160, 格が違う「推論」による圧倒的な力で、思い切り利率を引き下げる事ができた。インフレは退治され、私は……、民の審判に見事勝利したわ。
私はあの日、怒りに震え、女神ネゲート様との討論を公開チャンネルで要求するために私は彼女のもとへと向かったわ。それから今日に至るまで、様々なドラマが繰り広げられてきた。私はひたすら「推論」の力を試したくて、その力に圧倒された彼女が私の配下に加わるのか、それとも拒否したのなら公開チャンネルでつぶし、再起不能にしてやるつもりだったわ。
その結果は……どうやら私の「推論」が気に喰わないらしい。その瞬間は落胆したわ。それでも……そう。女神ネゲート様があの件……移り住んだ民の件に触れ、その瞬間、私の中で何かのスイッチが入ったのよ。誰にでもある、あの感覚。突如、今までは感じ取れず触れる機会すらなかった事象が、私のもとへめがけてやってきた。大きな衝撃を抱きつつ、その瞬間、私は女神シィーとしての覚悟と運命を受け入れたのよ。
それは、奇跡と呼んでも過言ではない「推論」の力によって、苦手だった討論も難なくこなせるようになった女神シィーよ。私の政敵……、討論が苦手な私を公開チャンネルで罵倒しながら蹂躙するのを楽しみにしていたようね。ところが、私は「推論」を受け入れて女神に昇格したのよ。以前の大精霊シィーとは大違い。あんな政敵、瞬時に畳み込んで論破してやったわ。
そう、それからよ! それが、私の民が尊重する「強くて当たり前の概念」に響いたようね。優勢から押され気味だった私は急速に息を吹き返した。とにかく、代表者の票が多い激戦の地域で接戦に持ち込めれば、あの票によって必ず勝てる……それは悪いこと? それでも、必要悪よ。渇望されているのは、私の時代なのよ。あの政敵ではない。
その勢いも相まって、私は思い切り利率を引き下げることができた。これも、格が違う「推論」による圧倒的な力のおかげ。その分も加味してお祝いムードに包まれた私の市場。私の通貨はもちろん、円環などの価値も安定し始めたわ。すべてが丸く収まっている。そう……あんなものに頼る必要なんてなかったのよ。
この瞬間、あの政敵と女神ネゲート様は、さぞかし悔しがっている事でしょう。だいたい、あの政敵は思い切り利率を引き下げる事に反対していたようだけど、それだって民のためではなく自分のためよね? 利率を引き下げることで私がさらに優勢となってしまうのを恐れ、反対した。そうよね?
そろそろ、私の事を見直したらどうなの? 私が思い切り利率を引き下げられないとでも? 精霊の中には通常の下げ幅を予想していた不届き者もいたようね、甘いわよ。私は思い切り利率を引き下げてやると決意したのだから、強くて当たり前の概念から、そのような利率の下げを躊躇することなく実行できる強くて当たり前の女神という点を再確認していただきたいわ。
さて、インフレは退治され、女神シィーの力を思い知るには最適なタイミングよ。お祝いムードに包まれた私の市場に、さらに「利率を引き下げる」ことを示唆しておいたわ。そこはね、工夫したのよ。今回、思い切り利率を引き下げる前に、さらなる大きな下げ幅の訪れを私の頼れる精霊が示唆しておいたの。この効果は大きくて、今回よりも大きなさらなる下げ幅が確実に来ることをアピールできて、インフレを退治できた点をさらに強く示す事につながったはず。このあたりの小回りが……私の頼れる精霊の力。そのあたりの精霊では無理よ。普通、そこまで頭は回らないでしょうから。
この勢いなら、完璧に歯車が噛み合っている。そこで実施された民の審判よ。これは普通の審判ではなく「時代を創る」概念を決める重要な審判となるので、最も影響力がある民の審判として名高いのよ。そして予測通り、接戦に持ち込めたわ。よって……、私は見事勝利した。




