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174, チェーンにまつわる全問題点は、チェーン上に署名を置く構造自体に原因があるため、その署名を「推論の素……テンソル」に全て置き換えれば、奪われる件と燃料浪費が同時に解決するのですよ。

「わたしはこの地域一帯を一任された大精霊、それゆえに『精霊の推論』ならびに『大精霊の推論』によって導かれた考察はわたしに全て伝わっているのですよ。その『推論』の力は対話の時代さえも彷彿とさせ、姉様が『推論』に夢中になるのも頷けるのです。姉様はこの『推論』の力で財政の立て直しまで視野に入れ、本気で取り組んでくるのが明白なのですから、それに応える形で『テンソルチェーン』を託す事にするのです。」


 どうやら、「推論」による考察はすでにフィーさんの頭の中にあるようですね。


「フィー様、それならば、女神シィー様がチェーンにご要望される全問題点に対して、厳しく対処していくべきです。」

「はい、なのです。まず、わたしの姉……女神シィー様は、チェーンに対する強い不満として『残高が奪われてしまう点』と『ハッシュ演算による燃料浪費』を挙げていたのです。それらについては、わたしも……否定はできず、実際に起きている現実として重く受け止める必要があるのです。そこで、これらの問題を解決できる糸口を見い出せれば女神ネゲート様を救い出せると考え、知恵を絞ったのですよ。」

「フィー様、その点は我らも同一の考えでございます。そこで資料を取り寄せ、『精霊の推論』に見解を伺ったのでございます。」

「そうだったのですか。それなら……致し方ないのです。結局、チェーンにまつわる全問題点は、チェーン上に署名を置く構造自体に原因があるため、その署名を『推論の素……テンソル』に全て置き換えれば、奪われる件と燃料浪費が同時に解決するのですよ。よって、女神シィー様が指摘される問題点はすべて解決し、それこそがお互いの利益につながると、わたしは考えたのです。」


 ああ……。シィーさんは「推論」の力を借りることで、このような複雑な論理を解いていました。でも……フィーさんは違う。そこが決定的な違いになるのだろう。……。


「フィー様、さようでございます。お互いの利益につながる……、その調子でございます。」

「はい、なのです。それでは、署名を『推論の素……テンソル』に置き換えると、なぜ、チェーンにまつわる全問題点が解決できるのか、ですね。まずテンソルとは、あらゆる型を表現できる抽象的な構造を指すのです。その性質は多態性であり、非常に大きな各要素の処理について、その抽象的な構造を保ちながら各形態の性質を巧みに利用して効率良く各要素を小さくしていく手法……『縮約』と相性が良いために、そこで、チェーンの構造に組み込まれている『署名』に着目するのです。まず、そこが今回の要とも言えるくらいの大切な要素となって、さらに、テンソルの多態性を的確にコントロールするための『縮約』と『推論』も重要になってくるのですよ。」


 その理論……、俺は何となくフィーさんに「大が小を兼ねるのようなものかな?」とたずねたら、それは「大が常に優れている性質を保持しながら小を包含している場合の解釈」であって、実際には小の方が優れている場合も多く、その場合は包含関係とならない。よって、テンソルの場合は大が小を兼ねるとは言えないと、注意されたことがあります。つまり「小には小なりの別の価値があるという解釈」でした。


「フィー様。それはつまり、テンソルが多態的に振る舞うことにより、それがときには『署名』にもなり、さらに、他の状態にも遷移しながらチェーンが構築されていくという認識でよろしいですかな?」

「いいえ、なのです。その認識では今回の本質から外れているのです。なぜなら、チェーン上に署名を置く構造自体に『残高が奪われてしまう点』が存在するため、テンソル自身が『署名』になってはいけないのです。よって、テンソルの多態性の力を借りて『署名』を抽象化し、『縮約』してからチェーンにシリアライズすると、それにより、『誤差ベクトル』と『少し傷付いた短冊によるトランザクション』の問題を解決することができ、奪われる件の大部分が解決なのですよ。」

「フィー様。そうなりますと『推論』のご活躍は……、どのような場になるのでしょうか?」

「『推論』はテンソルの処理で大活躍することになるのですよ。つまり、チェーンからデシリアライズされた『縮約テンソル』に対する処理になるのです。そこで、その過程には多くの『単精度』を必要とするため、テンソルの多態性を上手く活用し、採掘の仕組みを『ハッシュ』の供給から『単精度』の供給に切り替えることで、よく批判されがちな『採掘による燃料浪費問題』を解決するのですよ。」


 ……。そこは俺も理解したんだ。厳格に演算された「ハッシュ」をチェーンに提供すると、それと同時に得ているトランザクション演算結果をチェーンに提供する権利が得られ、報酬をもらえるという仕組みです。ところが、その厳格な演算過程で大量の燃料を消費してしまい、そこまでして得た「ハッシュ」自体には何の意味もなく……、ただの燃料浪費ではないか? という問題が起きていました。


「フィー様! それは……。『単精度』のための工場がいくらあっても足りなくなる……、……。」

「はい、なのです。この仕組みでチェーンに供給された『単精度』は、チェーン以外の『推論』にも活用されるのです。今まで長い間ずっと燃料が排熱に変わるだけだった仕組みが……、『推論』の力に変わるのですから、女神シィー様もご納得のはず、なのです。ところで、採掘には『コンセンサス』という要素が絡みます。そのため、『ナンス』と呼ばれる数を『縮約テンソル』に絡めることで、『ハッシュ』によるコンセンサスと同等の論理を得られることが、シミュレーションでわかってきたのです。」


 ……。つまり、燃料浪費から、役に立つ演算に変わるってことだね。……、長くなりそうだ。ネゲート、大丈夫かな……。

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