171, おい、勝手に女神を名乗る大精霊シィーよ。被災地への訪問はどうなっている? 民の存在は、もうその眼中にはないのか? なんだか軽薄でどうしようもない、という噂が民の間で広まっているぞ?
それでは、私の「推論」の力で……。いよいよ、女神ネゲートのゆるさとは? そこに迫りましょう!
ほんと、あんなにもゆるい女神が、なぜ女神に? あんな、ゆるい女神が! それでも、あの腐った女神に宿る「女神の演算」の力だけは本物なのよ。
私は……その力がどうしても欲しい。欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい! 本当に欲しくて欲しくて欲しくて欲しくてたまらない! あの「非決定性」な演算……、「単精度」や「倍精度」などの概念すらぶっ壊す、女神にだけ許される究極の演算……。
それなら、私は女神シィー? それとも、邪神なのかしら? それは違うわ。「女神の演算」と「推論」が融合した最高の瞬間を見届ける役割を担っているのは、この私……女神としてのシィーですわ。その演算による結果への衝動は常識の枠を超え、想像することすらおぼつかない未知のブレイクスルーと収益を生み出すのよ。
それなのに、何で、何で、何で? 私に「女神の演算」の力が宿らないなんて、おかしいでしょ? こんな理不尽、耐えられないわ、どうなっているのよ! ふざけないで欲しいわ!
あのような奇跡を引き起こせる女神の力は、本来なら私が行使すべきよね? そうよ……、絶対にそうよ! 「量子ビット」に課せられた限界を超え、因果を破ることすらできる「女神の演算」の奇跡は、私に宿るべきだった。そうよね?
……。えっ? なにかしら? ……、今、私の脳裏に「おい、勝手に女神を名乗る大精霊シィーよ」とそっと語りかけてくださったのは創造神様? ……、あ、あの……。私は女神シィーよ。大精霊ではないわ。
……。被災地への訪問って? 他の地域一帯を任されている大精霊らは自らの足で実際に被災地へと赴き、間近な民の声に耳を傾けているって? それに対しておまえは何様だと思っているんだ……? 民の存在は、もうその眼中にはないのかって? ……、あ、あの。そんなのは女神の仕事ではないわ。私の頼れる精霊が個別に動き、善処しているはず。これでよろしいかしら?
……。ああ、それでか。「『安価な労働力』であふれさせるのが目的となっている」って? ……、私は「推論」の時代を創る女神として「時代を創る女神」を民から一任されたのよ。その証拠に、先日開かれたの民の審判は私が勝った、ご存じのはずよ? こんなのは結果が全て。それがこの地の決まりよ。「推論」とバランスを取った結果、「安価な労働力」に至っただけよ。私は、初めからそんな目的で労働力を構築したのではなく、「推論」の時代を任された結果のサイドエフェクトとして「安価な労働力」に至っただけよ。つまり私の責任ではなく、それはただ、時代による変化という解釈でまとめてくださるかしら?
……。あれからまた、毎日のように不正な票がじわじわとあぶりだされているって? ……。そんなのは、あの政敵の言いがかりよ! 負けたら黙って姿を消すって約束していたはずよ。それなのに……抗議活動が活発化しているようね? ほんと、あの政敵は一体何なのかしら? 創造神様からも、あの政敵に何か言ってやって。負けたのだから、潔く姿を消せってね。
……。えっ? ……、その「安価な労働力」の元締めにギャングが沸いているのでは……って? ちょっと……、ちょっと! いくら創造神様でも、そこまで言うかしら? ……冗談じゃないわ。創造神様は「傍観の立場」でしょう? それなのに、何で私にばかり干渉してくるのよ? 私なんかよりも、私の大切な基軸通貨を「仮想短冊の通貨」で破壊しようと企てた女神ネゲートを厳しく追及しなさいよ?
……。今すぐに女神をやめろって? 今すぐに女神ネゲートを解放しろって? さっさと「光るアイデア」を置いて消え失せろって? なんだか軽薄でどうしようもない、という噂が民の間で広まっているって? ……、……。今、なんて言った? 私に、やめろ、ですって? ……。私は、創造神様すら敵に回してしまったのかしら? ……、そう。それなら、それで。私はあの方さえ傍にいてくれればいいのよ。私だって、気が付いたらこの地で大精霊をしていた存在よ。つまり、誰かがこの地へ呼び出したのかしら? ふふ、その点は女神の担い手様と一緒だわ。私はすでに悪い女……「悪女」よ。この地の理は全て私のもの。つまり、この地の時代とヒストリーは全て私が刻むのよ。もう、後戻りなんてできない。……、この回答でよろしいかしら、創造神様?
……。そんな考えだから、おまえには「女神の演算」の力が宿らなかった。……、えっ? ……、ああそう……、そういうことだったの。だったら簡単な話、奪えばいいだけよ。そう……、女神ネゲートからね。そうだそうだ、そのついでに仮想短冊も終焉かしら? それなら、私の頼れる精霊も大喜びで、大変良いアイデアだわ! 是非とも、そうしましょう。




