161, 女神シィーによる「推論」の時代の始まりよ。まずは……、そう。女神ネゲートを捕らえるわ。ところで、私は悪い女かしら? ……、別に良いじゃない。こんな時代に、美しく振る舞う必要なんてないわ。
創造神様、新しい女神の時代……「推論」が動き始めましたわ。
私は民の審判に勝ったことで、「時代を創る女神」として、この権力の座に改めて就くことになったわ。さて、改めて「光円錐の中をただ駆け巡るだけの人形」はどうなったのかしら? まあ、ずいぶんと可愛らしいこと。私が思い切り利率を引き下げたあの瞬間、この地のルールとやらを悟ったようね。まあ、あれは人形なりに頑張っている方よ。ずいぶんと素直になったわ。もし私を裏切っていたのなら、あの人形に限っては後がないからね。勝てば全てが手に入る……それが「時代を創る女神」という存在そのものよ。
そんな私……女神シィーがこの権力の座に就いた以上、理想的な美しさと合理的な正義をミックスした新しい社会的概念とやらを民に提供いたしますわ。まず、「大精霊の承諾を得ないまま勝手に移り住んだ民」への方針転換よ。今回、私が勝つためによい働きをしたわ。とても感謝してる。ただ、ご褒美はここまでよ。
あのような民を私があえて見て見ぬふりをした理由は、遊ばせるためではなく「安価な労働力」として私の地域一帯にお迎えするためだったのよ。実は、昔から私の地域一帯に深く根付いた民ってね、労働条件が折り合わないとすぐにストライキなどを起こしてしまいがちなの。よって、順応で素直で元の地に返されたくない民こそが「安価な労働力」として最も適していて、今まで遊んだ分、私の頼れる精霊の下でしっかりと働くのよ。
えっ、創造神様? そんなに簡単な話ではないですって? なーに、すぐに採用されるから安心していただきたいわ。私の頼れる精霊がこのような民を雇用することで、あの控除を受けられるようにしたのよ。つまり安価に雇えて、あの控除も受けられる。これだけの好条件が揃っているのなら問題ないはずよ。そして、昔から私の地域一帯に深く根付いた民の不満は解消へと向かう事でしょう。だって、それでも「錆びついた工場……奴隷労働」よりかは待遇が全然良いはずよ。女神の担い手様は、この問題を重く受け止めていたわ。でも、これで無事解決。ただし「安価な労働力」であふれ返ることにはなるわ。でもね、あの政敵を支持するような民を教育したって意味がないわ。なぜなら、あんな民はどのみち「安価な労働力」として落ち着くのだから。それなら逆に「安価な労働力」を効率良く民に提供すべきと、私の「推論」がそう判断したのよ。とっても合理的でしょう? 美しいわ。えっ? 中流階級はどうなるのかって? もう……、創造神様ったら。今は、そんなのはもう必要ないのよ。だって、中流階級が果たしていた労働なんて、すべて「推論」で処理できるでしょう。そうよね? ははは!
それなのにあの政敵は、こんな合理的なことすら否定していたわ。なにが「何の知識も与えない壊れた教育システムにより純粋な民をあざむくことで、多くの民の潜在能力を奪い、気が付いたら腐敗した精霊たちの隷属となった純粋な民たち。こんな現実があっていいのか? そしてこれが大精霊の正義で良いのか? 皆さまに今一度、それを強く問いたい!」よ? 何、これは? どこまで私や私の頼れる精霊を笑わせたら気が済むのかしら? こんな狂った政敵を担いでいたあのパーティーも一度解体した方がよさそうね。うん、そうしましょう。
さーて、そのような労働力を効率良く確保した画期的な私の経済対策によって、私の通貨は至って順調そのものよ。「推論」による強力な収益によって、一度にあれだけの利率を下げたにも関わらず、しっかりと買われているわ。私の通貨が売られ円環が強力に買われると読んだトレーダーは拍子抜けだったようね。これはね、「買いの容認」を終了したことによる反動よ。ああ、「買いの容認」で私の通貨を買わせていたあの頃がなつかしい。もうね、あんなボーナスステージは二度とない。大精霊シィーからの贈り物、そう解釈していただけると嬉しいわ。
とにかく、あの政敵が選ばれなくて良かったでしょう? これだけの良好な指標が揃うと見越した上でインフレは退治されると、女神である私は常に告げてきたわ。それなのに中々信用されなかった原因、それは……女神ネゲートの存在よ。己の責務を忘れ、あのような腐った神託を下賜した上であの政敵と結託するとはね。私からしたらこの地への大逆そのもの。よって、女神ネゲートを捕らえることに決めたわ。結局、姉妹揃って同じ運命を辿るようね。それでもあの時、慈悲深い私は女神ネゲートに更生の機会を与えたわ。私と組んで「推論」と一緒に羽ばたこうと誘ったに、断られてしまって本当に残念だわ。もはや言い訳なんてできない……。
あとね、また出現したのよ! すでに決まった事を覆そうと反乱を起こす信徒……今回の審判結果に不満を抱く民の存在よ。また毎日、ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てているわ。ところがいつものように「女神……」を中心に騒いでいる訳ではないのが不思議。……、ああ、おわかりくださいました、創造神様? そう、「女神……」は逃げたわ。それを知った瞬間、私はその場で笑い転がりそうになりましたわ。マッピングで検索してもなぜか一つもヒットしない「女神……」という存在は、あの政敵が勝ったのなら名乗るつもりだったのよ。でも負けた。よって逃げたわ。検索には当たらないから逃げ切れると。……、何とかの切れ目が縁の切れ目。この地って案外、そんなもんよ。
そういえば「女神……」も「仮想短冊の通貨」だったわね。何かしら、これは? 私の市場は「推論」による収益と、そうね……足りない分はちょっと血を流すことで、私のきずなの利率も揃って落ち着いて、正常化する見通しよ。もう……、腐った女神たちによるこの置き土産、どうしましょう? よくもまあ、こんなものでファーストを目指すなんてね? 何だか可笑しくて、耐えられないですわ! お話になりませんの。
それでは、女神シィーによる新時代……「推論」をお楽しみください。創造神様、このような機会を賜り、ありがたく存じます。「推論」の収益は創造神様の奇跡よ。それを大切にしたい、それが私の気持ちです。ところで、私は悪い女かしら? ……、別に良いじゃない。こんな時代に、美しく振る舞う必要なんてないわ。




