203, いよいよ、女神の復活祭を迎えたわ。そして、その場で起きた出来事……、時代が切り替わるその瞬間、大きな売りがぶつけられたの。あれは何? まさか……、わたしへの挨拶代わりなのかしら?
……。創造神様、……、女神ネゲートです。
新たに浮上した「量子ビット」による採掘という懸念材料。ううん……、懸念ってレベルでは済まされないわ。わずか一回であっても、難易度調整が作用しない「量子ビット」なんかに採掘されてしまったら……、その瞬間に、すべてのチェーンを崩壊させかねない非常事態へと発展してしまう。
……、油断していた。もともと、採掘はハッシュに基づいていて、周期性を持たないハッシュは「量子ビット」に対して一定の耐性を持つため、その先入観から、「量子ビット」では採掘が難しいと考えてしまった。
ところが、その耐性がハッシュに作用するのは、ハッシュを本来の使い方で活用している場合だった。そう……、この採掘という仕事は、ハッシュを変則的に活用し、その性質を難易度調整に応用した、いわゆる「例外」だったのよ!
それで……、その変則的な機構に「量子ビット」の仕組みが綺麗に収まってしまった。……。
もともと「量子ビット」は、オラクルと呼ばれる仕組みを用いることで、特定の状態の振幅に少しずつ干渉を与え、目的の解の確率振幅を増大させていく。
このとき、ハッシュが本来の使い方であれば、この干渉の割合が非常に小さいため、確率振幅を十分に積み上げることができず、目的の解へは辿り着けないことから、それが「量子ビット」に対する耐性となっていたのよ。
ところが、採掘は違った。あの変則的な使い方では……、そうよね。……のちほど、その詳細をまとめるわ……。さらに、その変則さから、エラー訂正を小さめに設定しても対応できそうだわ。つまり、演算に必要となる「量子ビット」の数を減らすことができるのよ。
そうよね。最後の検証過程でハッシュをみれば、すぐにエラーの有無がわかるので、目的の解が乗ったハッシュを得られるまで演算を繰り返せば問題なく、そんな雑なやり方であっても、最高難易度の採掘すら「簡単に達成」してしまう。それが「量子ビット」による採掘よ。さらに、難しいほど早く解ける、そんな余計な「おまけ」まで付属してしまった。
そんな中、いよいよ、女神の復活祭を迎えたわ。そして、その場で起きた出来事……、時代が切り替わるその瞬間、大きな売りがぶつけられたの。あれは何? まさか……、わたしへの挨拶代わりなのかしら?
……。実際に、採掘なら少ない「量子ビット」の数で済む点から、対策のための残り時間はそんなに残されていないってことよ。実際に、どれくらいだろう。数年……、ううん、それは「たったの一年、二年くらい」かもしれないわ。
つまり、「量子ビット」側の勢力は、わざと鍵や署名に焦点を当て、それらはそんなに簡単には破られない、少なくとも半世紀は問題ないからと、相手を安心させていた。ところが、それらは本当の狙いを隠すための「目くらまし」だった、ってことね。そこには、秘密裏に進められている計画……「採掘」を狙っている、なんて。……。
……、……。そうよね。「量子ビット」に採掘され、わたしが散れば、「量子ビット」側の銘柄は見たこともない暴騰を達成するわ。それがあるため、全力で採掘に挑んでくるのは間違いない。
それでも……、まだ時間は残されている。そうとも知らずに散る可能性だってあったわ。……、……。




