148, 利率を下げるのではなく、部分準備の破裂を防ぐために「仮想短冊の通貨」を割り当てろと……、わたしに何度言わせる気? このまま突き進むなんて、そら恐ろしい。
「大精霊の推論」が全てと信じ切っているシィーさんは、それをよく観察しろと言い放つネゲートに不満があるのだろう。ネゲートに向けていた鋭い視線を俺に向けてきました。そろそろ俺もターゲットになる。そう、腹をくくります。
「女神の担い手様。この暴走した女神を止めなくて良いの? あなたの役割よね?」
ほら、きた。
「女神ネゲート様が暴走していると?」
「そうよ。」
「『錆びついた工場……奴隷労働』と『返せない借金』の内容は真実ですよ。それらを指摘しているだけでは?」
「……、あなたも一緒。」
シィーさんには悪いが、そんな状況を良しと思う程、俺は腐ってはいませんよ。
「シィーさんのお膝元は、その地域だけで円環の次くらいに匹敵する経済規模を誇りますよね? そんな地域が『錆びついた工場……奴隷労働』と『返せない借金』まみれになっている状況。それでは、他の地域はどうなっているのですか? もっと悲惨でしょう。これでシィーさんが優勢となるのでしょうか?」
「……、あのね、今は苦しいだけよ。でも、ここで利率を思い切り下げることで、潤い始めるのよ。あなたは元トレーダーよね? それくらい、簡単にご理解いただけると信じておりますわ。」
利率を下げる。それで何とかなると?
「シィーさん……、それは市場が正常に動いている場合に限ると俺は考えます。あの利率で銘柄が上がっていくなんて、他の『大精霊の通貨』を限界突破まで絞り、そこから価値を回収し、シィーさんの通貨と銘柄に流し込ませたとしか考えられません。さらに、シィーさんが『絶好調』だった場合が前提のはずです。ところが、雇用が『マジックショー』だった。それでは、他だってどうなっているのやら。他の指標だって嘘八百になっている可能性はありますよね?」
「……、何が言いたいの?」
「その状態で利率を下げたらどうなるのか。シィーさんの影響で限界を迎えている数々の『大精霊の通貨』は、その下げのタイミングで急激に価値を戻し始めるでしょう。シィーさんの『買いの容認』によって大きく絞られた分、その戻しは強烈なはず。それに……耐えられるのでしょうか? こんな状況でさらに上がるとは考えにくい……。」
そんなに市場は甘くないぞ、シィーさん……。
「ほんと、何が『買いの容認』よ。聞いてあきれるわ!」
「……。私に耐える、耐えられるなんて概念はないの。余裕よ、そんな程度!」
「シィー……。女神の担い手の話を無視する気なの? あんた、女神を名乗るのなら、女神の担い手の話は絶対なのよ? それがこの地のルール。つまりあんたは、女神ではない。」
俺は一応、そういう存在ですから。
「……、私は女神よ。だったら女神の担い手様、私は何をすればよろしいのかしら?」
「それは、利率を下げるのではなく、『仮想短冊の通貨』を部分準備に割り当てるべきと、俺は考えます。あんな泡……、弾けたら大変な事態です。」
……、はっきりと答えました。
「あなたまで……、そんな事を……。」
「シィーさん、ここは引き返すべきです。弾けたら、もう……。」
「シィー! 部分準備の破裂を防ぐために『仮想短冊の通貨』を割り当てろと……、わたしに何度言わせる気? どうやら女神の担い手も同意見なら、決まりね。」
「ふざけないで。市場は私が決める。」
「……。このまま突き進むなんて、そら恐ろしい。……。」
俺だって恐ろしい。それでもシィーさんは利率を下げてくるだろう。なぜなら、シィーさんの頼れる精霊の行動が何か妙で、おかしな言動を繰り返しています。それは、シィーさんの頼れる精霊がそんな事を……? という疑問を抱くような内容ばかりで、それらは何かの前触れかもしれない。