表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/411

17, 犬くらいは気軽に使え、ですか!

 私は、暑くても寒くても、それを直に感じることはありません。なぜなら、今日も明日も……、日付が変わる直前まで、民や……妹のミィーのためにも、頑張るからです。外に出られる時間など、ここまでの行き来だけ、です。


 ところで、昨日です。都の方で、とんでもない内容が「ブロードキャスト」で流れてしまい、ただでさえ忙しいのに、その分の対処まで加算されそうで悩ましいです。あのようなやり方は、妖精の悪戯かもしれませんね。誰もが「罠」と感じてしまう極端な悪戯が特に好みで、これが案外……、効果抜群だから、当人にとっては、とても恐ろしいはずです。


 しかし、です。このような状況だったのですが……、なんと、私の努力が報われる瞬間が来ました! やはり……「創造神」様は、いらっしゃいますね。


「昨日のあれは、ほんと、すばらしかった!」

「わし、笑いこけて、久々の睡眠不足。妖精も、なかなかやるのう!」

「あやつにとっては、この界隈の怖さについて、これでようやくわかった、だろうな。ただし、妖精を称えるのは良くないな。神々ですら……、妖精の悪戯については、頭を抱えているからね。例えば、語句の入れ替えや場面の差し替え、我ら神々のイメージを悪くするなど、とにかく、酷い目に遭わされているからな。これで丁度よい、そう、平等だ。……、それでも、昨日の件は、あの妖精らを称えたくなる衝動を抑えられない。それくらい、素晴らしい内容だった!」

「さすがに、あやつへの信仰心に影響はあるだろうな!」

「それは、計り知れない影響があるな。最高だな、ほんと。」

「ただ……、あれ位で諦めるようなやつではないぞ。あやつは!」

「それくらいはわかっておる。だから、これから面白い提案を出そうと、心待ちにしているのだ。」

「心待ち? ああ、来ましたね……。」


 私は、楽しそうに話し込んでいる彼らのところに駆け寄り、すぐにそこで、一礼をします。


「遅くなり、大変申し訳ございません。」

「おおっ! おぬしか。そうかそうか。魔に転じた精霊の件と、犬の件だったな。」

「はい! ありがとうございます。」

「まずは精霊の件からだな。そいつな、実は……あれっ? どこかでみたような……となってな、やっぱり、となった。売り方で有名な、かなり狂った風の精霊なので、注意して対処せよ。ただ、暴力的ではない。適当に遊んでやれば、大丈夫だ。ほんと、あれだけ狂っているのなら、いつ、魔に転じても不思議はない。脅威が去ったら、あとは放置で良いぞ!」


 売り方で有名な風の精霊、そんなのがいるんだ。でも、そんな姿にはみえなかったような気が……。まあ、どうでもよいか。答えは一つしかないのですから! 私に、拒否権はありません。


