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204, 量子ビットによる採掘でチェーンは破れ、我ら闇の勝利が目前に迫っているのだな。ほほう……、「ポスト量子暗号」で闇に抗えるとでも? ところが、採掘だけは「暗号ではない」のだ。

 邪神イオタが上機嫌な笑みを浮かべながら、その威厳を誇示するかのような邪悪な彫刻が施された玉座に深々と腰を下ろす。その隣には、そう……女神コンジュゲートが静かに座っていた。


「本当に、そなたは見事な働きをするものだ。時代が切り替わるその瞬間に、あのような『挨拶』を仕掛けるとはな。我でさえ、あの行動には良い意味で驚かされた。我らが下僕たちも、まさかの利確に、さぞかし歓喜に満ちていたことだろう。」

「邪神イオタ様。そのようにお喜びいただけましたこと、誠に光栄に存じます。」

「ほほう。ところで女神コンジュゲートよ。我らの闇を勝利へと導くあの機密だけは、絶対に漏らしてはならぬぞ。」

「邪神イオタ様、その点は十分に心得ております。それは『量子ビットによる採掘』の件、ですね?」

「そうじゃ。頼むぞ、女神コンジュゲートよ。」

「邪神イオタ様。私は闇に忠誠を誓い、この身を賭して必ずやその約束を守り抜く所存です。」


 彼ら闇の勢力にとって、その機密は、時代が変わったことで失われた力を取り戻すための生命線そのものだった。


「さらには、精霊や神官などに探られることのないよう、うまく立ち回るのじゃ。そうじゃな……、『量子ビット』による脅威が現実となるのは『あの短い期間……早くて十五年から二十年先の話』にすぎぬゆえ、安心せよと、話をまとめることが大事となる。よいな?」

「邪神イオタ様、かしこまりました。その点はご安心ください。すでに『ポスト量子暗号』という概念を私が流行らせました。そしたらイオタ様の思惑通りになっております。『量子ビット』による脅威は鍵や署名に集中しているという勘違いを引き起こし、誰もが、まさか『採掘』の場所が狙われているとは想像すらしていない状況になっております。」

「うむ。さすがだ、女神コンジュゲートよ。我ら闇が力を取り戻すのに、わざわざ複雑な構造を持つ鍵や署名などを狙う必要はない。『採掘』のロジックに備わる難易度調整の過程そのものが、『量子ビット』に対して『重大な脆弱性』となっている点を深く狙うのじゃ。よいな?」

「はい、深く忠誠を誓います。」


 女神コンジュゲートは、座ったまま静かに身をかがめて深々と礼をした。


「あのような脆弱性では、もはや対策すらできない。そして、難易度調整はチェーンの『心臓部』だ。その難易度調整……すなわち、チェーンの速度を定める最重要な過程が『量子ビット』に対して全く作用しないとはな、チェーン管理精霊たちはこれにどう抗うのだ? 最も長いチェーンを真とするのなら、チェーンの採掘は、すべて闇の力……『量子ビット』が『独占』することになるぞ。つまり、チェーンを生かすも殺すも我ら闇の思いのままとなる、ということだ。だが忘れるな。我ら闇に、このような存在を生かし続けるつもりなど、微塵もない。よいな?」


 邪神イオタは腕を組みながら、女神コンジュゲートに視線を向けて同意を求めた。


「邪神イオタ様、仰せのままに従います。そんな状況になっているにも関わらず、私が流行らせた『ポスト量子暗号』という概念で十分に戦える、そんな流れにもなってきております。とても良い流れです。今回の相手……女神ネゲートは、完全に油断しているとみております。」

「うむ。量子ビットによる採掘でチェーンは破れ、我ら闇の勝利が目前に迫っているのだな。ほほう……、『ポスト量子暗号』で闇に抗えるとでも? それを適用することで『量子ビット』への耐性を得るのは暗号が作用する場所のみじゃ。つまり、鍵や署名などの場所だけになる。ところが、採掘だけは『暗号ではない』のだ。よって、『ポスト量子暗号』など、採掘にとっては、まったくの無意味。そなた、そこまで見越して流行らせるとは……。」


 「感心、感心」と、邪神イオタは闇の中で何度もつぶやき、邪悪な笑みをゆっくりと浮かべた。

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