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134, 私は必ず勝つ。どんなに追い込まれたって、知恵を絞れば名案なんてすぐに浮かぶものよ。

 先日の雇用の件ですら、私は見限られ、裏切られたなんて……、深く落ち込んだわ。それでも泣く暇など私にはない。気持ちをすぐに切り替えるしかない。こうなったら……、そう。あの腐った女神に唯一対抗できる、私に残された最後の手段……女神への昇格よ。


 ところが、予想以上に「大精霊の推論」を支える心臓部の熱処理問題が重くのしかかってきた。それでも私が女神に昇格するには「大精霊の推論」に頼るしかない。それがこの地の定め。私に、女神の演算の力が宿っていないからよ。


「あの公開チャンネルの失敗と、先日の雇用の件まで、すべてを吹き飛ばすには、私が女神に昇格してご祝儀の風を巻き起こし、私の政敵と腐った女神を上手くおびき寄せ、私のお膝元で論破してやるわ。そうよね?」

「大精霊シィー様、さようでございます。……。」

「それで、まだなの? 遅れている点から、考えていた以上に深刻なのかしら?」

「大精霊シィー様。実は……、すぐに解決可能な状況ではなく、今すぐに『大精霊の推論』を稼働させるのは厳しいとの回答で……。」

「……。……。もう。私は絶好調よ。そんな冗談、必要ないわ。さあ、女神に昇格しましょう!」


 冗談……、よね?


「大精霊シィー様、申し訳ございません……。」

「……、そう。わかったわ。」


 気持ちをすぐに切り替える。そうすると……、ほら、抗ってやろうという強い気持ちが自然と湧いてきたわ。


「大精霊シィー様……?」

「よく聞いてね。ここまであの腐った女神にやられ、何もせずに惨めに敗退するほど弱い大精霊ではないわ。それなら、強い大精霊を披露するのみよ。」

「大精霊シィー様。ただ、それには……。」

「あなたの指示に従わない精霊の出現により、市場に発表される指標が不揃いになるのよね?」

「大精霊シィー様、さようでございます。」

「それなら、あれしかない。そうよ。そんなマトリックスでは、支えようとする作用は安定しない。それなら逆転の発想よ。すなわち、不安定な状況を味方につけるのよ。」

「大精霊シィー様、そのようなお考え、誠に光栄でございます。それでは、その方法とは?」

「なーに、簡単よ。市場が不安定の中、私が女神に昇格し、そのタイミングで思い切り利率を引き下げなさい。それでね、そのタイミングを民の審判に合わせるのよ。今すぐに『大精霊の推論』は無理でも、民の審判までには間に合うはず。いかがかしら?」

「大精霊シィー様……、それはご名案でございます。市場が不安定で疑心暗鬼の中、突如舞い降りた新たなる女神……、シィー様。そこで大幅に利率を下げるという案。……、私も、不安定となる市場に対しては、それしかないと感じます。さすがでございます。『大精霊の推論』を担う精霊にも伝えておきます。それまでには必ず間に合わせるように、と。」

「ありがとう、そうして。まったく……、私の政敵と腐った女神に対して、激昂している投資家は多いはず。そこも味方につけましょう。よりにもよってこの地の……同士で気が合い、組んでしまったのかしら? まあ、お似合いよ。」

「大精霊シィー様、さようでございます。」

「ところで、この作戦を大いに邪魔する、どうしようもないのがあるわね……。」


 そう。私の伝統的な市場に……の糞のように接続してくる……「仮想短冊の通貨」よ。


「大精霊シィー様。それは『仮想短冊の通貨』、ですね? いかがなさいましょう?」

「そこは『時代を創る大精霊』としての対応をするわ。どうせ市場が不安定になるのなら、おわかりよね?」

「大精霊シィー様! やはり『時代を創る大精霊』の座は聡明な大精霊シィー様のものです。部分準備に『仮想短冊の通貨』を割り当てる案ですね? それを現職が大いにアピールすると部分準備の膨らみに影響が生じると判断した投資家からの売りにより市場を不安定にさせてしまうのですが、どのみち不安定になるのなら、現職である大精霊シィー様が部分準備に『仮想短冊の通貨』を割り当てると、堂々と公表できます。矛盾が一切ない、素晴らしい案です!」

「そうよ。それにより若い民の心が私に傾けば問題ないわ。どうせ、私の政敵に絡む信徒の大半は『仮想短冊の通貨』の値次第、そうよね? ほんと、……よね。おっと、ここだけの話よ。それで、私を裏切った精霊にも戻ってくる機会を与えてちょうだい。私は優しいのよ。一度目の裏切りなら水に流すことにしたわ。」

「大精霊シィー様。あなたは量子ビットで成果を出せなかった私すら救ってくださいました。それも添えて、そう伝えておきます!」

「それでね……。私が育てている『大精霊の推論』の銘柄は買い支えるのよ。その銘柄は私の希望。市場が不安定であっても、底割れだけは絶対に許さないわ。円環の市場も支えているのだから。よって、私を裏切った精霊がここに戻ってこれる条件を、その買い支えにしなさい。いかがかしら?」

「大精霊シィー様。その冴え渡った名案は、抜かりがなく素晴らしいです。さらにそれも加えて伝えておきますね。」


 私は必ず勝つ。どんなに追い込まれたって、知恵を絞れば名案なんてすぐに浮かぶものよ。

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