「受け賜りました。」

「それで、犬の件だが……。」

「……。」


 ここからが大事です。犬の扱い、どうなるのでしょうか……。


「たしか、精霊が何となく始めて、すでにその精霊らも制御できない、だったかな?」

「はい、そのような代物でございます。」

「ならば、もう、勝手にどうぞ、だな! 今日は実に気分が良い。我ら神々と、あの妖精らに感謝するがよい。」

「あっ……、ありがとうございます!」


 これで終わり? そ、そうなのか。良い方向性の「まさかの展開」って、あるのですね! 私にも、幸運が巡ってきたのかな。


「ただし、条件が二つ、ある。」

「はい。」


 やはり条件、か。変な条件でないのなら、嬉しいのだが……。


「まず一つ目だ。『通貨』は神々の所有物だ。ここに異論はないな?」

「ございません。」


 その展開は、だいぶ前から予想していました。異論はございません。


「つまり、その犬は通貨ではない。そうだな、適当なアセットにでも組み込む見込みだ。」

「受け賜りました。」

「そして、二つ目だ。」

「……。」


 このような流れでは、最初は軽い条件で、次に、厳しいものが来る。さて、何が出てくるのか。


「フィーという者を知っているか?」


 フィー……、だと。えっ! フィー!? ……、落ち着け。


「フィーですか……。存じ上げております。」

「実はな、このフィーという者に対する信仰心が、驚きの数値に至っておる。すなわち、人気があるということだ。さらには、『フィー様』という敬称まで、あるらしい。」

「……。はい、それについても存じております……。」

「まったく、我らすら……嫌味のときにしか敬称を付けてもらえないのに、なんてことだい。」

「あっ! それは……。」

「まあ、落ち着け。今日は気分が良いから、このような冗談が出てしまう。」

「……、受け賜りました。」


 たしかに……。いつもの厳粛とした雰囲気がありません。今日は、私も気が楽です。


 ところで、ミィーから散々聞かされた敬称ですね……、その「フィー様」。私は、このような山師……ギャンブルには反対の立場です。


「そこで、このフィーを呼び戻してほしい。」

「よ、呼び戻す!? あっ、大変申し訳ございません。」


 呼び戻すって!? このようなギャンブラーを、どうするおつもりなのでしょうか? まさか……、いや、そのまさか、ですね。その信仰心を狙うのか。


「まあ、慌てるな。この者は、もともと、我ら神々と苦楽を共にした仲間だ。声をかけるだけで、すぐにでも舞い戻るであろう。」


 苦楽を共に、か。ギャンブラーと苦楽を共にするって、一体、なんだろうか。ここは……考えるのをよそう。呼び戻すだけだ。簡単な話だ。ただ……、なぜ私なんだ? あっ、これは私の思い上がりではなく、呼び戻すだけなら、連絡を入れるだけで済むのにな……、という、ちょっとした疑問です。会いに行かないといけない、これはすなわち、喧嘩別れのち、疎遠な関係となっている可能性がありますね。つまり、後からギャンブラーと気が付き、神々の方から手をきった、ですよね。まあ、あの精霊らへのご奉仕に比べれば、気は楽です。さっさと引き受けて、フィーを呼び戻しましょう!


「受け賜りました。」

「すばらしい。気合を入れて、頼むぞ。」

「……、気合を入れて、ですか?」

「そうだ。このフィーという者は、物静かだが、なぜか、常に論理を求めてくる悪い癖がある。」


 常に論理だと……。ギャンブラーが、そのようなものを崇めるのか? これは、気を引き締めていかないとな。何を問われても即答できるように、準備して、向かいましょうか!


「わかりました。今から準備をしまして……。」

「おっと。大事なことを忘れていた。この者、この付近にはいないんだ。」

「えっ!? あっ、思わず……。大変申し訳ございません。」

「自然に囲まれた、なかなか良い場所らしい。そして、自然は身近にあるのに、この危機だ。まったく、皮肉なもんだな。なぜ、急に『可食部が減った』のか、理解に苦しむぞ。」


 ここで私は、急にひらめきました。この危機を乗り越えるための名案を、です。なぜか削られた予算を、元に戻せるかもしれない……、唯一の機会と判断しました。


「……。あ、あの、不躾なご要望となるのですが、一つ、よろしいでしょうか?」

「よろしい。今日は、何でも良いぞ。」

「その、可食部が減った件に関する研究なのですが、もう少し……、ご予算をいただけますと、さらに良い成果が『早く』得られそうだと、日頃から伺っておりまして……。」

「なるほど、追加の予算だな。わかった。さらに、例のものを、使ってみるか?」

「例のもの……ですか?」

「なぜか魔の者が囲んでいる『演算装置』だったかな。魔の者があんなものに心を奪われ、天すら放置するとは、まったくもって情けない限りだ。そして、そろそろ返していただくかな? 『演算装置』と……『天』を、だな。」


 胃が痛くなったが……、言ってみるものだ。すんなり通りました! さらに『演算装置』まで付くとは。前回は「余っている」という理由で引き上げだったので、驚きです。


 それにしても、自然は私達を見放したのでしょうか。もちろん、心当たりは……腐るほど、です。それでも、前を向くしかありません。


「ありがとうございます。」

「そして、『演算装置』と『天』を我らの手に戻すには、どうしたらよいか、わかるな? この勢いに乗るしかない。わかるな? この意味を?」

「御意。必ずや、フィーを呼び戻します。ご期待ください!」


 私にとっての久々の遠出が、絶対に勝利を譲れない戦いになりました。負けるつもりは一切ありません。ここで負けたらすべてが終わるという強い気持ちで、挑みます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