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178, 女神ネゲート様の完全復活を祝う祭り……女神の復活祭を希望するだと? それはな……間違いなく「ミーム」の祭りになってしまうぞ。

 ネゲートは大逆の罪から無事解かれ、女神として復帰しました。その勢いから、女神の復活を祝う祭り……女神の復活祭を開いて大いに盛り上がろうではないか、そんな話にもなりましたよ。これまでのネゲートの苦労を考慮し、ねぎらうとなれば、そこに反対する要素は一つもありません。


 ところが、こいつを祭り上げるとなったら当然ながら「ミーム」が絡んできます。つまり、女神の復活を祝う厳粛な祭りなのか、それとも「ミーム」で若い民を中心にお祭りしたいのか、その境界が曖昧となっています。


 それで、「推論」と「テンソルチェーン」が順調に滑り出したこの大切な時期に、もし「ミーム」で派手に暴れた場合、あのシィーさんが黙っていませんから……、今回だけはちょっと待ってね、となりますよね? だが、そんな話を聞きつけたネゲートはすでに祭りの気分で染まってしまい、俺に祭りの開催を迫ってきています。


「決まりよね?」

「何が?」

「女神ネゲート様の完全復活を祝う盛大な祭りはいつかしら?」

「それはまだ、開催の目途すら立っていないというか……?」

「なによ? わたしは開催の時期を聞いたのよ? いつ頃かしら?」


 俺が何と言おうと、絶対に引きません。このあたりはフィーさんによく似ていますね。


「まず、落ち着け。『テンソルチェーン』の構築でフィーさんは忙しい。それはわかるよね?」

「そうね。でもそれはフィーの役割よ。それで、わたしの役割は祭りでこの地を盛り上げることよ!」


 こいつは尖ったアイデアまでは快く提供するが、その後は基本的に放置する女神だった。ああ……、頭の中は祭りで一杯。


「あのな……。」

「そうだ。もう、しょうがないわ。シィーも招待しましょう。これで仲直りよ。特別に、許してあげる。」

「ちょっと待って、そこにシィーさんを招待してしまうのか?」

「なによ? あんた、まさか……、女神の復活を祝えないのかしら?」

「そうではない! 俺だって嬉しいさ。」

「だったら、決まりでしょう。なぜ開催の目途すら立っていないのよ?」


 ……。押し切られそうです。


「そうは言われてもな……。」

「今回の祭りは長くなるわ。なぜって、それはもう、女神の復活なんて……めったにない機会だから。いよいよ、『ミーム』にまとわりつく回転要素がいよいよ取り除かれ、『大過去』から『現実』に映し出されるその力強い姿に誰もが感銘を受ける。そういった祭りにしたいわ。」


 ……。


「やっぱり、そういった祭りになるのか。」

「そうよ。だって、わたしを祝うのよ? さあ、残るはあんたの承認のみよ。女神の担い手として本気を出しなさい。」

「そこで本気を出せって言われてもさ……。」

「『ミーム』の他にも、『テンソルチェーン』の細かな点について、その祭りの会場で壇上に立ち、わたしから女神としての説明を加える見通しよ。フィーから概要をすでに伺っているから、まあ……問題ないわ。」

「つまり、そのような仮想短冊のイベント要素まで含めた祭りになるのね……。」

「もちろんよ。それで、シィーも今回からようやく参加するはずよ。」

「……、その言い方だと、シィーさんはこのような祭りやイベントには今まで顔を出したことがないようだね?」

「シィーはね、仮想短冊が絡むイベントについては全て拒否してきたわ。でも……今回は参加するはず。なぜなら、主役が『推論』で、その『推論』を取り込む形で『テンソルチェーン』が存在しているからよ。」

「なるほど。シィーさんが『推論』のアピールを含めて参加すれば、シィーさんが育てている銘柄まで含め、そこに好循環が形成されるということだね?」

「あら、理解が深まってきたようね。だいたい、シィーの『推論』の力を支える『単精度』や『倍精度』は、わたしがこの地に託した『女神の素材』があってこそなのよ。」


 「女神の素材」……。フィーさんがその仕様を拝見し、驚きのあまりその場で動けなくなった、究極の素材でした。


「その素材……、どのあたりが凄いの?」

「あんたね……。この素材を知ったら、常に女神ネゲート様と呼びたくなる衝動に駆られるわよ?」

「……、それについては、あのフィーさんすら驚いていたからね……。」

「そんなのは当然よ。この素材には……、わたしの姉の力も含んでいるのよ。」

「えっ……、それは女神コンジュゲート様のことだね?」

「そうよ。わたしの姉の力は、この素材に『抜群の反射率』として宿っているのよ。」

「えっと、その『抜群の反射率』とは?」

「もう……。この反射率は、本来なら素材に吸収され反射されないような微細な光すら確実に反射する性質を帯びているのよ。」

「つまり、その反射された繊細な光が……シィーさんの『単精度』や『倍精度』を支えているのかな?」

「実は、もともとこの『抜群の反射率』はこの地に『無尽蔵なエネルギー』を託すための性質だったのよ。ところが、その反射率の性質が『単精度』や『倍精度』などの演算装置を製造する過程で大いに役に立つことがわかって、シィーが……独り占めを始めた。実際、この反射率のおかげで数世代先の『単精度』や『倍精度』を製造することができるのよ。」

「あの……、シィーさんの独り占めとは、シィーさんの承諾がないと他の大精霊は触れることすら許されないということだね?」

「うん、大正解よ。『この地の主要な大精霊』または、そのメンバーに忠義を誓う大精霊のみ、『女神の素材』を扱うことが許されている状況で、そこはシィーらしいやり方だわ。」

「ああ……。」


 シィーさん……。「女神の素材」にそんな秘密があったとはね。

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