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124, シィーさんとネゲートが公開チャンネルで討論になり、シィーさんは勝って女神になるはずが、突如「カネ返せ」「天の精霊に全てを奪われた」などの罵倒の嵐に。そこでネゲートはある承認を命ずる。

 「女神シィー」って一体何だ。シィーさんは大精霊のはずだ。なぜ女神を名乗る? 女神は唯一無二のはず。つまり、それは考えられない。ところがマッピングで、そう告げてきた。何か、取り返しが付かない大きな決断を俺に迫ってくる。そう、瞬時に理解できた。そして、すぐに起きた。


「はーい、女神シィーです。」


 目の前にシィーさんが現れました。音もなく現れる。それが風の力でした。ただそこでなぜ、女神を名乗るのだ……。さらに……、その姿は大精霊ではない。それは……。


「シィーさん、その衣装さ……。」

「私は女神になるのよ。みて、この衣装。すごく気に入った。」


 シィーさんの長い銀髪が、純白の衣装の中で揺れ動き、その姿はまるで女神の舞を見ているかのようだった。……。そうだ、ネゲートはどうした……。ああ、その場で立ち尽くし、眼を丸くして言葉を失ったようです。


「このようにお会いするのはお久しぶりですわ。女神の担い手様。」

「そうなりますね。」

「うん、その調子よ。頼りにしているわ。」


 シィーさんは俺に何を要求してくるのだろうか。間違いなく無茶な要求だろうね。


「ちょっとね……。狂ったのかしら、シィー? その衣装は女神にだけ許されるのよ?」

「あら? 女神ネゲート様。私が女神にふさわしいから、こんなにも似合うのよ。もうね、『ゆるゆるな女神様』にこの地を任せることはできない。ただ、それだけ。そこで、提案があるの。とはいえ拒否はできないわよ?」

「なによ?」

「どちらが女神にふさわしいか、この場で討論しましょう。」

「あのね? わたしが女神。それは創造神が定めた理。さっさと大精霊の姿に戻してから、帰りなさい。」

「もう、女神ネゲート様。拒否できないって伝えたはずよ。」

「何が言いたいのかしら? はっきりしなさい。」

「実はね、すでにマッピングで公開チャンネルになっているのよ。『時代を創る大精霊』の公開チャンネルで、逃げずに討論しなさい、女神ネゲート様。」


 マッピングで公開チャンネルって……。これ、この地全体にすでに公開されているのか!


「あら? 女神の担い手様。ここにアクセスするのよ。」


 シィーさんより手引きされた公開チャンネルに入室すると……。ああ……、なんてことでしょう。公開されています。俺も映っています。


「そういうこと、シィー? こんなことして……、後悔するわよ?」

「あら? では、逃げずに討論する気にはなったようね?」

「逃げるって何かしら? 公開チャンネルでわたしに勝てる気でいるのかしら? かかってきなさい!」


 ネゲートも怒り心頭で……。俺は、観ているしかないです。そして、この公開チャンネルに続々と人々や精霊たちが流れ込むように入室してきます。当然の結果ですよね。トレーダーも多そうだ。


「さて、お集まりいただきました皆様、ありがとうございます。女神ネゲート様のあまりにも酷いゆるさを見かねて、『時代を創る大精霊』を担うシィーが女神ネゲート様を諭すための公開チャンネルとなります。是非とも、最後までご覧くださいませ。」


 シィーさんの挨拶です。盛り上がりは……まあまあかな。


「わたしは女神ネゲートよ。誰かさんのあまりにも酷い利率を見かねて、この女神ネゲートがシィーを治療するための公開チャンネルになりそうかしら?」


 ネゲートも堂々と応戦してきます。こちらは……かなり盛り上がっています。


「治療って……、まあいいわ。それでは女神ネゲート様。なにかしら、ミームって? よくもまあ、あんなものをなぜに許しているのかしら?」

「ミームも神託の一部。ただ、それだけよ。」

「ただ、それだけって……。そんなものを神託に含めるなんて……。どうなっているのよ、この女神は? すでに機能していないわ。」

「それで、わたしの何が機能していないのかしら?」

「このままでは、この地は分断し、崩壊するって解釈しなさい。そう……、この危機的な時代には『強くて当たり前の女神』が求められるのよ。ミームとか、仮想短冊とか、あのようなゆるいものでは支えられないの。いかがかしら?」


 「強くて当たり前の女神」って……。それは大きな禍根を生み、大精霊同士の衝突に発展しかねない、危ない橋だよ。たしかにネゲートはゆるいが、そのゆるさが緩衝材にもなっている点を確認しています。


 何となくですが、盛り上がりには欠けています。


「そう……。つまりシィーは『大精霊の正義』でこの地を征服したいと?」

「あのね、どこからそんな話になるのよ?」

「あんたね……。」


 その瞬間でした。入室された方々からのコメントが入り始めました。


 えっと。何だこれは? 「カネ返せ」だと……?


「あら? コメントも自由。私は『自由と楽観を標榜とする大精霊』よ。自由な発言、問題ないわ。それで……『カネ返せ』って。女神ネゲート様、このような発言が来ておりますわ。ミームとかでやられたのかしら?」

「あのね、シィー。そのコメントをよくみなさい。わたしではなく、あんた向けに来ているわよ?」

「……えっ、何?」


 それです。罵倒に近いコメントがシィーさん宛てに多い気がします。逆に、ネゲート宛には「踊ってみせて」とか、この公開チャンネルの主旨とは関係ないコメントが増えています……。


「これが『大過去』から映し出された現実よ、シィー。そうね、マッピングで『空売り』と検索すると、誰かさんを心から慕う大精霊の名が連判状のように連なるのよね。なにかしら、あれ? わたしの事をゆるいと断罪するのなら、当然、そこに名を連ねた大精霊の方々は、相場で約束事に反するような操縦等による蹂躙行為を一度もしていないと、彼らを代表する『時代を創る大精霊』であるシィーは、この場で創造神に誓えるのかしら?」


 ……。俺さ、それ、俺の記憶に鮮明に残っている蹂躙と一緒ではないか……。このネゲートの発言直後から、シィーさんに向けた罵倒コメントが急増しています。「天の精霊に全てを奪われた」「蹂躙してばれても、どうせ儲けた分を返せば済むだけ」「あれは天の精霊のみが許される」「民があんなことをしたら、どうなるか。わかっているよな?」「こんなものを民に勧めるな」「いくら奪ったら気が済むんだ?」「本当に治療を始めるとは、驚きだ」……、このようなコメントで埋め尽くされる。俺だって……、これについては何か一つでも書き込みたい気分だよ。でも、抑えています。


「……。」

「シィー、今さらこれを誓うなんて無理よね? やりたい放題よね? それなら、わたしは『ゆるい』から特別に見逃してあげる。その代わり、『地のチェーン』を承認しなさい。」

「ちょっと……、何で、何で……、そこで『地のチェーン』が出てくるのよ?」

「あのね、シィー。これ、公開チャンネルよね? あんたの言う通り、もはや逃げられないわよ? 誓うか、承認するか。どちらかをこの場で選びなさい。これは女神より命ずる。よろしいかしら?」


 ネゲートって……。そこで「地のチェーン」を出してきたとは。これが女神の政か……。

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