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147, 数年前……、わたしがまだ大精霊だった頃の話。シィーと親交が深いあの神々の弟子のさらに弟子から興味深い話を耳にしたのよ。その内容とは、「仮想短冊の通貨」は近いうち禁止になるだろう、ってね。

 ネゲートの「前菜」という表現に、シィーさんは怒りをあらわにしている。


「ねぇ、シィー? 『大精霊の推論』は濡れ手に粟のように稼げる、すごいわ。もともと高い値で取引されていた推論向け古典ビットが、二倍、三倍、四倍……と値を跳ね上げても、すぐに在庫が尽きる状況とは……、本当に驚きですわ。」

「あら……、女神ネゲート様? 女神シィーを支える『推論』を提供できる、ただそれだけの話。その神通力を、精霊が買い求めるからこそ値が跳ね上がるのよ。それでも在庫は余らない。次の時代を担う素晴らしき力。当然の結果よね?」


 そんなに高い値で取引されているんだ……、その推論という名の古典ビットは……。需給で値が決まるとはいえ、二倍、三倍、四倍って……。さすがに、競合相手が黙っていないような……。


「その影響で、演算用古典ビットで財を成した精霊が苦境に陥っているようね?」

「時代は『推論』を選んだ。」

「それで?」

「女神ネゲート様。あなたは大精霊に戻るべきよ。風の中でも最上位な力……演算の大精霊として、私に力を貸すべきよ。」

「わたしは大精霊へと戻り、そのままシィーに仕えろと? それであんたは、何を命じるの?」

「女神ネゲート様……、それならチェーンの事、あなたの好きにして良いと前にも話したはずよ。」


 ……、たしか公開チャンネルでも似たような流れになっていた気が……。シィーさんって、従う者に対しては自由と楽観を与えるが、逆らう者には禁止まで含め厳しく対処する。そんなイメージが出来上がっています。


「その案では、こんな不確かな状況下で女神が不在となってしまうわ。ねぇ、大精霊シィー?」

「……。」

「あんたは女神ではない。」

「まだ……、認めようとしない訳? 私は『推論』を司る女神シィーよ。」

「こんな非常時に、『推論』なんかで遊んでいる場合なの? それで民は安泰になるの? 『返せない借金』の原因となっているクレジットの利率と延滞率が、そのすべてを物語っているわ。あんたのお膝元……経済的に恵まれた環境下の民すら、一割以上がこんな状況って、正気かしら? いい加減、目を覚ましなさい。」

「……。」

「そうそう……、そんなにもわたしが女神であることにご不満を抱えているのなら、『仮想短冊の通貨』でこの地が安定次第、わたしは女神としての役割を終え、自然と演算の大精霊に戻るから安心してね。それがこの地のならわし。これでよろしいかしら?」

「ちょっと……、また、また、そんなものを持ち上げて!」

「そうだ。数年前……、わたしがまだ大精霊だった頃の話。シィーと親交が深いあの神々の弟子のさらに弟子から興味深い話を耳にしたのよ。」

「なによ、急に!」


 ……。その頃のネゲートって……。まあ、気にしない気にしない。


「その内容とは、『仮想短冊の通貨』は近いうち禁止になるだろう、ってね。それで聞いてもないのにその理由を細かく述べてきて、本当に不気味だったのを強く憶えているわ。わたしは雑談のつもりで話題を振っただけなのに……真剣な眼差しで、そんな内容だった。」

「……。」

「未だに『仮想短冊の通貨』に対する方針すら出さず、裏では数年前からそんな話題で盛り上がる。今は若い民の票欲しさに譲歩しているが、これでは勝った瞬間に態度が豹変するわ。前々から、『仮想短冊の通貨』についてはシィーを信用するなと囁かれてはいるけど、実際、こんなもんよ。」


 ……。


「だったら何? まあいいわ。それで、そんな程度が『主菜』だったの? なんだ、ははは。」

「なに、勝手に『主菜』にしているのよ? これは……そうね。口直しの甘酸っぱいベリーよ。それでね、『主菜』では『大精霊の推論』をよーく観察していく過程になるわ。」

「……。」


 どうやらシィーさん……、知らぬ間に毒を盛られていたのかもしれない。そんな雰囲気が漂っています。

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