少しずつ、心の奥底から疑問が湧き上がってきたの。そして、話を聞き終える頃には、もう、それが真実なのだと受け入れ、平常心を保てるようになっていたの。


 コンジュ姉……。それでも、わたしは信じてる。コンジュ姉が、きっとわたしたちのもとへ戻ってきてくれるって。もう……、いつまでも闇堕ちしてるんじゃないわよ!


 ……。ふと見上げると、フィーが何か話したそうにしている。なんだろう?


「……。わたしの復活と同時に、闇の勢力を率いる邪神まで復活していたなんて……、もう。」

「ネゲート、それこそが光もあれば闇もある、なのでしょう。採掘の脆弱性と邪神イオタの件、それらは『女神の戦い』として、気を引き締めていくのです。あのような闇の勢力は想像以上に手強く、そう簡単には諦めないのです。どんな非道な手段であろうと、ためらうことなく行使してくるのですよ。『量子ビット』がチェーンに向けて投げ込まれた、あのタイミングすら……。」


 ……。


「そうね。それにしても……、ほんとに、なんで一つだけすり抜けたのよ、もう……。『量子ビット』で瞬時に解けるものなんて、まずありえないのにね。それなのに、なんで採掘だけは、そのビットの存在に気づきさえすれば、それだけで量子演算が一瞬で終わるなんて……。」

「はい、なのです。チェーンの脆弱性としてよく指摘されがちな鍵と署名については、『量子ビット』によって瞬時に解けるような要素はないのです。よって、一般的な量子演算を必要するため、それに対抗できる『ポスト量子暗号』で少しずつ『量子ビット』に耐性を持たせれば問題ないのです。」

「フィーがそこまで言い切るのなら、鍵と署名については、心配はないわね。」

「はい、なのです。そこは『時間と空間の大精霊』として、自信があるのです。ところで、鍵と署名については『量子ビット』によって瞬時に解けるような要素が存在しないことを示す証明があるのです。」

「……。なんかフィー? 今、ちょっと嬉しそうよね?」


 ……、……。そのまま、嬉しそうなフィーに、その証明に付き合わされることになったわ。もう……。たしかに、鍵と署名については「瞬時に解ける」と仮定すると、線形性が崩壊してしまうから、その点が量子的な性質との矛盾になっていたのね。


 それで……。そういうことだった。採掘に限っては、その矛盾がない。よって、瞬時に解こうとしても壊れずに、量子状態を維持できる仕組みになっていたわ。つまり、採掘のための解を「瞬時に取り出せる」ということよ。式にも、そんな異様な性質が、はっきりと浮かび上がっていたわ。


 よって、「ポスト量子暗号」などの一般的な解決策は、全て失われた。さて……。

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