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173, 女神シィー様は、わたしと会う度に「推論」を楽しく語ります。そこで妙案がひらめき、チェーンのコアに「推論の素」を組み込んだ画期的な構造「テンソルチェーン」で、姉様を説得するのです。

 捕らわれたネゲートを救い出すため、フィーさんは奇策を提言しました。


「まず、『チェーン』に関する駆け引きは、大きな取引だったのです。それにも関わらず、わたしと女神ネゲート様は、ある大切な要素を見落としながら『チェーン』を推し進めた結果、それが落ち度として浮き出てしまった。それが今回の件なのです。」

「フィー様……、その大切な要素とは、お互いに利益が生じる点という認識でよろしいですね?」

「はい、なのです。これは市場が絡むためビジネスという側面もあるのです。そこにビジネスとして大きな取引が生じるのなら、そこにはお互いに利益が生じる関係でなくては成り立たないのです。それを見落としてしまうなんて……。」


 ……。シィーさん側にも利益が生じるような取引にしないと、一方的に財が奪われるように映ってしまい、その怒りの矛先がネゲートに向かってしまった、となる。そういうことだったのか。


「フィー様、恐れ多く存じますが、言わせていただきますと、それがビジネスの本質であり、取引でもあり、契約と呼ばれるものです。」

「はい、なのです。反省しているのです……。そこで、女神ネゲート様を救い出すための策では、お互いの利益を重視しながら、『精霊の推論……限界突破した深層学習』などで挙げられていた『チェーン』の問題点を全て解決できる、画期的な手法を編み出したのですよ。」

「フィー様……、そ、それは……。」

「精霊の推論は、女神ネゲート様、女神シィー様、女神の担い手様、またはわたしを含めるこの地の主要な大精霊の権限でのみ、利用することができるのです。つまり、そのような『推論』で何をしていたのか、わたしが知らないはずがないのですよ。しっかりと『チェーン』の問題点を洗い出し、女神ネゲート様に、何やら交渉を持ち掛けた、ですね?」

「フィー様、それについては、あの件はまだ早過ぎると女神ネゲート様に苦言を申し述べた、ただそれだけでございます。」

「……。わたしにも落ち度はあったのです。よって、その件は不問にするので、わたしについてきていただけますか?」

「フィー様……、我らが忠義の真髄、これよりお示しいたす所存にございます。」


 ああそれ、承認絡みで絡まれた件か。思い出してきた。


「それでは……。わたしの姉……女神シィー様は、わたしと会う度に『推論』を楽しく語ります。そこで妙案がひらめき、チェーンのコアに『推論の素』を組み込んだ画期的な構造『テンソルチェーン』で、姉様を説得するのです。」


 えっと、「推論の素」とは、何だろう。それは、シィーさんの顔を立てるために無意味な論理として組み込まれるのではなく、チェーンに対して大きな利点があり、それが問題点の解決につながるのでしょう。なぜなら、この論理的なフィーさんが、無意味な論理を持ち込み、それがあたかも有用であるかのように振る舞うなど、プライドが絶対に許さないからだ。


「フィー様、その策は……。」

「これが、わたしがこの立場を鑑みた上で出せる最善の策なのです。女神シィー様は『推論』に己の全てを賭けているのですから、そこに僅かでも問題が生じる提案だけは絶対に受け入れないのです。」

「フィー様、さようでございます。我らの市場も『推論』に全てを賭けていると言い切っても決して過言ではございません。その状況をくみ取りつつ、女神ネゲート様を救い出す案を組み立てるとは、まさに素晴らしい案でございます。」

「はい、なのです。これは、女神ネゲート様を救い出し、『推論』と『チェーン』の未来を切り開くことができる最良の策なのですよ。」

「フィー様、『推論』と……『チェーン』……、の躍進。最高でございます。」

「あの……、しっかりと、『推論』と『チェーン』の両方を、お願いしたいのです。それでは、この策でなぜ『チェーン』の問題点をすべて取り除けるのか。それは、問題点として挙げられたものには、共通するある問題が絡んでいるのです。」


 これは……、長くなりそうな予感です。慣れてはいますが……、ネゲートのためです。頑張ります。

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