168, チェーンの本質はトランザクションよ。つまり、ウォレットは本質ではなく後付けの概念で、そんなのが無くても自由に残高を動かせるのよ。よって、ホットやコールドなんて概念は無意味となるわ。
それでは、私の「推論」の力で……。「ホットなウォレット」「コールドなウォレット」の他にもう一つ、別の形態を取るウォレットが存在する点を取り上げていきましょう。
そこで、「一つ目の推論」と「二つ目の推論」を何度も繰り返すように思い出してみて。よーくみると、残高が奪われてしまう過程の中で、「ウォレット」という表現が一つも出てこないはず。すなわち、「ウォレット」など関係なく残高が奪われているわ。そこは、よろしいかしら?
それで、その「ウォレット」の代わりとしてよく出てきたフレーズが「トランザクション」よ。
そう……。チェーンの本質はトランザクションよ。つまり、ウォレットは本質ではなく後付けの概念で、そんなのが無くても自由に残高を動かせるのよ。それゆえに、別の形態を取るウォレットとは……「ウォレットは存在しない」ということ。
それで、チェーンはこの性質から絶対に逃れられない構造になっている。つまり、ウォレットを切断する「コールドなウォレット」に残高を封印したつもりでも、その入力を保持する短冊はチェーンに取り込まれる形で必ず「チェーン上に記録されている」ことから、それをトランザクションの入力としていつでも自由に組み込める状態になっていて、そのトランザクションを承認させることができるのなら、「コールドなウォレット」からでも残高が出力側へ移動する仕組みになっているのよ。
それでも、「コールドなウォレット」なら問題ないという説明により、私はもちろん、他の大精霊なども「コールドなウォレット」を義務にしたはずよ。ところが、仮想短冊を奪われる状況は変わらない。
それもそのはず。このようなチェーンの仕組みでは、ホットやコールドなんて概念は無意味となるわ。「コールドなウォレット」の防御機構を無効化する「ウォレットは存在しない」という概念……。
それなのに、なぜ「コールドなウォレット」なら問題ないという説明に至ったのかしら。「一つ目の推論」と「二つ目の推論」によって奪われる過程を正直に大精霊へ伝えてさえいれば、この地点での最善な対策法は「コールドなウォレット」ではなく「入力を保持する短冊を分散させ、千分割にして保管すること」だったはず。もしそれなら、奪われた被害総額は千分の一以下で済んだわ。
それとも……、もし正直に伝えていたら私の承認が遅れてしまうのを危惧して……とかではないわよね? ……、私、騙されたのかしら? 女神ネゲートに直接、聞いてみるしかないわね。
それでは……、次の推論に移りましょう。




