167, 次は二つ目よ。それは、検証の経路を閉じていない箇所の存在。その存在により、その経路を閉じなくてもトランザクションの承認が確実に得られる論理を埋め込むことができる。
それでは、私の「推論」の力で……。次は二つ目よ。
まずは、トランザクション検証の過程をみていくわ。それは、チェーンの決まりに従う「命令」と「情報」が順次積み込まれた状態になっていて、それを一つ一つ取り出しながら検証を進めていく構造になっているのよ。
ここまでは特に問題ないわ。ところがそこに、検証の経路を閉じていない箇所があって、その経路を閉じなくてもトランザクションの承認が確実に得られる論理を埋め込むことができるのよ。
これについては通常の設計なら、閉じていないと検証が失敗に終わるイメージがあったわ。それなら、そのようなトランザクションが承認される事は絶対に起きないため、安全につながるはずよ。ところが、それは幻だった。そのような箇所が閉じていなくても検証結果には影響しないことが「推論」で判明したのよ。よって、数が合っていなくても署名さえ正常に通れば承認され、チェーンに取り込まれるのよ。
さて、ここで「その経路を閉じなくてもトランザクションの承認が確実に得られる論理」……、気になるわよね? 自由に論理を埋め込めるとなると、それは……ね? このような箇所が良い方向に使われる事なんて稀で、ほぼ全て、悪い方向に利用されてしまう。
それで……、これを何に使うのか。そっと目を閉じて考えてみると、すぐに思い浮かぶはず。それは、残高を奪うための足掛かりとして利用される。例えば、「誤差ベクトル」の発生に絡めたり、不自然な取引に利用されてしまう場合も多い傾向よ。
不自然な取引って……? 自分は大丈夫と考えている方ほど危ないわ。うっかり、そのようなトランザクションが作用する場所に価値を送ってしまったら、どうなってしまうのか……。わざわざ説明しなくても、容易に想像がつくことでしょう。これだって、そのようなトランザクションを始めから無効にする設計ならば、取引が成立しないので奪われなくて済むはずよ。
……。二つ目は、ざっとこんな感じかしら。えっ? ……、そのために「コールドなウォレット」があるだろって? そう感じた方は本当に甘過ぎよ。実は、チェーンには「ホットなウォレット」「コールドなウォレット」の他にもう一つ、別の形態を取るウォレットが存在し、それが「コールドなウォレット」の防御機構を無効化してしまう恐ろしい罠となっていて……、そうね、この検証を次回にしましょう。