191, 不正な票を取り除いたら票の総数でも負けていたなんて、本当にやりたい放題だったわ。その結果がこの分断よ。ちゃんと自分の口でありのままを民に説明し、「時代を創る大精霊」から降りなさい。
あなたは……。ううん、創造神様にすら見放されたこんな私を見届けてくれる方なんて、もういない。これは幻覚。ついに私は、消滅の瞬間を迎えるのね。このまま「大過去」の中に溶け込むように、消えていく……。
その瞬間、なつかしい声が頭の中を駆け巡った。その声に、「大過去」の中に溶け込みそうだった私の魂が呼び戻される。
「シィー! そんな形で逃げようなんて、わたしが許さないわよ。」
……。
「姉様。わたしは大精霊として毅然と振る舞うことに決めたのです。」
……。あなたは……。
「シィーさん、あのさ、『錆びついた工場……奴隷労働』『返せない借金』『シィーさんの頼れる精霊が豪快に炸裂』『仮想短冊の通貨は近いうち禁止』『大不況』『大精霊の承諾を得ないまま勝手に移り住んだ民を是認した上、不透明なボーナスを毎月支給』、ここまでやったら、民の審判なんて勝てるわけがないでしょう。そうだよね?」
……。その声に驚いて、思わず叫びそうになる衝動に駆られた。それをグッとこらえたものの、我慢しきれずに声が先に出てしまった。
「あなたは結局、私のお願い……一つも叶えてくれなかったのね。」
シィーのお願いを一つも叶えてくれなかった女神の担い手様。……、これが、私の最期の言葉になるのかしら……。
「あんたの願いは、本当に無茶苦茶よ。あんな願いなんて叶えたら今頃、この地は崩壊しているわ。」
「……、私の最期を見届けにきたの?」
「何を言っているのよ? あんたのお気に入りに強く頼まれて、わざわざ赴いたんだから。」
……。あの方は、女神ネゲート様に直接願い出た……、のね。私を助けるために……。
「姉様。あの票の動向では、すぐにでも『時代を創る大精霊』から降りるべきなのです。わたしは、『安価な労働力』と『推論』を結び付けること、それには強く反対するのですよ。こんなのが目的で『推論』を推進していたのであれば、もう……。」
「フィー……、票の動向って……。」
それから、私は全てを知らされた。あの方が……全てを女神様に曝け出す代わりに、私を助けてほしいと哀願した事実を。
「本当にひどい有様だった。マジックショーの巧妙な仕組みには、ただただ驚かされる上に、不正な票を取り除いたら票の総数でも負けていたなんて、本当にやりたい放題だったわ。その結果がこの分断よ。ちゃんと自分の口でありのままを民に説明し、『時代を創る大精霊』から降りなさい。」
「女神ネゲート様……、ありのままを民に説明なんて……。私……。」
「まさか、逃げるつもりなの? もし逃げるなら、この場でわたしもあんたを見限るわ。」
「……。」
「これはあんたのために進言しているのよ。もしそうしないなら、あの政敵が『すべてを晒す』と警告していたわ。でも、自分の口から素直に説明すれば、まだ何とかなるはずよ。」
……。あの方の願いでもあるから、私はその案を受け入れることにした。それしか助かる道はないから。きっと、ずっと罵倒され続けるだろうけど、これは自分への罪。受け入れるしかないわ……。




