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141/412

140, あの噂は事実となった。マッピングの報道は、女神シィー様の誕生を祝う内容一色で染まっています。そして、先日の暴落分を取り戻すかの勢いで値が駆け上がった。

 シィーさんが女神になるという噂は事実となった。暫定的ですが「大精霊の推論」を無事稼働させ、女神の力を得たと宣言のち、同時にインフレを退治できたと力強く示せる指標を掲げながら、利率を下げる新たなステージに突入とのことです。


 それにより、部分準備による暴落と利率を上げる話が重なってしまった円環の市場も、先日の暴落分を取り戻すかの勢いで値が駆け上がった。一安心です。


 それにしても「暫定的な稼働」というニュアンスが絶妙でした。その「大精霊の推論」が絡む銘柄に期待感が残るからです。そのような急成長銘柄の場合、最も怖いのが「ロードマップを達成したにも関わらず売られる……事実は売り」です。銘柄を買ったからには高く売りたいので、期待感は残すべきですよね。それは、急斜面の岩肌を力強く登っていくチャートになっていて、この地最大の時価を持ちます。それでも「女神シィー様が寵愛する銘柄」という強力なフレーズまで飛び出てきたので、まだまだ上を目指すのでしょう。


「大精霊シィー様が女神になられたという事、誠に嬉しゅうございます。」

「最近は嬉しい事が続きますな。暴落したとはいえ、我らの通貨が『この地最強の通貨』という報道が流れた瞬間は、久々に心が躍るような感動を覚えましたぞ。」

「ほほう、それはわしも同じ気持ちだ。あのような危機的な状況では、本来なら『この地で中立を遵守する大精霊』の通貨が多く買われるはず。それすらも厳しい暴落の中、我らの通貨が強く買われた。誠にすばらしい。」

「いよいよ、我らの時代も近い。女神シィー様を支え、我らの時代を享受することにいたしましょう! 民も、そう望んでいるはずだ。」

「それにしても、その良好な流れが狂ってしまう女神シィー様の政敵には、毎度のことながら冷や汗をかかされます。今、民の間で『もしあの政敵なら』という言葉が流行していますが、私はそれを聞く度に寒気がしております。」

「そなたもそう解釈しているか。あの政敵にまつわる黒い噂は多岐に渡る。その噂は、……や……と強いパイプがあり、その利潤のためなら何でもためらうことなく実行に移すという、それはそれは末恐ろしい内容だったぞ。」

「ああ、それだ。万一、民の審判で女神シィー様が敗れるような事態になったのなら、再度の……に備え、すぐにでも……と……を買い溜めしておけと、一部の界隈で皮肉られている状況ですからね。」

「再度の……だと? 冗談でも恐ろしい。わしは、そんな事態に再度なったのなら、もはや生き残れないだろう……。」

「まったくもって酷い話だ。女神シィー様を苦しめたインフレの元凶はその……だろう。あの政敵は、自分でインフレの種を撒き、それを女神シィー様に押し付けて猛批判しているようにしか、私には映らない。あんなのが再度……。」

「ははは。もはや、その心配には及びません。女神シィー様を全力で支え、フィー様と共に我らの時代を満喫しましょう。」


 何やらあの神々の浮かれる話し声が耳に入ってきます。カネの問題が続いていたので暗い雰囲気だったのですが、明るい兆しが感じられました。一応、挨拶を済ませます。


「おはようございます。」

「おお、そなたは女神の担い手様、ご機嫌うるわしゅうございます。」


 いつもこんな感じで、堅苦しい返事が来ます。もう慣れました。


「大精霊シィー様が女神になられた件、誠に喜ばしきことに存じます。」

「おお、そなたも嬉しいか。それは誠にすばらしき事だ。ところで最近、女神ネゲート様のお姿をお見掛けしない。そこで、女神ネゲート様がお戻り次第、わしらはとても心配していると伝えておいてくだされ。」

「わかりました。女神ネゲート様に、そうお伝えしておきます。」

「それなら、そのついでに、もう一つ頼み事をよろしいかな?」

「はい、なんでしょう?」

「女神ネゲート様は、おそらく神託の件でお悩みであるはず。それなら、悩む必要は一切ないとも伝えて欲しい。我らは女神ネゲート様への感謝を決して忘れておらぬ。」

「つまりそれは……。」

「ほほう、そなたは勘が良いのう。誰にでも過ちはある。それは女神ネゲート様も例外ではなかった。気にやむことはない。我らと新しい時代を育て、またご一緒に羽ばたけると信じておりますぞ!」

「ああ……、なるほど。……、そういうことか。」


 ネゲートをみかけなくなったのは演算用古典ビットの件で珍しく悩み始めた直後だった。もともとは風の大精霊ですから、そのままふと消え去り、それ以来見かけていません。


「女神シィー様は、女神ネゲート様に対して大変ご立腹なご様子と伺っておる。そのため、我らが何とか女神シィー様を説得してみせます。女神ネゲート様に、我らは借りを返さなくてはなりません。」

「……。シィーさんはご立腹、ですか……。」

「さようでございます、女神の担い手様。」


 それにしてもネゲートは今どこに……。さすがに心配になってきた。でも、精霊は位置情報をお互いに掌握していたはず。よって、フィーさんならわかるはずだ。そろそろ機嫌が直っているといいな。

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