126, 自分の不手際なら、弁償も仕方がないと諦めがつく。しかし、適切なアナウンスがあれば避けられたはずの事態で弁償しなければならないなんて。このような問題、女神ネゲート様はどうお考えなの?
これまでに様々な事態が積み重なり、溜まり続けた不満がついに限界を超えてしまったのでしょう。シィーさんの怒りが収まりません。もう逃げるわけにはいかない。今こそ、全てを明らかにする。これまでの苦悩と葛藤が一つ一つ脳裏に浮かび、そのすべてがシィーさんの決意を固める一因となったのであろう。
「女神ネゲート様。『精霊の推論』から導かれた署名に対する考察に対して、あいつらは次のようなアナウンスで十分だと結論付けていたようね。」
それからシィーさんは、非常に遠回しな表現として『プライバシーの保護』という言葉を執拗に繰り返して便利に使っていた点を簡潔にまとめ、指摘してきました。
「あなたは女神として、このアナウンスで『十分』だと? それをこの公開チャンネルで伺いたいのよ。」
「なによ……。」
「あのね、これで『十分』だったのかしら? そう、私は伺っているのよ。まったく、どのみち全取引はチェーンに記録され、公開されるのだから、いまさら『プライバシーの保護』なんて、いったい何を気にするのよ? ふざけた話。そうよね、女神ネゲート様? プライバシーが気になるような恥ずかしい物を欲しがるのなら、お店に直接行って『大精霊の通貨』で購入すれば済む話よ。」
恥ずかしい物って……。いや、今はそこが重要ではない。
「そうね……。」
「わかっているのなら、あなた自身の言葉で直接述べなさい。それが女神としての責務よ。」
「うん……。」
「大丈夫。言いにくい箇所は、私が代わるから。落ち着いて、話すのよ。」
「……。」
「お聞きなさい。この瞬間にもどこかで、大切な通貨が奪われているかもしれないという事実を忘れてはならないわ。それが自分の不手際なら、弁償も仕方がないと諦めがつく。しかし、適切なアナウンスがあれば避けられたはずの事態で弁償しなければならないなんて。このような問題、女神ネゲート様はどうお考えなの?」
そして、ネゲートは重苦しい沈黙を破り、なんとか言葉を吐き出すように口を開き始めた。




