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181, 最近のインフレの様子はどうかしら? もしそれがあの方の予測通りに進んでいるのなら、その根源が尻尾を出し始めたと解釈して良さそうね。

 「推論」の時代を創る、女神シィーです。


 フィーの提案……それは「推論」の躍進と「テンソルチェーン」の構築を受け入れてから、明らかに良くなっていく兆候が私の周りからも現れ始めたのよ。本来なら、インフレに対して思い切り利率を引き下げるなんて真逆の行為だったはず。でも、でも……、あれ以上に利率を上げるなんて、強くて当たり前の私の市場をもってしても、耐えられる見通しが立たなかったわ。


 さて、最近のインフレの様子はどうかしら? もしそれがあの方の予測通りに進んでいるのなら、その根源が尻尾を出し始めたと解釈して良さそうね。


 そう……、インフレは退治され、思い切り利率を引き下げたあの日、追加で利率を下げると強く出た点も良かったわ。その分まで織り込んでインフレが収まってきたということは、それはすなわち、利率を下げずに様子見を行うという別の選択肢を選ぶことができる柔軟性を同時に獲得したことにつながるのよ。


 もちろん、これにはフィーの協力が不可欠よ。でも、フィーは私にとってかわいい存在。そうよね?


 それにしても……、このような良い兆候が現れ始めたにも関わらず、私に対する抗議活動については未だにその勢いが衰えていないのよ。それで、このままだと私の地域一帯は滅びるとか……、過激な表現まで飛び出してきたのよ。


 何が、滅びる、よ? あの政敵の方針では、落ち着いてきたインフレが再燃してしまい、利率でコントロール不能となる恐ろしい可能性が指摘されていたわよ? つまり、その焦りから利率の上げ下げが繰り返され、それにインフレの収束が反応しなくなっていき……その影響による不安定な市場への失望が絶望へと変わった瞬間、私の市場が急激に失速して墜落してしまう。その状況は軟着陸どころではなく……、見渡す限りが火の海と化しているわ。ああ……、そうなったらもう、再起不能ね……。


 結局、あの政敵に収束や発散などの概念はなく、そこにはビジネスのみが存在する……まさにこの一言に尽きるわ。いかがかしら? その影響かしら、あの政敵のパーティーに昔の面影などまったくなく、あの政敵に寝返った精霊たちで溢れているわよ。もう……。


 それとも、あの政敵の方針として挙げられていた「平和」について、それを願う者たちでそのパーティーは溢れているのだから、どこに問題があるのさ? そう、突っ込まれそうね。


 まず、血が流れるというのは見方によっては「大きなビジネス」となるのよ。血が流れるところには破壊があり、そして再建があることを忘れてはいけないわ。さらには戦に備えた「燃料の備蓄」などもある。つまり、政で「ビジネス」と「燃料」に執着する者には絶対に注意すべきよ。


 つまり、血が流れるのを止めたい……「平和の実現」を謳いながら、経済的または地政学的に利益を得続けている者がいるのなら、その者はただ演技をしているに過ぎないわ。そして、それは実在しているのよ!


 えっ? そんな者がすでに実在するのかって? もう……、創造神様。私にあれだけの文句を言い放っておきながら、そうくる訳かしら? それでは、こんな私を少しはお許しいただき、「推論」の力をお褒めくださるとの認識でよろしいかしら?


 まず、その者は大精霊よ。民の審判で「腐敗撲滅」「対話による平和の実現」「民の生活支援」「透明性の確保」「マッピングの推進」を掲げ、民から大精霊として選ばれることで、その権力の座に就いたのよ。


 それでね、他の部分は忘れてもここだけは記憶に留めてもらいたいほど重要なこと……、それはね、その地域一帯の民がその者を大精霊として選出した理由についてよ。それは、「対話による平和の実現」を期待したという回答が圧倒的に多かったと伺ったわ。


 ところが「大過去」から映し出された現実はまったく違っていた。そう……、血が流れ始めたのよ。つまり、その民は「平和の実現」という美辞麗句を並べ立てた虚構に、まんまと騙されてしまった、ということよ。


 このような現実は非局所性で確率的な現象。つまり、異なる結果が生じてしまうには訳があって、初めから収束して決まっていたことを示唆しているわ。なぜなら、その結果に至るように前もって何度もトレーニングすることにより、異なる結果の確率振幅が非常に大きくなるように調整されているからなのよ。


 そこで私は、頼れる精霊などですぐに支援したわ。ところが、女神ネゲート様はそのような私の支援を勘違いしたようね。血が流れるというのは大きなビジネスで、インフレを何とかしたいという目的から、私はそれにただ夢中になってしまったと?


 もう……、そんなに単純な話ではないわ。それで、あの政敵は「平和」という言葉を、いとも簡単に並べていたわ。つまり、そういうことよ。もし大精霊が暴れ始めた場合、経済的な圧力を示唆するだけで何もしない名ばかりの平和では、その圧力を受け入れ、あえて暴れる方が将来的に得るものが大きいと判断したのなら、もう止められないわ。


 とにかく、女神ネゲート様は「推論」や「テンソルチェーン」で挽回するしかなく、これ以上の失敗は許されない。それでも……、共に成長するこれからの道には期待しているわ。

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