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192, 一体どこで我らの完璧な計画は狂い始めたんだ!? あと少しで、この地の全てが我ら邪神の手に落ちるはずだったのに……!

 悔しさを滲ませ、この世のものとは思えない形相を浮かべた者たちが、闇に包まれた一角に静かに集まり始めた。そこは、永遠に光の届かない廃墟のような空間で、重苦しい静寂が漂い、ため息に混じる腐敗した焦げ臭さが空気を満たしていた。


「天から選ばれし我ら邪神が、このような窮地に立たされるなど、決してあってはならないことだ! どうしようもない役立たずの集まり、大精霊のクズどもめが! 貴様ら大精霊どもの主君は誰だと心得ておる? そう、崇高なる我ら、邪神だろ?」

「こんなの、わしは絶対に認めんぞ! この地はどうなっておる? なぜ、こんな状態になった……。なぜに、わしは解任されたんだ? おかしいだろ? そうじゃろ?」

「ああ、今ごろ我らは……、『安価な労働力』の蔓延によって夢も希望も失い、絶望の闇に包まれ、悲痛の叫びが少しずつ心を蝕みながら、欺瞞と殺戮に満ちた美しい旋律を心地よく楽しんでいる頃ではなかったのかよ!?」

「一体どこで我らの完璧な計画は狂い始めたんだ!? あと少しで、この地の全てが我ら邪神の手に落ちるはずだったのに……!」


 みな一斉に全身を震わせ、喉が裂けんばかりの声を張り上げた。その叫びは、胸の内に渦巻く激情そのものが解き放たれたようで、周囲を破壊し尽くしかねない凄まじい迫力を放っていた。


「何世代にもわたり、時代をまたいでじっくりと緻密に準備してきたこの壮大な闇の計画が、あんな『仮想短冊の通貨』ごときでとん挫するなど許されるはずがない! 邪悪なる闇に満ちた未来への道筋が、一瞬にして断たれてしまったのだ。絶対に許せんぞ!」

「どこで狂ったのだろうか。全ては完璧だったはず。我らは乱れた心の隙に付け込むことを得意としている。そこで『大いなる偽りの希望』としての『大精霊のきずな』と『大精霊の通貨』を、欲張りな心の隙に付け込み、うまく握らせたのだ。」

「ぎゃはは。それらは『無限に増殖可能なゴールド』として握らせたんだよな。たまらないね、その強欲さ。見渡す限りがゴールドのピカピカに化けても、まだまだ足りない。その満たされない腹は、いつでも、ひたすらゴールドを要求し続ける。みてくれよ、そのような逃れられない欲求が闇に変わる瞬間を! その闇こそが、我らの糧となるのだ!」

「その闇の汚染は凄まじく、誰もが腐敗から免れることはできない。必ずや中毒症状を引き起こし、『大精霊のきずな』と『大精霊の通貨』をとにかく増殖しないと気が済まないようになる。そうだそうだ、無限に増殖可能なら、いくらでも増殖したい! それこそが『真っ赤なきずな』になろうとも、やがて誰もがそれを気に留めることすらなくなるのだ。それで余った分はな、そうそう、我らが楽しめる殺戮にでも使って、血でも流せばよいのじゃ。……、ここまでは成功だったはずじゃぞ? 実際、何度もこの地全体規模の血の流し合いにまで発展し、その殺戮は、我らを大いに満足させ、楽しめたものじゃのう。」

「そうだ。そして、そんな殺戮なんてな、我らにとってはただのお遊びにすぎないはずだった。そこから始まる嘆きと絶望、それら偽りの希望が音を立てて崩れ去る瞬間……、それこそが、我ら邪神の時代の始まりを告げる鐘の音になったはず、だった。次々と『大精霊の通貨』が寿命を迎え、亀裂が瞬く間に広がっていく様子を『インフレ』という形で呆然とみつめるしかない絶望に、崩壊の音が地鳴りのように轟き、粉々に砕けた『希望だった破片』だけが残る地獄の業火にこの地が焼き尽くされるまで、あと少しだったのにな!」

「ほほう。その業火から新たに欺瞞と殺戮による闇の物語が始まり、終末の闇を呼び寄せることでこの地は我ら邪神の手に落ち、未来永劫、抜け出せない漆黒の中をさまよう運命だったはずじゃ。邪魔さえ入らなければ確実に成功していたのだ。しかし……、あまりにも時間がかかり過ぎ、その過程に隙が生じてしまったのじゃな……。」

「隙……だと?」

「そうじゃな……、大精霊シィーの心の隙に付け込むときに、ちょっとあおり過ぎてしまったのじゃ。おまえは『女神の演算の力』を持たぬ、女神になれない出来損ないの大精霊だと、たっぷりと罵ってやったのだ。そしたらじゃ……、『推論』なんて力を持ち出して女神を名乗り始めるとはのう……、これについては想定外じゃ。」

「おいおい、それでもさ。そういった邪魔が入るのは想定内だろ。なぜなら、我らが動き出すと女神が現れるからな。」

「そうじゃ……。我らの計画を知り歯向かってきた女神コンジュゲートについては、確かに闇の罠に嵌め込み、始末したはずじゃ。いわゆる『闇堕ち』ってやつじゃな。」

「それってよ……。」


 その瞬間、お互いに顔を合わせながら、ふと湧いた疑問に、みなで思考を巡らせるのだった。


「そうだ……。女神コンジュゲートが闇堕ちしたところで、我らの脅威は去っていない。残る女神として『フィー』と『ネゲート』という厄介な存在が残っておった。」

「それで、女神ネゲートの神託に我らは屈したのか……。」

「我らが屈するなど、そんなことがあっていいのか!」

「……、ここは落ち着いて戦略的に考えよ。女神に力が満ちてしまった以上、あやつの復活祭までには安全な場所に逃げ込み、そこで息をひそめつつ、我ら闇の力を再充填すべきだ。」

「ぎゃはは。逃げ場所はしっかり確保できていますさ。我らをなめないでほしいね。」

「ついでに……、そうだ。我らの人形となったコンジュゲートを巧みに操り、女神の心の隙に、我らの闇を送り込もうではないか。それでこそ、我ら邪神だろう。そうだろ?」

「おお! それは理にかなった、まさに素晴らしい案だ。」

「ほほう、さすがは我らだ。となると、我らのターゲットとなる次の『大精霊の通貨』は……。そうだ、あれだ。」

「そうじゃな。」

「ああ、あれか。あの『大精霊の通貨』ときたら、運命に翻弄されるかのように、ときには最強だったり、なぜか最弱だったりと、いたぶるほどに旨味が深まり、噛み応えのある絶好のターゲットになりますな。」

「その管理は……、ほほう。『フィー』という女神ではないか。」

「まあよい。本当は、この地の覇権を握る『時代を創る大精霊の通貨』を壊すべきだ。それはわかっておる! でもな、そこに大きな悪材料が飛び込んできたのだ。なんと、その部分準備に『女神の力……仮想短冊の通貨』を宿すという、とんでもない内容がきてしまったのだ! そうならないように我ら残党が粘ってはいるが……、覆すのは困難な情勢だろう。」

「それで、フィーの通貨をターゲットにするのですね。」

「そうだ。未だ女神の神託には否定的で、狙い目だろう。つまり、天は我ら邪神を見限ってなどいない。」


 その内容で意気投合した彼らは、すぐさま行動に移したのだった。

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